8)アレルギー疾患の予防
ドコサヘキサエン酸
魚介類
海藻類
エイコサペンタエン酸
魚介類
海藻類
αリノレン酸
葉根
植物プランクトン
シソ油
大根
ニンジン
葉菜
日本人は先進国の中でも魚介類を最も多く摂取しており、平均的な量を摂取していればα-リノレン酸はほぼ満たしている。
その反面、日本では総脂質に占めるリノール酸の割合が先進国中で最高レベルであり、これを減らす努力が必要である。
戦後の日本人の食生活は西欧化しサラダ油や乳製品、肉類など脂肪の摂取が増えている。これらの中にはリノール酸やアラキドン酸が多く含まれ、アレルギーを起こしやすい体質となっている。
一方、和食には、脂肪が少なく、青魚や海草などにはアレルギーを起こしにくいEPA,DHAなどが多く含まれている。
現在の日本人の平均的な魚介類摂取量(88.2g/日:マグロ刺身一人前5~6切、ブリの切り身中サイズ一切など)を維持しつω-6/ω-3比を二に近づけるためにはリノール酸を多く含んだ油をどう減らすかである。ω-6/ω-3比の高いサフラワー(紅花)油や高リノールタイプのマーガリンを避け、ω-6/ω-3比の低い莱種油(キャノーラ油)などに代える必要がある。
また、マーガリンの代わりに少量のバターかオリーブオイル(オレイン酸)の使用が勧められる。
アレルギー疾患を予防するためにはリノール酸の多い食用油とそれを使ったマーガリン、マヨネーズ、ドレッシングなどを減らし、野菜類や魚介類を多く食べるようにして、血液中の必須酸系脂肪酸のバランスを改善することが重要である。
9)リノール酸過剰摂取の問題点
現在はリノール酸の過剰摂取によりアラキドン酸が増えており、種々の悪影響が懸念されている。
1) アレルギー性過敏症・・・・肥満細胞や好酸球からのアラキドン酸からロイコトリエン、プロスタグランディンなど炎症性メディーターが亢進する
2) 炎症性大腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)の増加
3) 発ガンの促進・・・・炎症の持続と活性酸素による遺伝子の障害
4) 血栓性の亢進・・・・アラキドン酸からトロンボキサンA2が分泌され、血小板凝集能をあげる。
10)戦後の栄養指導
戦後からコレステロールが動脈硬化の主要な危険因子であり、動物性脂肪はコレステロール値を上げるので悪玉、リノール酸の多い植物油はコレステロールを下げるので善玉という栄養指導が長く行われていた。
しかし、リノール酸の血清コレステロール低下作用は総エネルギー摂取量に占めるリノール酸の比率で変化し、リノール酸摂取量が15%を超えると血清コレステロール低下作用がなくなり、同時にHDL-コレステロール値が低下することがわかった。
さらに、リノール酸投与によりコレステロールが肝臓や動脈壁に貯まるので、一過性には血清コレステロール値は低下するが、肝臓が適応変化(代謝応答)すると、コレステロールを血中に出し始めるので、長期的には血清コレステロール値を低下させない。