背景説明 2000年3月
電磁界と公衆衛生:「用心政策」
人工的な電磁界(EMF)による潜在的な健康影響は1800年代後半より関心事項となっており、ここ40年ほど特に注目されています。
電磁界の一般的な発生源には送電線、家庭内の電気配線、電気製品、モーターで作動する機器、コンピューターの画面、放送・通信施設、携帯電話及びその無線基地局などがあります。
人々への電磁界曝露はさまざまな自主的制限、法的制限によって規制されています。これらの制限のなかで最も重要なものに、各国の安全基準とともに国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)によって設定された国際ガイドラインがあげられます。
ガイドラインは、短期間から長期間の電磁界曝露により生じ得るあらゆる危険を、制限値に十分な安全係数をもたせて回避するように作成されています。従って、実際の曝露レベルはほとんどの場合、勧告されている制限値をはるかに下回っています。
電磁界の不確実性
電磁界の潜在的な健康リスク評価には多くの不確実性が含まれています。特に、いくつかの疫学研究においては電磁界の曝露と人の病気には弱い関係性が示唆されています。これらの研究内容にはさまざまな病気や曝露条件が含まれていますが、論拠としていちばん強いものは、家庭内の商用周波(50/60Hz)電磁界の曝露で小児白血病のリスクを増加させる可能性を示しています。しかし、数多くの動物実験などの科学的証拠はこの可能性を裏付けておらず、また疫学研究の多くが、それ自体の曝露量評価が不適切であるなどの問題を抱えている。
これらの証拠について検討した種々の専門委員会は、一貫して説得力に乏しいとの見解を示しています。例えば1997年、米国国立研究審議会(US National Research Council)は『現時点での証拠では、「家庭内の商用周波電磁界」への曝露が人の健康に危害を与えるものであることを説明できない』と結論付けました。同様に、電磁界への曝露に関する1998年のガイドラインでICNIRPは、「電磁界への曝露と癌に関する疫学研究の結果は、(中略)曝露ガイドラインを設定するための科学的根拠とするには不十分である」と述べています。これまでに、低レベルの電磁界による危険が実際に存在すると結論付けた主要な委員会はありません。しかし、多くの科学的不確実性が存在しつつも人々はこの問題に関して強い懸念を懐いているのも事実です。