そえだ信「君に、最大公約数のテンプレを」第109話「遊び半分してみた」トウフ登場、です(笑) | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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そえだ信「君に、最大公約数のテンプレを」、7月28日「109 遊び半分してみた」が公開されています。


『数日後、ナジャが動ける日にイザーク商会に行かせ、会長夫人とソースの相談をさせることにした。
 三種類のソースの調合配分を教え、料理長を交えて包み焼き用の味つけを工夫する。
 ついでにナジャは包み焼きの作り方を教えてもらうことになって、張り切っている。』
孤児たちもそれぞれ自分たちの役割りを自覚しそれを果たすことにやりがいを感じ始めている様子。

『「年送りの日にはみんなに包み焼きを作ってあげられるように、しっかり習ってくるよ」とマリヤナと力強く約束して、昼前にナジャは出かけていった。
 目的を果たして帰宅し、年末までに女子四人で知識を共有して調理の練習を重ねたい、と話している。』

そうこうしているうちに十一の月が終わる頃初雪があり、十二の月に入って十日ほど過ぎると根雪になってしまいました。そうなると街の住人達は外出行動を控えるようになります。それまでに準備した食料などで春まで過ごしていくのです。しかし、そうなると肉などのたんぱく源がどうしても不足しがちになります。その辺は豆類の備蓄を多めにして補うのが常識らしい、とのこと。

ある日、文官カスパルに誘われて、文官のカスパルに誘われて、製塩の作業場を見学の作業場を見学したハックはあることを思いつきます。
製塩作業で廃棄される物と豆を使って…

『廃棄される物資に興味を寄せていると、「捨てるものだから欲しければ勝手に持っていけ」と許可されて、一抱えの容器に入れて持ち帰らせていただくことにした。』

「ハック、何を作っているの」

『帰宅して遊び半分に作業していると、ニールが覗き込んできた。
 これ幸いと、作業経過の記録を手伝わせることにする。
 冬期の食料用として豆類、特にキマメはかなり大量に備蓄している。商会に製産を委譲した後も少量ずつながらミソの製造を続けているし、世間ではそれほど人気のないキマメでも冬目前になると値が上がるので、会長に勧められてその少し前に買い込んでいたものだ。』

『ミソの製造用に水に漬けていたキマメを少量流用することにして、柔らかく水煮する。 煮汁とともによく潰した豆を煮沸消毒した布で漉し、絞る。
 漉して落とした液状のものを冷まし、状態を見ながら今回手に入れてきた液体を加えて混ぜる。
 ややしばらくの時間を置くと、次第に煮汁は固まりを見せてきた。
 冷たい水に入れて、しばらく落ち着ける。
 少し待って皿に取り、ニールと二人で味見した。
 頼りないほどの柔らかさだが、舌に少しざらつきが残る。それでもまちがいなく、味わいは期待した通りのものだ。』

「何これ?」
「トウフという食材なんだが、どうだ。口に合わない?」
「合わなくはない。あまり味しない。柔らかすぎて、あまり食べた気しない」
「まあ、そうだろうな」

「いやさ、慣れない食材だと思うけどこれ、肉に近い栄養価があるはずなんだ。冬場はあまりノウサギ肉を料理に使えないだろう。そこを補う意味で、スープとか煮物に入れてみたらいいと思うんだ。ただ豆を使った料理とは一風変わって、飽きが来ないんじゃないかと」
「ああ、なるほど」
「そういうことなら、スープとかに使うのはいいかもしれないね。あまり味が強くない分、どんな料理にも使えるかも」
「でもこれ柔らかすぎて、少しかき混ぜただけで壊れてしまいそう」
「だよなあ。もうすこし硬めに作る工夫をした方がいいか」

『そういう確認で、試作実験を続けることにした。
 当面収入は安定しているし、冬場の栄養という面でも緊急な問題があるというわけではないので、かなり呑気に遊び半分の心境だ。』


トウフ登場、です(笑)

このトウフに文官カスパルが興味を示します。
『何よりも「廃棄物の有効活用」という点が、文官の関心を惹いたようだ。
 トウフの製造を商用化するに当たっては領が行っている製塩の現場から材料を買い付けなければならないという事情で相談を持ち込んだのだが、なかなかに前向きの反応を得たことになる。』

「うむ。製塩の過程から新たな収入を生む可能性がある、ということだな。そういうことなら出入りの業者に持ちかけて、そのトウフとやらの製造を提案してみよう」
「お願いします。基本的な製法はこちらから伝えますが、まだまだ工夫次第で品質を向上させる余地があると思われますので」
「なるほど、そうした工夫研究に熱意を持つ業者が望ましい、ということになるな」
「はい」

 

 

 

 

 

 

掃除機探偵の推理と冒険 (ハヤカワ文庫JA)

刑事の鈴木は、目覚めるとロボット掃除機になっていた! しかも眼前には男の死体が……。『地べたを旅立つ』改題。解説/辻真先

 

 

臼月【うすづき】トウコは援護【まも】りたい

二月の苫小牧。完全犯罪をもくろむ男が用意した完璧なはずのアリバイは、意外な人物によって崩される。人を【援護/まも】るつもりが、いつも必ず容疑者にしてしまう――史上最も不器用な「探偵」が活躍する、デビュー作『掃除機探偵の推理と冒険』に続く新感覚ミステリ

 

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