・1.ベンゾ(a) ピレン(Benzo(a)pyrene )
1)ヒトの健康影響に関連する情報
24 名 (非喫煙者) の胎盤,臍帯血,母親の血液および母乳から多環系芳香族炭化水素(PAHs) の分析を行い,全てのサンプルから,benzo(a)pyrene (BP) ,dibenzo(a,c)anthracene,chrysene が検出された.臍帯血と母乳のレベルが高かった1).
7~9 週の非喫煙者由来の胎盤外殖片 (placental explants) の培養に,50μM の BP を24 時間暴露したところ,β-HCG の分泌が増加した.この作用は BP を除去するまで持続した2).
喫煙歴のあるあるいは煙草の煙に暴露された体外受精患者の顆粒膜黄体細胞(granulosa-lutein cells) の BP-DNA adducts に対する免疫染色の強度は非暴露患者に比較して大きかった.免疫染色は核に限定されることから BP-DNA adducts の生成を示唆し,DNA 損傷の危険性を増加させる可能性がある3).
87 名の肺ガン患者 (非喫煙者) から得られた正常な肺組織の aromatic DNA adducts の量を測定した.肺ガン患者の aromatic DNA adducts は対照群に比較して有意に高かった
BP を含む xenocarcinogen と乳ガンについての総説5).
2)内分泌系・発生過程に対する影響C57BL/6N マウスに benzo(a)pyrene (BP) 1,5,10,50,100,500mg/kg を腹腔内1 回投与後,黄体数,卵胞形成の組織学的変化を観察.投与量に伴う正常排卵数への回復遅延が認められた.BP の暴露による一時的不妊現象を示唆6).
Wistar ラット5 週齢の雌雄に benzo(a)pyrene 0.25mg/ラットを筋注後3 ヶ月齢で性行動観察.雌の脊柱前彎行動率の低下,雄の射精行動の低下を認めた7).
ハムスター雄の10-12 週齢時に benzo(a)pyrene (BP) 2,10,50mg/kg/日を5 日間腹腔内投与後,4,10 週目に精子の観察.BP は精子異常は示さなかったが,精子数および精巣重量が減少した8).
Swiss マウスの妊娠10,12 または14 日に benzo(a)pyrene (BP) 及びその代謝物の BPDEと BP6M の0.4-16μl を子宮内胎児に直接投与.BP に有意な催奇形作用は見られなかったが, BPDE と BP6M に有意な催奇形作用を認めた9).
SD ラットの妊娠6-8 日または妊娠6-11 日に benzo(a)pyrene 50mg/kg/日を皮下投与.
死胚数の増加および生児数,生児体重の減少を認めた10).
B6C3F1 マウスの妊娠13-17 日に benzo(a)pyrene 0,50,100,150mg/kg/日を腹腔内投与.胎児の胸腺の萎縮とアポトーシスを認めた11).
runより:7)とか書いてあるのは文献の番号ですがほぼ全て外国の資料なので省略しました。これからも同様です。