・4. この病気の原因はわかっているのですか
原発性肺高血圧症では、肺血管収縮を伴う原因不明の肺血管抵抗の上昇が主たる病因ですが、この病気の原因は全くわかっていません。
一般に、原発性とか特発性とかの名称がついている病気は原因不明の病気です。
原発性肺高血圧症も原因がわからないので原発性という名称がついています。
原因のはっきりしない肺高血圧症はほかにもあり、膠原病でみられる膠原病性肺高血圧症や、肝硬変や門脈圧亢進症に伴ってみられる肝門脈性肺高血圧症という病気があります。
膠原病性肺高血圧症は自己免疫異常によって起こってくる肺高血圧症なのですが、自己免疫異常があっても必ずしも肺高血圧症が起こってくるわけではなく、肺高血圧症がどういう機序で起こってくるのかは全くわかっていません。
一方では、原発性肺高血圧症にも約30%の割合で免疫異常のあることが知られ、最近では原発性肺高血圧症という病気の原因として免疫異常の関与が想定されてきていますが、なおはっきりしたことはわかっていません。
5. この病気は遺伝するのですか
はっきりした遺伝性疾患ではありませんが、家族性に発生する原発性肺高血圧症、あるいは一卵性双子に発生する原発性肺高血圧症が報告されています。
最近、食欲抑制薬の長期内服やエイズウイルス感染症で、通常より高頻度で原発性肺高血圧症が発症することが報告されるようになり、免疫遺伝情報の異常が原発性肺高血圧症の発症に関与している可能性が指摘されてきています。
ヒトゲノム解析機構から承認されたPPH 1といわれる遺伝子の同定が要望され、今日までのところ骨形性蛋白受容体をつくる遺伝子の異変が本症を起す遺伝子である可能性が指摘されてきています。
しかし、たとえPPH1という遺伝子があっても、遺伝学上の発現率はわずか10~20%であると言われています。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
初発症状を調べた成績では、労作時息切れが最も多く、ついで顔面・下肢の浮腫などの右心不全の徴候、突然の失神などです。
肺高血圧症は無症状なので、かなり進行してはじめて、労作時息切れ、労作時呼吸困難などの症状がでてきます。
あるいは肺高血圧症から右室が肥大、拡張して右心不全の状態になってはじめて、その症状として下肢、顔面のむくみがでてきます。
いずれにせよ、原発性肺高血圧症の病態がほぼ完成して、程度の差はありますが胸部レントゲン検査、心電図検査に変化が現れて、臨床診断ができるできないはべつにして、このように診断可能な状態になってはじめて、自覚症状がでてくるのです。
労作時息切れなどの自覚症状がでてくるのは、この病気の自然歴を考えるときすでにかなり進行した状態であるということがいえます。従って、この病気では早期診断ということができません。