毒物の新たな恐怖1 | 化学物質過敏症 runのブログ

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ラジオNIKKEIより薬学の時間
2009年2月12日放送分
シリーズ 重篤副作用疾患別対応マニュアル(1)
「薬剤性過敏症症候群」
愛媛大学皮膚科学教室教授
橋本 公二

DIHSは原因薬剤投与中止後も進行・再発を繰り返す特異な薬疹
 本日は、薬剤性過敏症症候群(DIHS)についてお話ししたいと思います。
 DIHSはdrug-induced hypersensitivity syndromeの頭文字をとったもので、当初hypersensitivity syndromeという名称が使われていましたが、hypersensitivity syndromeの名称があいまいであること、薬剤性ということを明確にしようということ、またヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の再活性化を伴うという疾患概念を強調しようということ、などの理由により8年ほど前に、我々が提唱したものです。現在では本邦のみならず、海外でも使われるようになっています。


 DIHS(薬剤性過敏症症候群)はStevens-Johnson症候群、Toxic epidermal necrolysisと並ぶ重症型の薬疹ですが、私がDIHSの患者にはじめて出会ったのは13年ほど前のことで、スルファサラジン投与中の乾癬性関節症、これは尋常性乾癬という皮膚疾患にリュウマチ様の関節症状を伴うものですが、その患者で、全身症状を伴う薬疹と思われる症状が発現しました。
 この患者はhypersensitivity syndromeと診断されたのですが、症状が伝染性単核球症様であったため、EBウイルス、サイトメガロウイルスをはじめとして、ウイルスの検索を行ったところ、偶然にHHV-6の再活性化を見いだし、さらに、同様の症例がもう一例見つかったことから、この関連は偶然ではないであろうと考えるようになったわけです。
 このHHV-6とDIHS(薬剤性過敏症症候群)の関連が広く知られるようになったのは1998年に我々と塩原らのグループが、DIHS(薬剤性過敏症症候群)が薬剤アレルギーとウイルス感染症の複合した新しい疾患概念であることをArchives of Dermatologyに報告したのがきっかけとなりました。
 さて、DIHSは、50年以上前から、DDS症候群、anticonvulsant hypersensitivity syndromeなどの名称で報告されていましたが、この時には個々の原因薬剤に対応する名称で呼ばれていました。

しかし1994年、Roujeauらはこれらに共通点があることに着目し、hypersensitivity syndromeと呼ぶことを提唱し、さらに後に、DRESS(drug rash with eosinophilia and systemic symptoms)の名称を提唱しております。

 DIHS(薬剤性過敏症症候群)は臨床的にいくつかの特徴があります。

まず、①原因薬剤が、フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン、ゾニサミド、DDS、サラゾスルファピリジン、メキシレチン、アロプリノール、ミノサイクリンにほぼ限定されていること、

②原因薬剤の投与開始後2週から6週後に発症すること、

③発熱、末梢血の白血球増多、異型リンパ球の出現、好酸球増多、肝機能障害、全身のリンパ節腫脹、などの全身症状を伴うこと、

④これらの症状が原因薬剤の投与を中止したあとも進行したり、再発を繰り返したり、軽快するまで1カ月以上の経過を要することがしばしばあること、などがあげられます。

通常の薬疹では、原因薬剤を投与すると速やかに発現し、中止すると症状が直ちに消退することが多いわけですが、DIHSでは全く逆になっています。この点からもDIHS(薬剤性過敏症症候群)が極めて特異な薬疹であることがおわかりいただけると思います。

なお、皮疹は斑状丘疹型(時に多型紅斑)で始まって紅皮症となることが多く見られます。