・IARCの発表
喫煙者
・ 喫煙と、胃がん、肝臓がん、子宮頚部がん、腎臓(腎細胞がん)がん、骨髄性白血病との関連性が新たに明らかとなった。
・ 乳がん、子宮内膜がん螺旋、前立腺がんについては、喫煙との関連性がない。
・ 喫煙によって生じる発がんは、既知の他の発がん因子の作用があわさると、さらに発がんリスクが増大する。
・ 喫煙歴が長いほど発がんリスクが高いため、たばこの煙による発がんリスクを減らすには禁煙が必須である。特に30歳代前半に禁煙すると有害な影響の大半は避けられるが、高齢期であっても禁煙すると発がんリスクは減る。
・ 男女間に喫煙による発がんリスクの差はない。
非喫煙者の受動喫煙
・ 長期間の受動喫煙と発がんとの関連性についてこれまで疑いがあったが、受動喫煙が肺がんを引き起こすことに関して明白なコンセンサスを得た。
喫煙者が排出するたばこの煙を非喫煙者が吸うことを受動喫煙(間接喫煙)と呼びます。
これまで、たばこ及びたばこの煙に関しては、IARCの発がん性分類で、グループ1(人に対して発がん性がある)に分類されていましたが、今回のワーキンググループは、受動喫煙がグループ1に分類されると評価しました。
これまで医学界では、喫煙による発がんリスクは約30%と概算されていますが、IARCのワーキンググループの1人であるRichard Doll教授は、これらの新たな部位への発がん性が明確になったことから、そのリスクは2倍の約60%になると述べています[2]。
受動喫煙による健康影響に関しては、厚生労働省が国産たばこ7銘柄について、換気していない6畳間の部屋でたばこを1本喫煙した時の室内空気中の化学物質濃度を調査した結果、国内販売量第1位の銘柄において、発がん物質であるベンゼンと、発がん性の疑いがあるアセトアルデヒドが、環境基準(ベンゼンは環境省の大気環境基準、アセトアルデヒドは厚生労働省の室内濃度指針値)の数倍の濃度検出されました[3]。
これまで長い間、たばこは嗜好品として扱われてきましたが、喫煙者への直接的な健康影響だけでなく、喫煙者が排出するたばこの煙によって室内空気を大きく汚染し、深刻な公衆衛生上の問題を生じていることからも、すでにその存在価値はなくなっていると言えるでしょう。