ドヴォルザーク「スターバト・マーテル」スメターチェク/チェコフィル 深い悲しみを噛みしめるように | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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ドヴォルザークの「スターバト・マーテル」を聴きたいと思い音源を探しました。まずは取りあえずYouTubeをあれこれ。

この曲は大分昔レコードを持っていて何度かは聴いていたはずなのですが、その頃はあまりよく分からず何しろ長い曲ですからあまり繰り返し聴かないうちにレコードを手放してしまっていました。最近、ちょっと一部だけ聴いて興味がわき、じっくり最初から聴いてみたいと思ったのです。

 

誰の演奏が良いのかなどもあまりよく分かっていなかったのですが、YouTubeで歌詞の日本語訳字幕附きの動画を聴き始めました。

 

しかし、これは素晴らしい演奏でした。

ヴァーツラフ・スメターチェク指揮

ステファニア・ヴォイトヴィチ(S)
ヴィエラ・ソウクポヴァー(A)
イヴォ・ジーデク(T)
キム・ボルイ(Bs)
プラハ・フィルハーモニー合唱団
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

1961年に録音された音源だそうです。

 

「スターバト・マーテル」と言うのはカトリック教会の古くから伝えられている聖歌で、イエス・キリストが磔刑となった時の聖母マリアの悲しみが綴られた詩は感動的なもので、古くから多くの作曲家がこの詩に曲を付けています。特に有名なものはペルゴーレージの遺作となった作品でしょう。

 

 

ドヴォルザークは1875年9月に生まれたばかりの長女が亡くなった悲しみからこの曲の作曲に着手します。しかしなかなか筆が進まず完成させられずにいるうちに次女、長男と続けて事故や病気で失うという悲劇に見舞われたのです。その悲しみを乗り越えようとする想いから作曲は再開され長男を亡くしてから2ヶ月後の1877年11月に完成されました。

 

作品は次の10の部分から成っています。

1.Stabat mater dolorosa  (四重唱と合唱)
2.Quis est homo, qui non fleret  (四重唱)
3.Eja, Mater, fons amoris  (合唱)
4.Fac, ut ardeat cor meum  (バス独唱と合唱)
5.Tui nati vulnerati  (合唱)
6.Fac me vere tecum flere  (テノール独唱と合唱)
7.Virgo virginum praeclara  (合唱)
8.Fac, ut portem Christi mortem  (ソプラノ・テノール二重唱)
9.Inflammatus et accensus  (アルト独唱)
10.Quando corpus morietur  (四重唱と合唱)

 

スメターチェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏は、ドヴォルザークの深い悲しみを噛みしめるように、そして失った我が子への想いを慈しむようにじっくりと歌い上げていきます。ドヴォルザークらしい親しみやすい旋律。心が揺すられるようです。けっして美しい録音とは言えないのでしょうがオーケストラも合唱も深い共感を持って演奏している姿勢が伝わってきます。そしてソリスト達の歌も見事。思わずハッとしてしまうような瞬間が何度も・・・。

 

この録音、Amazon Music Unlimitedでも聴けるようです。でもCDを買って置いておきたいような気もします。さてどうしようか・・・

 


「スターバト・マーテル(ラテン語: Stabat Mater、「悲しみの聖母」「聖母哀傷」)は、13世紀のフランシスコ会で生まれたカトリック教会の聖歌の1つである。ヤコポーネ・ダ・トーディ (Jacopone da Todi) の作とされる。題名は、最初の1行(Stabat mater dolorosa、悲しみの聖母は立ちぬ)からとられている。
中世の詩の中でも極めて心を打つものの1つであり、わが子イエス・キリストが磔刑となった際、母マリアが受けた悲しみを思う内容となっている。
15世紀からセクエンツィアとして歌われるようになった。16世紀のトリエント公会議でいったん除かれたが、1727年、ローマ教皇ベネディクトゥス13世の時代に復活した。
中世以来、西洋音楽の多くの作曲家がこの詩に曲を付けている。」(Wikipedia スターバト・マーテル より)

「スターバト・マーテル(Stabat Mater)作品58(B.71) は、アントニン・ドヴォルザークが作曲した、ソプラノ、アルト、テノール、バス、混声合唱、管弦楽のための教会音楽である。ロッシーニの同名の作品と並んで、19世紀の『スターバト・マーテル』の名作のひとつとして知られている。」(Wikipedia スターバト・マーテル (ドヴォルザーク) より)
 

 

ドヴォルザーク:スターバト・マーテル 2枚組

数ある同曲の名盤の中でも最も演奏時間の長い部類に属するものながら(93'22")、スメターチェクの雄渾な指揮ぶりとチェコ・フィル迫真の熱演から、かねて決定盤に数えられている名盤。ソリストも粒揃いです。

 

 

 

エリシュカ指揮大阪フィルの演奏も聴いてみたい気がします。

ドヴォルザーク : スターバト・マーテル Op.58 (B.71) (Dvorak : Stabat Mater / Radomil Eliska | Osaka Philharmonic Orchestra) [2CD] [Live Recording] [日本語帯・解説付]

ヤナーチェクの孫弟子であり、チェコ音楽の伝道師であるエリシュカ。大阪フィルとの初共演は2008年、ヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」でした。スラヴ語の難解な歌詞にも関わらず見事に歌い切った合唱団のレベルにマエストロは感嘆し、次はぜひドヴォルザークの「スターバト・マーテル」をやろうと言ったそうです。この「スターバト・マーテル」は、もともとエリシュカが大阪フィルとの共演に当たって希望演目に入れていた楽曲でもありました。そして2015年、4度目の共演にしてついに、念願のプログラムが演奏されることになりました。この機を特別なものと感じた大阪フィルが「マエストロとのこの曲の演奏を残したい」とアプローチをかけ、ライヴ録音が実現。エリシュカがこよなく愛する作品に敬意を持って、大切に奏でた演奏です。指揮者の素晴らしい統率力のもと、透明な美しさを持つ管弦楽、壮麗にして暖かみのある合唱、曲想に合わせ巧みな表情を見せるソリストが一体となって織りなす至高のドヴォルザーク。アンダンテやラルゴといった緩やかな楽章が連なり、悲しみが徐々に癒されていく感動的な音楽を見事に描き切っています。ライナーノートには歌詞対訳の他、この曲を「魂のドラマ」と表現する片山杜秀氏による熱い曲目解説を収録。