今日はルドルフ・ゼルキンとブダペスト弦楽四重奏団が競演したブラームスのピアノ五重奏曲を。
「ピアノ五重奏曲ヘ短調 (ドイツ語: Quintett für Pianoforte, 2 Violinen, Bratsche und Violoncell) 作品34は、ヨハネス・ブラームスが1864年に完成させた作品。ピアノと弦楽四重奏という編成のための五重奏曲で、この編成でのブラームスの唯一の作品であり、代表作の一つである。
作品に時間をかけて取り組むのはブラームスの創作によくあることだが、この作品も複雑な過程を経ている。はじめは弦楽五重奏曲として計画されたものの、周囲の反応を受けて2台ピアノのために改作されたあと、ピアノ五重奏曲として完成した。」(Wikipedia ピアノ五重奏曲 (ブラームス) より)
ブラームスの代表作でもあり室内楽曲の中では録音の数も比較的多い曲ですが、それらのディスクの演奏者を見るとこうした室内楽曲としては所謂スターピアニストが参加しているものが多いのに驚きます。ルービンシュタイン、リヒテル、ポリーニ、シフ、エッシェンバッハetc。そう言ったピアニストたちに演奏意欲を沸き立たせる何かがある曲なのかも知れません。
今日聴いた録音でピアノを弾いていたルドルフ・ゼルキンはそのずっと前、1938年にブッシュ四重奏団とこの曲の録音を遺していてこれはSP時代名盤と呼ばれていました。
(ブダペスト弦楽四重奏団との録音は1963年、ステレオ初期の録音です。)
ゼルキンはブッシュ四重奏団とは若い時から長い期間行動をともにしていた同志のような関係でしたがブダペスト弦楽四重奏団とはある意味他流試合のような緊張感があったかも知れません。
このブラームスのピアノ五重奏曲と言う曲、編成は弦楽四重奏にピアノを加えたそれほど珍しくない形ではありますが、ピアノが室内楽の一部と言うより例えばピアノ協奏曲でのピアノとオーケストラのようにピアノと弦楽四重奏がある種対峙するような緊張感をもっている曲のような気がします。
室内楽での演奏の経験も長くかつドイツの伝統を継ぐ一流ピアニストとして実績を積み上げたゼルキンとこの時期世界最高の弦楽四重奏団の一つに挙げられるブダペスト弦楽四重奏団の顔合わせはまさしくこの曲にふさわしい取り合わせだったでしょうし、実際その演奏はその期待に見事に応えるものでした。
演奏のテクニックだけで無く気力もそして音楽的な「余裕」もすべてが絶頂にあったのでは無いかと思われるピアニストと弦楽四重奏団の「競演」は大きな感興を心の中に巻き起こしてくれます。すてきな時間が過ぎていきました。
音量的なクライマックスを形成するスケルツォの楽章にこの演奏の凄さが集約されている。リズムの組み合せが崩壊しそうになるが,そんな事よりひたすら音楽に身を投じてゆく様は素晴しい。ゼルキンのトリオの出だしがまたいい。
ブダペストSQ最円熟期の至芸!一切の無駄と虚飾をそぎ落した孤高のブラームス、待望の復刻!
1997年以来の国内盤発売。一切の無駄と虚飾をそぎ落とし、それ故に溢れ出す楽曲自体の純粋な美しさを聴き手に感知させるブダペストSQの芸風は正にブラームスにうってつけである。ここでの演奏は'58年から'63年のもので、前述のブダペストSQの持ち味にまろやかさが加わっていた最円熟期。いずれも最高の名演。