A 検査項目及び基準値の設定根拠等の解説
検査項目 基準
(1) 遊離残留塩素 0.4mg/.以上であること。また、1.0mg/.以下であることが望ましい。
(2) pH 値 5.8 以上8.6 以下であること。
(3) 大腸菌 検出されないこと。
(4) 一般細菌 1m.中200 コロニー以下であること。
(5) 有機物等 過マンガン酸カリウム消費量として12mg/.以下であること。
(6) 濁度 2 度以下であること。
(7) 総トリハロメタン 0.2mg/.以下であることが望ましい。
(8) 循環ろ過装置の処理水 循環ろ過装置の出口における濁度は、0.5 度以下であること。また、0.1 度以下であることが望ましい。
プールの原水に何を用いているかを調べる必要がある。
プールの原水は、飲料水の基準に適合するものであることが望ましい。水道水を用いる場合は、水道法により水質管理が行われているので問題ないが、飲料水に供していない井戸水、河川水、
湖沼水等を用いる場合は、プール使用開始前に水質検査を行い、「第2 飲料水等の水質及び施設・設備に係る学校環境衛生基準」の「(2)専用水道に該当しない井戸水等を水源とする飲料水の水質」の「ア」の検査項目の基準を満たすよう努める。
また、プールの原水が井戸水等であっても、飲料水に供し定期検査を実施している場合は、プール使用開始前検査を省略し、定期検査の結果により判断する。
なお、プール水の水質検査は、プール使用期間中に検査を実施する。
..遊離残留塩素
遊離残留塩素はプール水の消毒管理の指標であり、一定濃度の保持は、感染症予防等プールの衛生管理において重要な意義をもっている。
細菌やウイルス等のプールで感染する可能性のある病原体に対して消毒効果を得るためには、0.4mg/.以上が必要である。
<参考>
【遊離残留塩素】
残留塩素とは、塩素消毒の結果、水中に残留した殺菌力を示す化学形態の塩素のことをいい、
そのうち次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンの形態で存在するものを遊離残留塩素、これらがアンモ
ニアや有機性窒素化合物等と反応して生じるクロラミン等を結合残留塩素という。遊離残留塩素と結合残留塩素との総和を総残留塩素という。結合残留塩素は、遊離残留塩素に比べて消毒効果が乏しいことから、プール水の塩素消毒については遊離残留塩素濃度により管理している。
表Ⅱ-4-1 細菌と塩素濃度との関係(Tonny による)
(15~30 秒間で病原菌を殺すのに必要な塩素濃度)
0.10mg/.で死滅 チフス菌、赤痢菌、淋
りん
菌、コレラ菌、ブドウ菌
0.15mg/.で死滅 ジフテリア菌、脳脊髄
せきずい
膜炎菌
0.20mg/.で死滅 肺炎双球菌
0.25mg/.で死滅 大腸菌、溶血性連鎖球菌
(学校における水泳プールの保健衛生管理、日本学校保健会)
プール水を介する感染症の原因ウイルスや細菌等がプールに持ち込まれたとしても、プール水が塩素消毒され、その遊離残留塩素濃度が0.4mg/.以上あれば、それらを不活性化したり殺菌することができる。
図Ⅱ-4-1及び図Ⅱ-4-2は、実際に採取した学校プール水中において残
留塩素濃度が0.4mg/.あればアデノウイルスを不活化できることを示している。表Ⅱ-4-1は
短時間内に病原体を死滅させる有効塩素濃度をまとめたものである。
水素イオン濃度は、pH 値5.8 以上8.6 以下であることとされている。
この範囲を超えて、水が酸性に傾くと浄化能力が低下し、金属の腐食が進行するといわれ、逆にアルカリ性に傾くと消毒用の塩素剤の効果が低下することから、中性付近を維持することによって、効率的な浄化、消毒を行うことができる。
図Ⅱ-4-1 実際に採取した各校プール
水中における(アデノウイルス3型の不活化動態)
図Ⅱ-4-2 実際に採取した各校プール
水中における(アデノウイルス8型の不活化動態)