・7.2 重金属毒性
元素には細胞に蓄積し毒性効果をもたらすものもある。
重金属毒性は環境が健康に及ぼす深刻な懸念である。
鉛やカドミウム、水銀、ヒ素などの毒性負荷は、とりわけ子供の脳や神経システムに深刻なダメージを与える可能性がある。
毒性成分は様々なメカニズムによって多くの悪影響をもたらす。
そのメカニズムの一つ、不可逆的酵素阻害は貧血症状として現れるが、これは鉛がヘモグロビン合成過程の酵素と結びつくことで生じる。
水銀は酵素中毒症を発症させる。鉛や水銀はグルタチオンを減少させ、ビタミンB12(メチルB12)欠乏症を起こす。
ヒ素の発がん作用はDNA修復阻害の結果と考えられる。
染色体が損傷する変異原性は、カドミウムや鉛、ニッケルの活性酸素発生作用に関連している。
栄養成分や毒物成分は血液や尿、毛髪から測定することが可能である。
毛髪は血液と比べて数百倍も重金属を蓄積するため、人間や動物の慢性的重金属曝露を検査する際の有効性について定評がある。
なんらかの重金属が毛髪に蓄積されている場合には、曝露原因の調査が妥当である。
毛髪の重金属レベルが高濃度であることは、他の兆候や症状が出る以前に慢性的な曝露状態にあったことを示していると推測できる。
もう一つ別の診断方法としてポルフィリン分析がある。(訳注;ポルフィリンとは、有機化合物の一つで生命の色素ともよばれ、酸素運搬や光合成など生体内の様々な機能にかかわる。)
ポルフィリン分析結果は患者の重金属中毒や有機化学物質の曝露の度合いを特定するのに役立つ。
化学物質曝露や重金属負荷は身体に影響を及ぼし、代謝や細胞機能の悪化を招く。
尿中のポルフィリン測定はまたMCS患者の治療経過観察にも役立つ。