・2)内分泌系・発生過程に対する影響
MCF-7 (ヒト乳ガン細胞) を用い 17β-エストラジオールが誘導した グレートレイク流域に生息するカモメ,アジサシなどに見られる生殖障害 (胚子,雛の死亡率の増加,雛鳥の振顫,浮腫,卵殻の薄化 etc) が,有機塩素系の化学物質に起因していることを示唆している13).
SD ラットの子宮において 2,3,7,8-TCDD とその関連物質が広汎な抗エストロゲン反応を示すことを解説.TCDD はエストラジオールが誘発した子宮重量増加やパーオキシダーゼ活性,エストロゲンやプロゲステロンレセプターレベル,EGF レセプター結合および EGFレセプターや c-fos mRNA レベルを阻害するなど14).
SD ラットの妊娠10-16 日に2,3,7,8-TCDD 0.025 , 0.10 μ g/kg/ 日, PCB (3,3’,4,4’-TCB) 2,8mg/kg/日,PCB 126 (3,3’4,4’,5-PCB) 0.251.00μg/kg/日を各々経口投与し,出生児の異常の有無,離乳児の子の甲状腺ホルモンレベルを観察した.出生児の生殖および発生に対する変化は認められなかった.PCB 77 と TCDD の高用量群の雌で血漿中 T4 レベルの抑制が認められた.UDP-GT 活性はすべての高用量群で増加した.T3
および TSH に変化は認められなかった.肝ミクロゾームの ethoxyresorfin-ο-deethylase (EROD) はすべての投与群で著しく誘導された15).
C57BL/6N マウスの妊娠10 日に2,3,7,8-TCDD 12μg/kg を1 回経口投与し妊娠12-14日に胚子を摘出,免疫組織化学的,in situ hybridization により,Ah レセプター (AhR),Ah レセプター核内トランスロケーター (ARNT),EGF,TGF-αの存在とTCDD 投与による影響を観察.TCDD は AhR に変化を与えなかったが ARNT を増加,TGF-α,EGF を減少.
TCDD の過形成反応への関与を示唆16).
C57BL/6N マウスの妊娠 6-14 日に2,3,7,8-TCDD 0,1.5,3.0μg/kg/日を経口投与.出生前の TCDD 暴露はその出生児の胸腺萎縮を誘発,また CD4+8+胎児胸腺細胞の割合を有意に減少,CD4-8-および CD4-8+細胞を有意に増加させた.
TCDD の出生前の暴露が
胎児胸腺細胞の細胞表面分子における質的量的変化を促すことから,TCDD が正常な胸腺細胞の成熟過程を阻害することを示唆17).リーザスモンキー雌に2,3,7,8-TCDD 5ppt,25ppt 添加飼料を4 年間摂取,10 年後に子宮内膜症の有無およびその程度について観察.子宮内膜症の頻度は TCDD 暴露と関連しており,その程度は投与量に依存していた18).
ICR マウスの妊娠 7-16 日に1,2,3,4-TCDD 100-1000μg/kg/日を経口投与.500-1000μg/kg/日を皮下投与.2,3,7,8-TCDD 25-400μg/kg/日を経口投与.25-200μg/kg/日を皮下投与.Octachlorodibenzo-p-dioxin 5-20mg/kg/日を経口投与.2,3,7,8-TCDD に用量に比例した奇形 (口蓋裂,水腎症) 頻度の増加を認めたが,他の 2 種類の dioxin 類に奇形誘発作用は見られていない19).