ナイトハルト・フォン・ロイエンタール 中世ドイツのシンガー・ソング・ライター | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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中世ドイツにナイトハルト・フォン・ロイエンタールと言う天才的な抒情詩人がいました。

ロイエンタールなんて名前を聞くと私など反射的に銀河英雄伝説を思い出してしまったりします。「ミッターマイヤーはまだか!」・・・なんて(笑)

 

しかし、今日は未来の宇宙の話では無く、中世のドイツ(日本で言うと鎌倉時代くらい。)に活躍した抒情詩人、作曲家、歌手、今で言うシンガー・ソング・ライターのようなことをしていた人が主役です


中世のドイツの宮廷ではミンネザングと言う叙情詩がもてはやされていました。中世貴族社会の伝統的な騎士道精神や「宮廷の愛」を歌い上げると言った内容だったようです。
「ミンネザングは、12世紀から14世紀にかけてドイツ語圏において隆盛を極めた抒情詩であり、詩人は作曲もし、伴奏付きで自ら歌った。主題は主として恋愛である。 「ミンネ」とは、中高ドイツ語で「愛」の意味であり、「ザング」は現代ドイツ語の「ゲザング」と同じで「歌」の意味である。」(Wikipedia ミンネザング より)

そのミンネザングを作り、リュートなどの楽器を弾きながら歌うミンネゼンガーと呼ばれる抒情詩人が数多く現れました。彼らの中には王侯貴族の出身の者も庶民出身の者もいたようです。13世紀にもなると形式的で堅苦しい物になりつつあったミンネザングに新鮮な風を吹き込んだのがナイトハルト・フォン・ロイエンタールでした。彼のミンネザングは宮廷ばかりでは無く庶民からも支持され様々な伝説を残したと言われます。

「バイエルン出身のドイツの詩人,ミンネゼンガー。生没年不詳。推定詩作年代は1210‐40年ころ。最初はバイエルン公の,後にはオーストリア公の宮廷で活躍し,晩年のワルター・フォン・デル・フォーゲルワイデと衝突した形跡がある。彼の残した全作品(約70編の舞踏歌)は,二つのタイプに分類される。ひとつは,牧歌的背景と騎士が村の娘にもてることをほのめかす会話とを中心にする〈夏の歌Sommerlieder〉で,もうひとつは,騎士がその恋人を騎士のまねをしたがる村の伊達者に奪われる物語風の〈冬の歌Winterlieder〉である。」(コトバンク ナイトハルト[ロイエンタールの] より)

「ナイトハルト・フォン・ロイエンタール(Neidhart von Reuental, 13世紀前半)は、中世ドイツのきわめて重要な叙情詩人である。ナイトハルト作とされる作品は150編、約1,500詩節に及び、その内の55編には曲が付されている。ただ、どの歌、どの詩節が詩人自身の本当の作品か、後代のナイトハルト風の作品(いわゆる偽作)かは必ずしも明らかではない。作品を伝える写本の多様さから、15/6世紀に至るまで広く彼の歌が愛好されたことは明瞭だろう。この天才は「宮廷的なミンネザングを農村・田舎の舞台に移し、この方法でミンネザングをパロディー化し、風刺する。同時に彼は極度に精神化されてしまったミンネに再び官能的性的な側面を開いた」。ナイトハルト・フォン・ロイエンタールは実に、内容面・形式面で従来のミンネザングの文字通りの「革新者」であり、続く世代に大きな影響を与え、またナイトハルト伝説を生むことにもなった。」(Wikipedia ナイトハルト・フォン・ロイエンタール より)
 

こちらは、そのナイトハルト・フォン・ロイエンタールの作品と伝えられる歌を中心に当時の雰囲気の再現を目指したアルバムです。

 

ナイトハルト:宮廷歌人と彼の「涙のベール」 Minnesinger & His Vale of Tears: Songs & Interlude

 

シンプルな旋律と楽器の響きがなんとも言えない懐かしさのような物を伝えてくれる音楽、のような気がします。

複雑な多声音楽が発達する前の音楽ですが、それだけにより直接的に心に訴えてくる物があるかも知れません。

 

Minnesinger & His Vale of Tears: Songs & Interlude

中世後期。ミンネゼンガーとはドイツの宮廷歌人で、徳の高い貴婦人をあがめ、その人のために愛の歌を歌うという役を担っていました。そんな時代、ナイトハルト(1185?-1240?)は最も人気のある宮廷歌人のひとりとして知られています。とはいえ、詩人でありミュージシャン、所謂「シンガーソングライター」であった彼の歌は素朴で、ある時は暴力的であり、また時にはエロティックであり、宮廷文化を伝えつつも、また一味違った「市井の音楽」として人気を博したのです。憂鬱さを歌うかと思えば、必要に応じて舞曲を演奏、また季節の風物詩を取り入れた歌の数々は、当時の生活を彷彿させる興味深いものです。このアルバムに収録されている作品は「フランクフルト・フラグメント」と呼ばれる資料から修復したもので、少なくとも5人の作曲家の名前が認められますが、大部分はナイトハルトのものであろうと推測されています。1000年近くの長い年月を経て蘇る中世の響きは、聴き手を不思議な気分にさせてくれること間違いありません。
アンサンブル・レオーネス
マルク・レヴォン(指揮、ヴォーカル、リュート、ギター、ヴィエール)
エルス・ヤンセンス=ファンミュンスター(ヴォーカル)
バティスト・ロマン(ヴィエール、バグパイプ、ヴォーカル)
録音 2010年4月6-9日 スイス ビンニゲン,ハイリヒ・クロイツ・キルヒェ