そえだ信「君に、最大公約数のテンプレを」、11月24日「119 謝罪されてみた」が公開されています。
「な、何だあ?!」
しばらく遅れてきたトーシャは、ひいひいと喘ぐ二人と少し離れた場所で飲物を飲みながら寛いでいるハックを見て驚きの声をあげます。そして、ハックの説明を聞いて今度はあきれた声を。
「僕は今後一切、そいつらと十五メートル以内に接近しない。紹介の責任をとって、トーシャが面倒を見てやってくれるか」
「まあ、それこそ仕方ないな」
「何とも呆れるしかないがお前ら、ハックが攻撃魔法を使えないと聞いて、甘く見たわけか」
「は、は――」
「断っておくがな、こいつは『収納』だけでよっぽど俺たちより高い攻撃力を持っているぞ。反撃がトンガラシ水だなど、まだ手加減されてるんだ」
「ヒ、イ?」
「本気でお前らを殺しにかかるなら、毒物を口にぶち込むこともできたろう。何ならお前たちの頭上に大岩を落とすやり方の方が、よっぽど後の手間が楽だったかもしれん。地面にめり込んで、死体も見つからないだろうからな」
「ヒ――」
「ヒイ――」
「まあどんな殺し方をするにしても、死体や痕跡を『収納』して放っとくなり、地中深くに埋めるなり、簡単に完全犯罪ができてしまう。お前らにはできない真似だな」
「ハア――」
『本当に、少しは口中の苦痛が減ったらしい。
涙と鼻水でぐしょぐしょの顔を手で拭い、情けない目を見合わせ。そうしてから身を起こして、二人はばたばたとこちらへ寄ってきた。
「止まれ!」
「ハ――」
鋭く呼びかけると、四本の足に急ブレーキがかけられた。
そのままの姿勢で、半泣きの目をすがるようにこちらに投げてくる。
「今後一切、この距離以内に近づかないでくれ。分かったと思うが、君たちの魔法はこちらに効かない。この距離なら『収納』も使えないだろう。一方こちらは『取り出し』の距離が君たちより長いんでね。今の距離なら、もう一度唐辛子をご馳走できる」
「ヒイ――」
慌ててご両人は、両手で自分の口を覆った。』
「ハ、ヒ――」
「すん――ヒ――ません――」
「申し――訳――ございませーーん」
「現時点で命までとる気はないから、そっちで勝手にやってくれ」
『大きく溜息をつき、トーシャはまたゆるゆると首を振った。
「知り合っちまった以上は、もう仕方ねえ。お前ら当分、俺の目の届くところから離れるな。人と交流すると碌なことにならない気がするから、とにかく魔物調査目的に同行する。いいな?」
「はい」
「はーい」
「今言われたように、今後決してハックには近づくな。他の人間にも、魔法で威嚇など絶対するな」』
そんなトーシャの言葉にハックは付け加えます。「万が一、こちらの仲間に手を出すなどしたら、絶対許さないからな。君らが何処に逃げても、必ず追い詰めて報復する」
それでもまだ「でもおーー」「『収納』、有効活用しなきゃもったいないしい。きっと、大儲けできるのにい」」などと性懲りも無く言う二人に、ハックは彼らの持つ能力をこの世界の普通の人に気付かせてはいけない理由の説明を始めました。
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刑事の鈴木は、目覚めるとロボット掃除機になっていた! しかも眼前には男の死体が……。『地べたを旅立つ』改題。解説/辻真先
二月の苫小牧。完全犯罪をもくろむ男が用意した完璧なはずのアリバイは、意外な人物によって崩される。人を【援護/まも】るつもりが、いつも必ず容疑者にしてしまう――史上最も不器用な「探偵」が活躍する、デビュー作『掃除機探偵の推理と冒険』に続く新感覚ミステリ
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