・2 化学物質過敏症訴訟における証明
――訴訟上の問題点
被害者が住宅販売業者に対して不法行為責任を問うケースが多いそうですが、主な争点は以下の4つです。
まず、症状の存在については、一般的に肯定されるようです。
他方、因果関係については、証明が困難な場合が多いようです。
1で述べてきたように、CSの医学的解明が十分でないため、疾患とみることがいまだ否定的に評価されるからです。
近年の裁判例では、必ずしも医学的な証明を要求せず、証明の困難性はかなり緩和されています(横浜地判H10.2.25判時1642号117頁、札幌地判H14.12.27)が、MCSの場合、患者が多種類の化学物質に暴露されて発症しており、それらの多くの毒性は不明で、原因物質を特定することが難しいため、やはり因果関係の証明には困難が伴うようです。
次に、過失については、予見可能性や結果回避可能性が必要ですが、狭義のシックハウス症候群について、特に建材については、過失を認める社会的背景が整ってきているようです。
他方、MCSの場合、先に述べたように、原因物質を特定することが難しい場合が少なくなく、過失を認めるには困難が伴うようです。
損害については、当面現存している症状(検査費用や慰謝料等)については損害と認めるものの、長期間の慢性的病態である「化学物質過敏症」について(長期にわたる入院・治療費、逸失利益等)は、認められてきてはいないようです。MCSについては、保険の適用も認められておらず、高額な医療費の自費負担を迫られることからも、被害者救済の点で極めて問題があるといえると思います。
3 最後に、古川氏は、以上の議論を前提として、薬事関係の規制(製造販売後安全対策、製造物責任の医薬品への適用に関する平成5年の中央薬事審議会部会報告書、医薬品副作用被害救済制度)の考え方の利用を考えるべきではないかと提言されておりました。
runより:この記事は2006年の記事の為化学物質過敏症は保険適用ではなかった時期のものです。
2009年10月から保険適用できる様になりました。