・7. この病気にはどのような治療法がありますか
突発性難聴の原因としてウイルス感染説と内耳循環障害説があることは既に述べましたが、突発性難聴の急性期にはこれらの原因を想定した治療を行うことになります。
急性期の治療として最も重要なものは安静です。
突発性難聴の発症前に精神的、肉体的疲労感(ストレス)を感じていることが多く、心身ともに安静にして、ストレスを解消することは重要です。難聴の程度によっては入院治療が望ましい場合もあります。
安静のみでも内耳循環障害の改善が期待されます。
突発性難聴に対しては様々な治療法が検討されていますが、どのような治療法が 最も有効であるかは未だ明らかではありません。
厚生労働省研究班で、様々な薬剤の突発性難聴に対する有効性を調査いたしましたが、どの薬剤が有効かは結論がでませんでした。
従って、現時点では発症時の状況や臨床所見、既往歴などを総合的に判断して治療法を決定しています。
(1)内耳循環障害改善を目的とする治療
血管拡張を目的とした薬剤としては血管拡張薬が用いられます。
また、血栓により内耳循環障害が生じていると考えられる場合には抗凝固薬が用いられます。
代謝改善薬や向神経ビタミン製剤が併用されることもあります。
薬剤以外では二酸化炭素による血管拡張を期待して95%酸素・5%二酸化炭素混合ガス吸入が行われています。
さらには血液内酸素濃度を上昇させるために高気圧酸素療法も試みられています。
また、星状神経節ブロックが行われることもあります。
(2)ウイルス性内耳障害改善を目的とする治療
ウイルス感染に対しては副腎皮質ステロイドが広く用いられています。
副腎皮質ステロイドの持つ強カな抗炎症作用がウイルス性内耳炎を軽快すると考えられますが、免疫的な 作用機序や循環障害で生じる活性酸素を抑制するなどの循環系に対する機序も関与しています。
副腎皮質ステロイドの投与は一般に内服や点滴で行われますが、糖尿病や胃潰瘍、結核などの合併症がある場合には副腎皮質ステロイドの副作用によって、それぞれの疾患が増悪する可能性があります。
近年、鼓膜を介して中耳(鼓室)に副腎皮質ステロイドを注入すると、比較的高率に内耳に吸収されることが明らかになったことから、これらの疾患の既往がある方や、内服や点滴で改善が見られなかった場合に、この方法(副腎皮質ステロイドの鼓室内投与)が用いられるようになっています。
ただし、その方法の詳細(どれくらいの期間に、どの程度の副腎皮質ステロイドを用いるのがよいか等)については、いまだ確立したものはありません。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
難聴が改善する場合には、治療後難聴は急速に改善し、徐々にプラトーに達するような回復過程を示しますが、治療開始後より少しずつ回復する場合や全く改善しない場合もあり、様々です。予後不良の因子としては1)発症後2週間以上を経過し た症例、2)発症時平均聴力レベルが90dB以上の高度難聴例、3)回転性めまいを伴う症例、4)高齢者などが挙げられています。
突発性難聴は再発しないことが一つの特徴とされており、突発性難聴が再発するようであれば、外リンパ瘻、メニエール病、聴神経腫瘍など他の疾患を疑わなければなりません。
関連ホームページのご紹介
遺伝性難聴ホームページ
http://www.okayama-u.ac.jp/user/med/oto/oto/HHihome.htm