ピエール・モントゥー/北ドイツ放送交響楽団 「チャイコフスキー 交響曲第5番」かけがえのない名演 | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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今日は「チャイコフスキー 交響曲第5番」を聴きました。演奏はピエール・モントゥー指揮北ドイツ放送交響楽団(NDR SO)、1964年に録音された演奏です。この演奏については以前にも投稿したことがありますが私にとってとても大切な録音です。

 

 

 

モントゥーのチャイコフスキー5番というと1958年に録音されたボストン交響楽団との演奏が有名ですし、1963年のロンドン交響楽団との物も名演と言われています。しかし、私がときどき「チャイコフスキー5番」を聴きたいと思った時選ぶのはいつもこの北ドイツ放送交響楽団との演奏なのです。(この曲の演奏で名演と呼ばれる物が数多くあるのは知っています。私のライヴラリーにも先に挙げたモントゥーの3種の録音はもちろんムラヴィンスキー、カラヤンを始めとして10数種類の音源がありますしAmazon Music Unlimited等で聴いた音源を入れるとかなりの数にはなると思います。それでも・・・なのです。)

 

「ピエール・モントゥー(フランス語: Pierre Monteux, 1875年4月4日 - 1964年7月1日)は、フランスの指揮者。(中略)
古典から近代音楽まで幅広いレパートリーを誇り、力強く豊かな音楽で世界中のファンに愛された。レコーディングも数多く残されている。またモントゥーはフランス人でありながら、ブラームスを最も敬愛しており、ブラームス晩年の頃に本人の前で演奏をしたことを終生誇りにし、また、常々自分がブラームスに対して失礼な演奏をしているのではないかと心配していたという。ブラームスの作品の中では「ドイツ・レクイエム」の音楽をとりわけ愛し、死の床でも最期までそのスコアを離さず胸に抱えていたという。ロンドン交響楽団との交響曲第2番などの録音を残しているほか、ベートーヴェンなど、他のドイツ音楽にも多くの演奏を残している。フランスにおいてドイツ音楽を得意とした指揮者は、ベルギー人のアンドレ・クリュイタンス、ドイツ系アルザス人のシャルル・ミュンシュら外国系が多く、ユダヤ系とはいえほぼ生粋のパリジャンであるモントゥーは異例に属する。」(Wikipedia ピエール・モントゥー より)

 

モントゥーは若い時はディアギレフのロシア・バレエ団で指揮を担当し、ストラヴィンスキーの『春の祭典』、『ペトルーシュカ』、ラヴェルの『ダフニスとクロエ』、ドビュッシーの『遊戯』などの名作バレー音楽の初演を指揮しています。特に怪我人まで出る大騒動となり20世紀最大の音楽史的事件とも呼ばれるストラヴィンスキーの『春の祭典』初演の指揮者だったことは有名です。それが1913年5月。この北ドイツ放送交響楽団とのチャイコフスキー交響曲第5番を録音したのは1964年2月。50年以上の年月を経た後、と言う事になります。(指揮者としてデビューしたのは1906年だそうです。約58年の間、現役であり続けたと言うことですね。)

この録音はモントゥー最晩年の記録(たぶんほぼ最後の録音の一つ)なのですが、それにしては何と言うエネルギッシュな演奏でしょうか。88歳の老人とは思えない勢いと深い情感。オーケストラの少し重ための響きもあり伝わってくる音楽に身体ごと揺り動かされるような気になります。

私がこの録音のレコードを初めて聴いたのは中学生だった頃です。そして高校生の頃、一番良く聴いていました。もやもやした気分で聴いたこともあります。悩んだり落ち込んだりした時に聴いたことも。モントゥーのチャイコフスキー5番とワルターのモーツァルト「プラーハ」は、聴きながら涙を流した、なんて言う今考えるととんでもなく恥ずかしい想い出とぴったりとくっついてしまっている、私にとっては他と換えようのない録音なのです。(その当時のレコードはもうありませんし、あっても傷だらけで聴けないだろうと思います。しかしCDになって買った同じ録音の物を聴くとやはりその頃の想い出が浮かんでくる。不思議な物です。)

 

これは、やはり今聴いても良い演奏だとつくづく思います。こう言う演奏と若い時期に出会えたことに感謝。たぶんこれからもずっと聴き続ける音源だと思っています。

 

 

チャイコフスキー:交響曲第5番、ロメオとジュリエット

巨匠の有終の美は端正でも眩い。

巨匠ピエール・モントゥー(1875-1964)、逝去の年の録音です。モントゥーは生粋のフランス人ですが、ベートーヴェンやブラームスなどのドイツ音楽とともに、ロシアものを大変得意にしていました。新カップリングとなる本盤収録のチャイコフスキー2曲は、63年のロンドン響とのヴァンガード録音も遺されている十八番のレパートリー。端然とした結構のなかに、高齢を全く感じさせない瑞々しい情感を漂わせた至芸を堪能できます。
モントゥーには有名なBSOとの1958年録音(RCA)があり、ライヴを含めるとチャイコフスキーの5番はよほどこの曲が気に入っていたのか複数の音源が存在します。その中でもこの北ドイツ放送響との録音は亡くなる年の最晩年の録音として一目置かれてきました。BSOやLSOと比べるとオーケストラの響きが暗めであることもあり、一見この演奏は地味に聴こえる傾向にありますが、内容的にはモントゥーの特徴を良く伝える録音と言えるでしょう。驚くべきは解釈や表現が過去の盤と比較してもそれほど変わりが無いということです。しかも各楽章の演奏時間は1分以内という正確さ。ブレない指揮でありながらもオケとの特別な音色はそれぞれ異なります。この盤では滑らかさや音色の深みという点においては格別です。
新カップリングの「ロメオとジュリエット」は同時期の録音ですがニュアンスは5番とは多少異なります。より推進力のあるこの演奏もまた、モントゥーの手腕が高次元で融合した名演です。尚、これらの音源はアナログ・マスターではなくデジタル音源として保存されていましたので、デジタルデータより新規でリマスタリングを行いました。その効果は顕著で、よりモントゥー最晩年の至芸を身近に体感することができます。

録音:1964年2月6&14日、ハンブルク