・歴史 [編集]
CFSは比較的新しい疾病概念であるが、古代医学の巨人ガレン(AD130?201年)の著書の中にもCFSの病態のように思われる記述が残っている。
18世紀にも裕福層に多く同様の病態の患者がいた記録が残っており、著名人の中でも、フローレンス・ナイチンゲール、チャールズ・ダーウィン等も同様の病状のようであったようだという記録が残っている。
1930年代から1950年代にかけて、世界各国60ヶ所以上で発症例が報告された。
主な国はアメリカ・イギリス・オーストラリア・アイスランド・ドイツである。当時はCFSという概念がなく、発症した病院名や地域の名をとり、ロイヤルフリー病・アイスランド病などと呼ばれ、異形ポリオ・集団ヒステリーなどではないかと推察されていた。
1930年代後半に、筋痛性脳脊髄炎(Myalgic Encephalomyelitis)という名で免疫・神経学的な研究がなされ、WHOによりCFSは、中枢神経系の病気であると、1969年に分類されている。
そして、1992、1993年には、"ME(筋痛性脳脊髄炎)"と"CFS(慢性疲労症候群)" 両疾病概念は、WHOの国際疾病分類 ICD-10 G93.3 PVFS(感染症後疲労症候群)にまとめられた。
1984年には、アメリカ・ネバダ州にある人口約2万人のインクラインで、人口の約1%にあたる約200名が強い疲労などを訴えた(ネバダ・ミステリー)。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が調査に乗り出し、病名を慢性疲労症候群 (Chronic Fatigue Syndrome) とした。
1988年には診断基準も作成された。当初、未知のウイルスの関連が考えられていたが、現在は否定されている。
ただ、一部の症例ではウイルスや他の病原体が原因となっている可能性があると報告されている。
現在、CFSの発症には様々な仮説が提案されており、原因解明の研究を行っている段階である。
患者には脳(前頭葉、後頭葉領域)の血流低下が多く見られることがわかってきており、脳の機能障害が激しい疲労感と同様にCFSに共通した症状とされ、免疫系、内分泌系、神経系の異常が密接に関係してると考えられている。
日本ではあまり関心を持たれてはいなかったが、1991年に、厚生省のCFS調査研究班が発足。
1993年には、日本における診断基準を満たす患者が、474例報告された。以後、阪大を中心に、CFSの研究・診察が行われた。
2005年には、大阪市立大学医学部に疲労クリニカルセンターが設立された。一般的な疲労を含み、CFSの研究・診察を行っている。
諸外国でも研究が進められ、生理学的な異常が多く報告されるようになっている。
2001年には、イギリスの保健省首席医務官が、すべての医師はCFSを深刻な病気とみなし治療するように指導した[7]。アメリカ・ヨーロッパ諸国・韓国等でも同様の動きがある。
だが、医師の間ではCFSが身体的疾患か精神疾患か、またそもそもCFSという疾患が存在するのかといった議論が絶えない。
しかし、徐々にではあるが世界の医療従事者の中でも認知が深まりつつある。
2006年には、CDCが、C3(CFS Computational Challenge)[8][9]と題された、ゲノム学者・分子生物学者・数学者・エンジニア等で行った大々的な研究結果を報告し、CFSが存在すること、精神疾患であることを否定し身体的な病気であると宣言をした[10]。
これに合わせ、アメリカ国内で Get informed. Get diagnosed. Get help. [11][12]と題された認知キャンペーンを400万ドルをかけて開始し、アメリカ疾病予防管理センター長も、CFSを深刻な病として扱うことを訴えた[13][14]。病名の変更もアメリカで議論され、変更される予定である。2007年度、イギリス政府が再び、医師に真剣に治療するように指導し、新しい治療ガイドライン[15]を発布した。
日本においては、厚生労働省CFS研究班が廃止され未だ政府によりCFSを医療従事者に診察・治療を行う指導は行っていない。