wikipediaより
クローン病(-びょう、英Crohn's disease:CD)は、主として口腔から肛門までの全消化管に、非連続性の慢性肉芽腫性炎症を生じる原因不明の炎症性疾患。厚生労働省より特定疾患に指定されている。
潰瘍性大腸炎とともに炎症性腸疾患 (IBD:Inflammatory bowel disease)に分類される。
歴史 [編集]
1932年にニューヨーク大学のマウントサイナイ病院の内科医ブリル・バーナード・クローンらによって限局性回腸炎として報告される。後に病名は改められたが回腸、特に回腸末端から盲腸にかけての回盲部に好発する点は確かである。
疫学 [編集]
10~30歳に多く見られ、日本での罹患者数は約2万人以上で、潰瘍性大腸炎よりは罹患者数は少なく、中高年での発症はほとんど無い。
経口避妊薬常用者では1.9倍、喫煙者で1.8倍に発症リスクが増す。受動喫煙も大きな危険因子であり、出産前に妊婦が環境たばこ煙にさらされた場合に1.7倍、子供時代にさらされたら2.0倍に罹患リスクが増す。大きなストレスも発症の危険因子である。
病因 [編集]
現在でも、クローン病を発症する正確なしくみはわかっていない。遺伝的な素因を持ち、免疫系の異常(主としてマクロファージが腫瘍壊死因子αというサイトカインを分泌して腸壁の正常細胞を傷害すること)がおこり、その上で食餌因子などの環境的な因子が関係しているのではないかと考えられている。若年層での発症が顕著であり欧米先進国での患者数が圧倒的に多いため、食生活の欧米化、即ち動物性蛋白質や脂質の摂取が関係しているともいわれる。
欧米では、クローン病のかかりやすさは特にNod2 (IBD1) の機能欠損多型やHLAの多型により強く影響を受けるが、日本人ではNod2との関わりは明確ではない。近年、日本人クローン病とTNFSF15 (TL1A) というサイトカインの遺伝子との関連が報告された。TL1Aは腸管の炎症に関連しているサイトカインで、クローン病の病変部での発現が増加していることがわかっているが、これと遺伝子多型との関連についてはいまだ不明である。
2007年、リバプール大学のJon Rhodes教授らが、畜牛にヨーネ病と呼ばれる下痢を伴う消耗性疾患を引き起こす細菌である Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis が、牛乳やその他の乳製品を経由してヒトの体内に侵入し、クローン病を引きおこしている可能性があることを発表した。
ビオチンというビタミンB群の欠乏により、免疫不全症の一種であるクローン病を発症するという説がある。
臨床像 [編集]
本疾患の病変は消化管全域に起こりうるため、その症状は多岐にわたり、それらが断続的にみられることがある。
部位 [編集]
多くは小腸・回盲部・肛門周囲に好発する。病変部位別に小腸のみに病変のある「小腸型」、大腸のみに病変のある「大腸型」、どちらにも病変のある「小腸・大腸型」に分けられ、小腸・大腸型が多くを占めている。
症状 [編集]
自覚症状としては、多くの場合「腹痛(約80%)」「下痢(約80%)」が主な症状である。その他高率に見られる症状として「体重減少」「肛門病変(痔瘻・裂肛・肛門潰瘍等)」「発熱」等があり、潰瘍性大腸炎で多く見られる「血便」はそれほど高頻度ではない。
クローン病は消化管粘膜の全層性の炎症性疾患のため、炎症が激しい状態では消化管の「狭窄」「瘻孔」「穿孔」といった変化を生じてくること多く、腸閉塞や消化管穿孔を生じてくる場合は、消化管腸切除等の外科的処置を必要とする場合も多い。