学生時代の思い出、まだ続きます(笑)
1979年1月、第16回弘前大学混声合唱団演奏会の記録です。今日はまずその第1ステージから。
この年は「カルミナ・ブラーナ」や「モーツァルト レクイエム」のような大曲に挑戦したわけではありませんが、何故か(笑)5ステージ、約2時間になるという長いコンサートになってしまいました。
第1ステージは合唱組曲「山に祈る」でした。
この曲をステージに乗せるまでになんだか随分色んな事があった気がします。
前年の定演が終わった後、私は高田三郎の「わたしの願い」ともう一つ、「ある曲」を次の定演でやろうと決めていました。この「ある曲」は実はその年の定演でやりたいと思っていた曲でした。でもその時はチーフコンダクターが「レクイエム」をやることになったため取り下げたのです。「レクイエム」が歌えるならその方が嬉しい。それで、今度こそ、とその「ある曲」を早々と練習し始めていたのですが・・・。コンクールの曲が決まった時、残念ながらこの曲はまた取り下げざるを得ないことが分かりました。コンクールの曲、そして定演で常任指揮者が振るステージと同じ作曲家の同じカテゴリーの曲をやるわけには行きませんから(笑)
こうなって、悩みました。もう一つ何かやりたいけれど何にしようか。サブコンダクターがブリテンの曲をやりますし、常任指揮者はモーツァルト。それならもう一曲日本の曲でも良いか。
日本の曲と言っても高田三郎の曲はかなり難解な詩の曲で、芸術的ではありますがあまり取っつきの良い曲では無いと思います。
ならば。
日本の合唱曲は、歌う立場で考えれば良い曲が数え切れないくらいあります。
しかし、合唱を知らない人が聴いて面白い曲はどれくらいあるだろう?
合唱にあまり興味の無い人にも訴えかけることのできる曲って、どれくらい・・・
それなら、この曲だ。
と頭に浮かんだのが、この「山に祈る」でした。
(決めた時は曲の長さを忘れていました(笑))
しかし、分かりやすい曲はそれ故に反発も。
「お涙ちょうだい、じゃないの」「浪花節みたい」団員からはそんな声もちらほらと。(高田三郎の曲の時は「意味が分からない」と言う声が聞こえましたから、まあどちらにしても色々あるようです(笑))
コンクールが終わったすぐ後(ですから10月頃、です。)
常任指揮者の西谷先生から、定演にもう一曲追加したいという話がありました。
田中利光作曲 合唱組曲 魚の譜です。
「他はそのままで良いから一ステージ追加してくれ。」ということでした。
西谷先生のステージを追加するのは、全く異存はありません。練習時間が少し短いのは不安ですが、まあやるしかないでしょう。やれるはずだ、とも思いました。
でも、そうなると・・・。5ステージは長いな。合唱団もお客さんも疲れるんじゃ無いかな。
「山に祈る」、止めようか。
練習の後、マネージャーチーフに、
「5ステージは長すぎるよな。」と声をかけました。「「山に祈る」を・・・」と言いかけた時、
「全然問題ないんじゃ無いですか。」彼は即座にそう断言しました。
「でも、あまり普通のコンサートじゃ・・・」
「普通って、なんすか? だいたい今までも普通なんて事は無かったと思いますけど。」
横で団長もにこにこ笑顔を浮かべています。
「大丈夫。大丈夫。」
そうか。大丈夫か。
この定演は何が何でもちゃんとやらなきゃな、ぐちゃぐちゃ考えている場合じゃ無いんだな、その時改めて強く思ったのでした。
合唱組曲「山に祈る」 弘前大学混声合唱団第16回定期演奏会より
清水脩作曲 合唱組曲「山に祈る」
指揮 添田 学 ピアノ 内藤玲子 朗読 福井千江子(劇団雪国)
弘前大学混声合唱団
弘前大学混声合唱団第16回定期演奏会より
1979年1月28日 弘前市民会館大ホール
山の歌
リュック・サックの歌
山小屋の夜
山を憶う
吹雪の歌
お母さん、ごめんなさい
朗読してくれた福井さんの熱演。今も深く感謝しています。
