診断
診断は,薬物投与後,数分から数時間のうちに反応が生じる場合に示唆される。しかしながら,多くの患者ははっきりしない性質の過去の反応について報告する。その場合,同等な代用薬(例,梅毒治療におけるペニシリン)が他になければ,検査が考慮されるべきである。
皮膚試験: 即時型(IgE媒介性)過敏性の試験は,βラクタム系抗生物質,ヒト以外の血清(異種血清),ならびにいくつかのワクチンおよびポリペプチドホルモンに対する反応を診断するのに有用である。しかしながら,典型的には,ペニシリンアレルギーを訴える患者で皮膚試験陽性を示すのは10~20%にすぎない。また,ほとんどの薬物(セファロスポリン系を含む)の皮膚試験は信頼できず,IgE媒介性反応を検出するにすぎないため,麻疹状の発疹,溶血性貧血,腎炎の発現を予測するものではない。
即時型過敏反応の既往がある患者にペニシリンを使用する必要がある場合は,ペニシリン皮膚試験が必要である。ヒスタミンおよび生理食塩水を対照として,BPO-ポリリジン結合物およびペニシリンGが用いられる。まずプリック法(アレルギー性およびその他の過敏性疾患: 特異的検査を参照 )が用いられる。患者に重度で強烈な反応の既往がある場合,初回の試験では試薬を100倍に希釈すべきである。プリック試験が陰性ならば続いて皮内試験を行う。皮膚試験が陽性なら,ペニシリンによる治療はアナフィラキシー反応を誘発する可能性がある。試験が陰性なら重篤な反応が起こることは少ないが,起こらないということではない。ペニシリン皮膚試験が患者に新たな感受性を誘導した例はないが,通常は,不可欠なペニシリン療法を開始する直前にだけ,患者を試験すべきである。
異種血清の皮膚試験では,アトピー性でなく,かつ以前にウマ血清を投与されたことがない患者にはまず1:10溶液でプリック試験を行うべきであり,この試験で陰性ならば1:1000溶液0.02mLを皮内へ注射する。感受性のある患者では,直径0.5cmを超える膨疹が15分以内に現れる。以前に血清を投与されたことがある患者は過去の反応の有無を問わず全員,および疑わしいアレルギー性の病歴がある患者は全て,まず1:1000溶液で試験されるべきである。陰性結果はアナフィラキシーの可能性を除外するが,その後の血清病の発生を予測するものではない。
その他の試験: 薬物誘発試験では,過敏反応を急激に引き起こすために用量を増量しながら原因と疑われる薬物が投与される。この試験は,管理された状況で実施されるならば安全で効果的である。血液学的薬物の反応試験には,直接および間接抗グロブリン試験がある(溶血による貧血: 診断を参照 )。他の特異的な薬物過敏性の検査(例,RAST,ヒスタミン放出,好塩基球または肥満細胞の脱顆粒,リンパ球転換)は信頼できない,または実験段階である