イミグラン(一般名:スマトリプタン)は、英国グラクソ・スミスクライン社が開発した5-HT 注1)1B受容体及び5-HT1D受容体に選択的な作動作用を有する画期的な片頭痛治療薬です。
片頭痛の発症機序は十分に解明されていませんが、頭蓋内外の血管が過度に拡張することが主な要因であると考えられています。従来より、5-HTと片頭痛の関連が言われてきましたが、近年の研究においてその関連受容体は5-HT1受容体、さらには5-HT1B受容体及び5-HT1D受容体(以下、5-HT1B/1D受容体とする)であることが解明されました。5-HT1B/1D受容体は脳動脈に多く分布し、頭蓋内外の血管収縮作用に関与すると考えられています。また、三叉神経終末からの神経ペプチド(CGRP注2)など)の放出にもこの5-HT1B/1D受容体の関与が示唆されています。
英国グラクソ・スミスクライン社では1970年代よりセロトニンの基本骨格であるインドール核を有する化合物を中心に5-HT受容体に対して作動作用あるいは拮抗作用を有する化合物の合成、スクリーニングを行ってきました。そして、1980年代に5-HT1B/1D受容体に作動作用を有するコハク酸スマトリプタンが選択され、1980年代半ばに英国において臨床試験が開始され、1990年代初めに同国にて注射液、次いで錠剤が承認され、現在、世界で注射液(自己注射)は90ヵ国以上、錠剤は100ヵ国以上で臨床使用されています。
イミグラン点鼻液は、既に販売・使用されている注射液ならびに錠剤の有効成分であるコハク酸スマトリプタンの遊離塩基をその有効成分とし、現在、世界50ヵ国以上で臨床使用されています。我が国では1989年より臨床試験が開始され、2000年1月にはイミグラン注3(皮下専用注射)が片頭痛・群発頭痛に対して承認されました。また、2001年6月にイミグラン錠50が片頭痛に対して承認され、2003年4月にイミグラン点鼻液20が片頭痛に対して承認されました