肺動脈性肺高血圧症 3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・7. この病気にはどのような治療法がありますか
終局的治療として、肺移植あるいは心肺移植がありますが、その生命予後にかんする成績は必ずしも満足すべきものではありません。

最近、新しい治療薬ないしは治療法が相次いで開発されてきており、内科的治療法が注目を集めるようになってきています。

今日、原発性肺高血圧症に対して最も進んだ治療法として、PGI2注射製剤(4UA76注)の静脈内持続注入療法があります。

このPGI2注射製剤はきわめて有効な薬剤ですが、その使用法に関しては細かい配慮が必要になってきます。

PGI2は2~10ng/kg/分で持続注入して肺血管拡張作用が期待できますが、治療開始時には体血圧が同時に低下しますので、この点に関する注意を怠ってはなりません。

少量から始めて数日かけて徐々に増量するようにします。PGI2の急性効果は、肺血管拡張による心拍出量の増加で、一般に肺動脈圧の低下はないか、ごく軽度の低下を示すにすぎないのですが、肺血管抵抗はほぼ確実に低下します。

原発性肺高血圧症の症例への4週間以上の継続投与による慢性効果では、血小板凝集抑制機能とあいまって肺動脈圧の低下が観察されるようになります。

このあいだ体血圧が徐々に復旧する兆しがみられて運動能力の改善につながることとなります。慢性効果で運動能力の改善がみられることが明らかになって、QOL(生活の質)の改善を求めて長期持続注入療法が注目を集めるようになってきています。

原発性肺高血圧症の患者さんに携帯用小型ポンプを使って社会復帰をめざしたものです。

携帯用ポンプ治療は、当初は心肺移植あるいは肺移植へのブリッジ治療としての効果が期待されたものですが、PGI2療法の延命効果が次第に明らかになるにつれて、今日では内科的長期治療法としての地位を確立してきています。

すでに欧米では多数の方がこの治療を受けておられます (41歳、主婦、写真)。3カ月に1回の割合で病院に通院していますが、ほとんど普通の生活ができるといいます。目覚ましいQOLの改善です。

このほか、80ppmのNOを含む吸入気をNOガス吸入装置を使って吸入するNOガス吸入療法とか、PGI2注射製剤をネブライザーでエロソルにして吸入するPGI2エロゾル吸入法などの新しい治療法があります。

本症治療に対するbreakthrough(突破口)としてPGI2が導入されて以来、他のPGI2誘導体の開発などこの方面の研究が急速に進んでおり、もっと使い易い皮下注射薬などのPGI2誘導体の開発とかPGI2関連遺伝子の導入による本症治療に関する研究が盛んに行われてきています。

そんなわけで、この難治性疾患に対しても将来的には明るい展望が期待できるようになってきました。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
原因不明の肺血管抵抗の上昇が主たる病因で、そのため進行すると右心不全を併発して死亡します。

突然死することもあります。

原発性肺高血圧症の予後は、古くより、発症すれば2~10年といわれています。成人原発性肺高血圧症32例を対象にし調べた原発性肺高血圧症の生存曲線を図2に示しておきます。

これは成人原発性肺高血圧症の発症時点を起点として法による生存曲線をみたものです。

原発性肺高血圧症は無症状で経過するので、労作時息切れなどを主訴として診断されるのは、原発性肺高血圧症の自然歴を考えるときすでに末期に近い状態といわれますが、それでも初発症状を起点とする限りは、発症初期の2~3年は生存曲線はなだらかです。

その時期が過ぎると急激に生存曲線の低下がみられます。

原発性肺高血圧症は心臓カテーテル法などで診断されるのですが、生存率は急激に低下しています。

ほとんどの症例が診断の時点から5年以内に死亡します。

なお、診断の時点が発症から死亡までのどの時点であるかということについては、個々の症例で様々ですが全症例を平均してみると、診断の時点は発症から死亡までのちょうKaplan &Meier中間点であることがわかります。

ただし、発症からすぐに診断された症例は診断から死亡までの期間は長く、逆に発症から診断までに長期間かかった症例は、診断から死亡までの期間が短い傾向にあることが判明しております。


原発性肺高血圧症の食事・栄養について
食事や栄養について気をつけることはありますか?
原発性肺高血圧症は、いわゆる生活習慣病(成人病)とは違ってとくに食事に気をつけなければいけないということはありません。

しかし、定義のところで述べたように、常用している薬物には注意する必要があります。

とくに、食欲抑制薬は服用しないようにしてください。原発性肺高血圧症は進行すると心不全を起こしてくる病気なので、過労、ストレスを避けて、食事のときには過剰な水分摂取の制限をすることが必要となります。

どうしても塩辛いものをとりすぎると、喉が乾いて水を飲むという悪循環になりますので、食事の時には、減塩食を第一に守ることが必要です。

減塩食を守っても、顔がむくんだり、下肢がはれてきたりしたときには、心不全が考えられますので、その時には入院が必要になります。

退院後は在宅酸素療法が適応になります。

生活習慣ということでは適齢期女性に多い疾患ですが、妊娠・出産は増悪因子となりますので禁忌(してはならないこと)となっています。