・抗体産生不全症 [編集]
X連鎖性無ガンマグロブリン血症(X-lnked agammaglobulinemia:XLA)
ブルトンカイネースという酵素の欠損により、B細胞の分化異常を来たすため、すべてのクラスの免疫グロブリンの産生がほとんど行われない。
責任遺伝子はX染色体上にあり、伴性劣性遺伝する。化膿性細菌への著しい易感染性を示し、免疫グロブリン製剤(血液製剤)の定期的な投与を必要とする。
IgGサブクラス欠損症
IgGはIgG1からIgG4までの4つのサブクラスからなるが、そのうち一部のサブクラスが欠損するもの。重症度は様々だが、IgG2欠損症ではインフルエンザ菌や肺炎球菌に対して易感染性を示すため、中耳炎や肺炎の反復、細菌性髄膜炎の罹患などを呈する。
明確に定義された免疫不全症 [編集]
ディジョージ症候群
胸腺低形成による細胞性免疫能の低下であり、真菌、ウイルスなどの反復性感染をおこす。
一部は22番染色体長腕の部分欠損によって発症し、副甲状腺欠損によるテタニー、心血管系や食道の奇形、顔貌の異常や口唇あるいは口蓋裂などを合併することがある(22q11.2欠失症候群)。22q11.2欠失症候群に伴うものは、常染色体優性遺伝する。
毛細血管拡張性運動失調症(Ataxia teleangiectasia)
ATM遺伝子異常に起因する細胞性免疫能の低下とIgA低値が特徴で3歳ごろから中耳炎、副鼻腔炎、肺炎の反復をおこす。
小脳失調、毛細血管の拡張もおこる。
ウイスコット・アルドリッチ症候群
WASP遺伝子異常に起因する特異抗原に対するT細胞の反応性低下とIgM低値が特徴であり、新生児期から出現する出血傾向、乳児期から顕著になるアトピー性皮膚炎による慢性湿疹と易感染性、悪性腫瘍の合併がある。細菌感染のみならずウイルス感染も重症化する。
遺伝形式は、伴性劣性遺伝。
補体不全症 [編集]
補体C1q欠損症、補体C1r/C1s欠損症、選択的補体C1s欠損症、補体C2欠損症、補体C3欠損症、補体C4欠損症
いずれも非常に稀な疾患である。繰り返す細菌感染症と、免疫複合体病(全身性エリテマトーデス(SLE)に類似しており、SLE-like syndromeと呼ばれる)を特徴とする。
選択的補体C1r欠損症は症例が報告されていない。
補体C5-C9欠損症
いずれも稀な疾患である。ナイセリア属細菌(髄膜炎菌、淋菌など)に対する易感染性(感染しやすい)、重篤化(感染したときの症状が重い)を示す。
C1-C4欠損症よりは軽症である。