wikipediaより
エピクロロヒドリン (Epichlorohydrin) は、分子式 C3H5ClO であらわされる有機化合物。酸化プロピレンのメチル基の水素原子1つを塩素に置換した構造をもつ。エポキシドとハロゲン化アルキルの両方の性質を示し、高い反応性をもつことから、様々な化学物質の原料とされる。
性質 [編集]
常温ではクロロホルム様の臭気を持つ引火性の透明な液体。腐食性があり、吸入すると肺水腫を引き起こすおそれがあるほか、腎臓・肝臓などに障害を与える。国際がん研究機関では「おそらく発がん性がある」 (Group 2A) に分類している。
反応性が高く、加熱または酸・塩基などの触媒によってエポキシドの開環重合が進行し、クロロメチル基が結合したポリエーテルを生じる。水中では徐々に加水分解して3-クロロ-1,2-プロパンジオール(α-クロロヒドリン)となる
用途 [編集]
エピクロロヒドリンの大半はビスフェノールAなどとの共重合によりエポキシ樹脂とされ、接着剤や塗料などとして利用される。
エピクロロヒドリンをアルカリ条件で加水分解するとグリセリンが得られる[5]。この方法で生産されるグリセリン(合成グリセリン)は天然由来のグリセリンよりも高純度であるため、医療用などに用いられる。
エピクロロヒドリンのみを重合、あるいは酸化エチレンやアリルグリシジルエーテルと共重合すると、合成ゴムの1種であるエピクロロヒドリンゴムが生成する。エピクロロヒドリンゴムは耐油性・耐熱性・耐寒性・耐オゾン性に優れ、自動車部品などに使われている。
繊維や紙の染色性・耐水性・形状安定性などを向上させるための表面改質に用いられる。
メタクリル酸と反応させて得られるメタクリル酸グリシジルは、イオン交換樹脂原料や帯電防止剤として利用される。
光学異性体 [編集]
エピクロロヒドリンには、C2位をキラル中心とした2つの光学異性体がある。不斉触媒や微生物を用いた光学分割によってどちらの異性体も高い鏡像体過剰率での合成が可能[6]であり、医薬品などのキラル化合物を合成する際の原料として利用されている。
国際化学物質安全性カードより
物理的状態; 外観:
特徴的な臭気のある、無色の液体
物理的危険性:
化学的危険性:
加熱あるいは強酸、塩基の影響下で重合する。燃焼すると、有毒で腐食性のフューム(塩化水素[ICSC0163]、塩素[ICSC0126])を生成する。強力な酸化剤と激しく反応する。アルミニウム、亜鉛、アルコール、フェノール、アミン(とくにアニリン)、有機酸と激しく反応し、火災や爆発の危険をもたらす。水が存在するとスチールを侵す。
許容濃度:
TLV:0.5 ppm(TWA) (皮膚) A3 (ACGIH 2003)
暴露の経路:
体内への吸収経路:吸入、経皮、経口摂取
吸入の危険性:
20℃で気化すると、空気が汚染されてきわめて急速に有害濃度に達することがある。
短期暴露の影響:
眼、皮膚、気道に対して腐食性を示す。経口摂取すると、腐食性を示す。この物質の蒸気を吸入すると、肺水腫を起こすことがある(「注」参照)。この物質の蒸気を吸入すると、喘息様反応を起こすことがある(「注」参照)。中枢神経系、腎臓、肝臓に影響を与え、痙攣、腎臓障害、肝臓障害を生じることがある。高濃度の場合、死に至ることがある。これらの影響は遅れて現われることがある。医学的な経過観察が必要である。
長期または反復暴露の影響:
反復または長期の接触により、皮膚が感作されることがある。腎臓、肝臓、肺に影響を与え、機能障害を生じることがある。人でおそらく発がん性を示す。動物試験では人で生殖・発生毒性を引き起こす可能性があることが示されている。
物理的性質 ・沸点:116℃
・融点: -48℃(「注」参照)
・比重(水=1):1.2
・水への溶解度:6 g/100 ml
・蒸気圧:1.6 kPa(20℃)
・相対蒸気密度(空気=1):3.2
・20℃での蒸気/空気混合気体の相対密度(空気=1):1.05
・引火点:31℃(C.C.)
・発火温度:385℃
・爆発限界:3.8~21 vol%(空気中)
・log Pow (オクタノール/水分配係数):0.26
環境に関する
データ
・水生生物に対して毒性がある。
身体への暴露
吸入 灼熱感、咳、咽頭痛、頭痛、息苦しさ、吐き気、息切れ、嘔吐、振戦。症状は遅れて現われることがある(「注」参照)。
皮膚 吸収される可能性あり!発赤、重度の皮膚熱傷、灼熱感、痛み、水疱。
眼 痛み、発赤、永久的な視力喪失、重度の熱傷。
経口摂取 胃痙攣、のどと胸の灼熱感、下痢、頭痛、吐き気、咽頭痛、嘔吐、ショックまたは虚脱。