石川 哲先生の講演9 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・電子瞳孔計検査:
 前述の検査である。最も客観性が高いために、前後の比較に利用している。
近赤外線酸素モニター(near infrared oxygen monitor: NIRO)浜松ホトニクスと英国オックスフォード大学の共同研究で開発された近赤外線を利用した脳血流量の測定装置を導入して患者診察に利用している。

経皮的に脳内に近赤外線を射入し、散乱、反射してくる吸光度を高感度のフォトマルチプライアーで増幅記録する。

近赤外線の4波長部位で脳の吸光度を測定して、4元方程式を解いて、酸化ヘモグロビン、ヘモグロビン、ヘモグロビン総量、酸化チトクローム
量を測定する。

そのブロックダイアグラムを図14に示す。

患者ではガス負荷試験で容易に脳血流の「ゆらぎ」が出現してくる。28歳女性の症例を図15に供覧する。上段が酸化ヘモグロビン、2段目がヘモグロビン、3段目が総ヘモグロビン、4段目が酸化チトクロームの吸光度を示している。横軸は時間である。

40ppbのガス吸入開始(in)から4分で総ヘモグロビンにゆらぎが生じ、10分からは酸化ヘモグロビンと総ヘモグロビンに大きなゆらぎが生じている。

12分間の吸入で中止している(out)が、ゆらぎは収まる傾向を示さない。

尚、ガス濃度は0から徐々に上昇させ、8分目で目的の40ppbに達しており、徐々の濃度上昇のために、ホルムアルデヒド臭は自覚しない。

一方健常者(25歳女性)ではまったくこのようなゆらぎは発生しない(図16)。
   
3)化学物質過敏症の臨床的研究の考察
 化学物質過敏症の診断基準はすでに石川が発表している(表1)。

その中で誘発試験陽性の項目は診断のために非常に重要である。

また1999年発表の米国での診断基準では、低濃度曝露で症状出現してくることの一項を挙げている(表2)。

現在われわれはホルムアルデヒド負荷試験では一般には40ppbを使用しているが、患者によっては8ppbの低濃度曝露でも症状は誘発されている。

いったん発症した患者の鋭敏な感覚が証明されていると言える。

トルエンをはじめ、現在揮発性の化学物質の負荷試験を始めており、徐々に経験を重ねてきているが、患者の鋭敏さには驚かされている。
 なお先に述べたように、室内空気汚染物質の3悪はホルムアルデヒド、有機リン化合物、有機溶媒であるが、その中の有機リン化合物の可塑剤一つをとっても資料3に示すような膨大な難問を抱えている。
室内空気汚染からの脱却には今後非常な努力が必要であろう。
 またガス負荷直後に症状を訴える患者もあれば、負荷数時間後に症状を出現ささせる患者もある。

また出現した症状は患者によりまちまちであるが、消退までに1週間以上かかる患者もいる。

患者にガス負荷をしないプラセボ負荷では反応はない。今後このような鋭敏な状態に達している患者の救済処置が必要な状況に来ていると考えられた。