<一般的性質>
スチレンは無色ないし黄色を帯びた特徴的な臭気のある、常温では油状の液体。分子量は104.14であり、常温での蒸気圧は約0.7kPa、蒸気密度は約3.6である。従って揮発性は高いが、空気より重く、高濃度の蒸気は低部に滞留する性質があると考えられる。しかしながら、通常は対流により拡散し、空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度になると思われる。
<主な家庭内における用途と推定される発生源>
ポリスチレン樹脂、合成ゴム、不飽和ポリエステル樹脂、ABS樹脂、イオン交換樹脂、合成樹脂塗料等に含まれる高分子化合物の原料として用いられている。これらの樹脂を使用しているもの(断熱材、浴室ユニット、畳心材等の他様々な家具、包装材等)に未反応のモノマーが残留していた場合には、室内空気中に揮散する可能性がある。
<健康影響>
労働環境における許容濃度として20ppmが勧告されている。
60ppm程度で臭気を感じはじめ、200ppmを超えると強く不快な臭いに感じるという。600ppm程度で目や鼻に刺激、800ppm程度になると目や喉に強い刺激を感じ、眠気や脱力感を感じるようになる。
比較的高濃度の長期暴露により、肺や中枢神経系に影響を与え、眠気や目眩を生じることがある。ヒトにおける発がん性や遺伝子傷害性を示唆する証拠は得られていない。
<現在の指針値>
現在の指針値は、220μg/m3(0.05ppm)で、安全性の観点から影響が認められる可能性がある濃度のうち最も低くなる、ラットの吸入毒性試験において脳や肝臓に影響が認められる最小毒性量を採用し、安全率を加味して設定している。