・4.ポリ塩化ジベンゾダイオキシン(Polychlorinated dibenzo-p-dioxins )
1)ヒトの健康影響に関連する情報
2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) はヒトに対して発癌性がある (IARCgroup Ⅰ)と IARC によって評価されている.ダイオキシンの発癌に関する総説である1).
1976 年にイタリアの Seveso で農薬製造工場の事故により TCDD が周囲に飛散した.
その暴露を受けた住民の血清 TCDD 濃度が高いほど,女性が生まれる確率が高い2).
Seveso で TCDD の高濃度暴露を受けた親の受精率の著しい低下と生まれた子に女性が多いことを報告した.工業国での子の出生性比に関する総説である3).
母乳中の高いダイオキシンや PCB 濃度は,母親の血中 T3 及び T4 濃度を低下させ,また子の TSH 濃度を上昇させ甲状腺ホルモンに影響を与える4).
TCDD の慢性暴露で最もよく見られる皮膚症状は, chloracne (塩素ざ瘡) や( 色素沈着過度) である.
発癌性及び健康障害に関する総説である5).
周産期暴露により新生児へ神経学的影響が認められる6).
化学工場の女性従業員の子は,PCDD の血中濃度が高いことから母親から子供への移行が認められる7).
米国の一般人の脂肪組織中におけるTCDD 濃度は,14 才以下で1.98pg/g の蓄積がみられ,また45 才以上では9.40pg/g を示し,平均して5.38pg/g であった8).
ドイツで一般人が食物から摂取する TCDD の量は,1 日当たり0.35pg/kg 体重であり,脂肪組織での蓄積は7.2pg/g 脂肪また母乳では3.6pg/g 脂肪を示した.
母乳から摂取される1 日当たりの TCDD は,17pg/kg 体重であった9).
ドイツでヒト脂肪組織中にダイオキシンの低濃度の蓄積がみられ,主に魚や肉及び乳製品の食物によると考察した.授乳中の子の摂取は,成人と比べて50倍も高い10).
免疫障害に関する総説がある11).