・5.生活指導・合併症
一般的にアトピー性皮膚炎では下記の生活指導が有用である.
*入浴,シャワーにより皮膚を清潔に保つ.
*室内を清潔に保ち,適温・適湿の環境を作る.
*規則正しい生活をおくり,暴飲・暴食は避ける.
*刺激の少ない衣服を着用する.
*爪は短く切り,掻破による皮膚障害を避ける.
*顔面の症状が高度な例では眼科医の診察を定期的に受ける.
ステロイド外用薬の使用が原因ではなく,
眼囲の皮疹を掻破,叩打することによって眼病変(白内障,網膜裂孔,網膜剥離)を生じうることに留意する.
*細菌・真菌・ウイルス性皮膚感染症を生じやすいので,皮膚をよい状態に保つよう留意する.
<参考>アトピー性皮膚炎と白内障
白内障,網膜剥離などの眼合併症には細心の注意を要する.主に掻破に伴って眼球が機械的に圧迫されることに起因し,顔面皮疹の重症例で発生しやすい.
アトピー性皮膚炎と白内障の合併が初めて報告されたのは1921 年で,1936 年にはBrunsting によって,アトピー性皮膚炎のおよそ10% に若年性の白内障が併発することが明らかにされた58).
10~20 歳代の患者に発生しやすく,急速に失明に至り手術を要することも
多い.
白内障の合併は,ステロイド外用薬の副作用と安易に診断されることがあるが,ステロイド外用薬がはじめて臨床応用されたのは1952 年であり,ステロイ
ド外用薬登場後もアトピー性皮膚炎における白内障合併率に大きな変化がないことから,アトピー性白内障は確固とした独立疾患として対処せねばならない.
アトピー性白内障は顔面の皮疹の重症度と関連しているため,顔面の皮疹をできるだけ早く軽快させる必要性が指摘されている59)60)
しかし眼瞼へのステロイド外用による緑内障の発症には注意する必要がある.
6.その他の治療法
その他の特殊な治療法については,一部の施設でその有効性が強調されているのみであり,科学的に有効性が証明されていないものが多く,基本的治療法を示す本ガイドラインには取り上げない.むしろ,その健康被害の面に留意すべきである61).
紫外線療法はアトピー性皮膚炎における代替療法(付加的治療法)の一つである.従来アトピー性皮膚炎に対しては,PUVA 療法,UVA1 療法,ナローバンドUVB 療法,UVB 療法,UVA+UVB 療法,UVA1+ナローバンドUVB 療法などが有効であるとされている62)63).
本邦ではとりわけ,ステロイド外用薬を用いた治療に反応しない例や,従来の治療により副作用を生じている例に有用であるとされている.
より良い治療効果を得るために,紫外線療法のプロトコールには紫外線にステロイド外用薬を併用する方法や,短期間ステロイド内服薬を併用する方法など,各施設において様々なバリエーションがある.さらには照射器具や蛍光管の種類なども種々にわたるため注意が必要である.