Kindleで黒田基樹著「関東戦国史 北条VS上杉55年戦争の真実」と言う本を読んでいます。
戦国時代の歴史は好きなのですが、どうしても最終的に統一を果たした信長、秀吉、家康のことが中心になりますから、そこから遠く離れた関東周辺のことは大まかなことしか知識としては入ってきていない状態でした。(東北のこととなるともっとひどいです。せいぜい伊達政宗の周辺のエピソードを少し・・・くらいしか分かりませんね。)
この本は北条氏の二代目氏綱と関東管領上杉氏との抗争から始まり北条、今川、武田の三国同盟、関東管領家をついだ長尾景虎(上杉謙信)の関東への参戦、北条氏と武田信玄との確執、上杉と北条の和解と破綻、信長への服従と続く関東の覇権争いとその動向に右往左往する国衆たちの動きなどが解説されています。年号で書かれているところが分かりづらい部分があったり、人の名前がかなりややこしかったりで軽く読むのに適しているとは言えないかも知れませんが、とても面白い本でした。ともかく長い年月ずっと続く小さな確執や戦乱。いったい何が彼らにそんな行動をとらせたのだろう。
上杉謙信が何度も関東に出征して圧倒的な戦果を上げながら結果として何も手にすることが出来ずに終わるのが今までは分かったようで不思議でもあったのですが、関東の事情をこのようにして読むと、それもまた興味深く思えてきます。
そして、これだけの年月このような戦乱を続けた歴史を見るとまた織田信長という人の特殊さが際立ってくるような気がします。つまり長い戦国乱世が続いたのは織田信長とその手法を学んだ秀吉、家康という特殊な武将の登場を待つためだったのではないか。その時の利のためにあちらに付いたりこちらに付いたりという所謂「国衆」の存在を決定的に否定する信長のような武将が出現しなかったことが関東の悲劇だったのでは無いかと思うのです。(信長の出現は敵対する武将たちにとっては恐怖であり悲惨な事態だったかも知れませんが、長い目で見ると小さな戦乱が何十年も続くという訳の分からない状態をなくしてしまったことに繋がったのですからともかく完全に潰すか服従させるという信長のやり方はやはり凄いことだったのだと思います。)
長い長い年月をかけて北条氏がようやくつかみかけた関東の覇権は信長への服従という形で収束しかけ・・・、と言うところでこの本は終わります。
信長へ服従の形をとることで守ろうとした北条氏の関東の覇権もその後は秀吉により完全に終わりを迎えるわけですが、そんな結末を知ってもこの時代の関東のことをもっと詳しく知りたいような気がしました。
関東戦国史 北条VS上杉55年戦争の真実 (角川ソフィア文庫)
信長の出現、秀吉の天下統一で、戦国時代は終焉を迎えた。天下取りの舞台は西日本にあったといわれてきたが、戦乱の始まりも終わりも、実際は関東の動きが基準になっていた!関東の動向をなぞるように、畿内では室町幕府の秩序を脅かす下克上が相次いだ。関東の覇権戦争の中心にいたのが西から来た新勢力の北条氏と、旧来の関東秩序勢力である山内・扇谷の上杉氏である。両氏の関東支配権を懸けた争いから戦国史の真相に迫る。