幸田浩子「花のまち 〜日本のうたIII〜」 伊福部昭「ウムプリヤーヤー」異彩を放つ原始的な躍動感 | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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幸田浩子さんのニューアルバム「花のまち 〜日本のうたIII〜」、ここ数日スマートフォンと車のオーディオで何度も何度も聴いています。

表題作の「花のまち」や「平城山」、「落葉松」等の有名曲はもちろん素晴らしかったですし、知らない曲も多かったにしろ中田喜直作品などやはり幸田さんの声や言葉の扱い、なにより歌のうまさに惹きつけられたのですが、このアルバムの中で異彩を放っていると思ったのがが冒頭に掲載した伊福部作曲の「ウムプリヤーヤー」と言う曲でした。

 

「ウムプリヤーヤー」と言う曲名も意味不明でしたが、歌詞が「オロッコ族伝承詩」とあるのにまた首を傾げてしまいます。

 

歌詞も意味不明ながらもいかにも伊福部作品らしく一見単調に思われるリズムの繰り返しが原始的な、と言うのが適当かどうかは分かりませんが不思議に湧き上がるような躍動感が感じられる音楽で、それを歌いあげる幸田さんの透明な声はまるで女神のように神々しく響きます。卑弥呼ってこんな存在だったのかも…、なんて思わず想像してしまったくらいです。

 

この曲のことが知りたくなり、インターネットで検索してみると……

 

まず、オロッコ族について。

オロッコ族というの正式にはウィルタと呼ばれる樺太(サハリン)の先住民族とされるツングース系少数民族だそうです。

「ウィルタ(ウィルタ語: уилта、ロシア語: Ороки)は、ロシア連邦サハリン州の樺太(サハリン島)東岸を主な居住域とする少数民族で、ツングース系に属する。その生活の舞台は、伝統的には樺太中部の幌内川流域と北部のロモウ川流域であった。アイヌからはオロッコ (Orokko) と呼ばれた。オロチ族ないしオロチョン族と混同されることもあるが、異なる民族である。本来の言語はツングース諸語の系統であるウィルタ語である。なお、言語学者を中心にUiltaを「ウイルタ」と書くこともある。」(Wikipedia ウィルタ より)

 

「ウムプリヤーヤー」で調べるとYouTubeにこんな動画がありました。

 

伊福部昭: サハリン島先住民の3つの揺籃歌 (1949) [日本語・英語字幕付] 藍川由美 (sop) 遠藤郁子 (p)

 

1949年に発表された伊福部昭の「サハリン島先住民の3つの揺籃歌」の第3曲が「ウムプリヤーヤー」だそうです。

 

以下、YouTube動画説明欄より。

『 揺籃歌すなわち子守歌である。
 伊福部は、北海道帝国大学の学生時代、サハリンに遊んで先住民の生活を見聞し、また太平洋戦争中には、札幌でサハリン先住民の芸能の録音資料に接して、伝承詩を採集した。その成果がこの歌曲集である。ギリヤークに取材した第2曲では、札幌でのギリヤーク研究が反映していようが、第1曲と第3曲の音楽は、北方異民族への共感に基づく、作曲者の純然たる創作と考えた方がよい(大体そのように作曲者自身も述べている)。この作品は、’49年10月、ベルトラメリ能子の独唱で初演された。
第1曲「ブールー ブールー」(キーリン) Andante
キーリンは、シベリアを中心に、現在3万の人口を有するツングース族(自称エヴェンキ族)の、サハリンに於ける呼称。『樺太要覧』(’35年版)にはこうある。「本種族の我が樺太に居住する者、僅か16人。大陸に居住中支那文明の感化を受けたる為か、他種族に比し文化の度進めたり。漂白性に富み転々居を移せり。」
第2曲「ブップン ルー」(ギリヤーク) Molto lento
第3曲「ウムプリ ヤーヤー」(オロッコ) Allegro
オロッコ(自称ウィルタ族)は、ツングース系の種族で、近年はサハリンに500人ほどが住むとされる。『樺太要覧』には、こうある。「1、2月は山に入り、鹿、てんを獲り、3月より5月には海岸に出でてあざらしを捕え、6月より8月迄は鱒鮭漁に従ひ、特に8月の候魚族の遡河するに至れば、川を遡り之が漁獲を為す等一定の居所を定めず、山野水草を逐ふて天幕内に起臥す。一般に怠惰にして、年少にして煙草、酒に親しむ者あり。かくして生活難に迫れば他を恨み、或は同族互に反目する状態なり。」
(片山杜秀、30CM-391~2『伊福部昭 全歌曲』解説書より)』

 

 

「ウムプリヤーヤー」歌詞
guze ulari kanatʃi
ʃinianami gosihaʃoka

guze ulari kanatʃi
ʃiniğa busi goeka

guze ulari kanatʃi
buluː buluː
bara bara appan?i ʃo

かわいい娘や
年はいくつだい

かわいい娘や
名前はなあに

かわいい娘や
おやすみ おやすみ
ねんねこ ねんねこ ぐっすり眠れ

 

 

歌詞を見ると何のことは無い、といった感じの普通の子守唄、のようですが伊福部昭さんの曲は子供をすんなりと寝かしつけるにはあまり向いていないような(笑)

 

藍川由美さんの歌もとても素敵ですね。「サハリン島先住民の3つの揺籃歌」の全曲を聴けるのもとても貴重だと思いました。

 

 

 

「花のまち 〜日本のうたIII〜」より「平城山」「落葉松」

 

 

 

 

 

 

 

花のまち ~日本のうたⅢ~

今を生きる私たちの心に響く日本のうた
後来に歌い継ぐべく 日本のうた
短い歌曲に込められた郷愁や憧憬、自然への思いやりを真摯に対峙して、美しく、気高く歌い上げる幸田浩子。
ストレートに心に沁み入る日本語を紡いだ歌を、今作は、時代を超えて愛され、歌い継がれる歌曲はもとより、
現代を生きる作曲家による作品も選曲する。


 

 

伊福部昭:全歌曲

ドイツでもフランスでもなく,アイヌなど北方の少数民族のウタにこだわって40年代から書き続けられてきた伊福部の歌曲全集。メロディラインのみならず,伴奏楽器の使い方も極めて独創的で,響きが実に面白い。

 

 

 

 

 

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