何日か前の記事で、「煉瓦色の街」を「同じ頃やっていた「カルミナ・ブラーナ」や「ジプシーの歌」の陰に隠れ、」と書きましたが、この「ひたすらな道」はそれ以上にモーツァルトとバッハの狭間で影の薄い存在だったかも知れません。(なんて(笑))
はらへった めしくわせ 「煉瓦色の街」 弘前大学混声合唱団第14回定期演奏会より
「混声合唱曲として作曲され、「弦」は1975年(昭和50年)8月24日、東京放送合唱団(NHK放送)により、「姫」「白鳥」は1976年(昭和51年)2月21日、盛岡コメット混声合唱団によって初演された。『わたしの願い』『水のいのち』という名作をこの世におくった髙田三郎/高野喜久雄による第3作目。作者はこの組曲でいっそうの冴えをみせ、ほりさげの奥深さ、のぼりつめる高みを感じさせないではおかない。この作者ならではの緻密さ、質の高さがうかがえる名作。」(Wikipedia ひたすらな道 より)
この曲の練習を始めたのは1977年の夏頃ですから、初演から1年半ほどしか経っていなかったんですね。
ラジオでこの曲の演奏を聴いてこれをやろうと思ったと言う記憶がありますので、もしかすると初演の演奏を聴いたのかも知れません。
髙田三郎の曲の中では比較的色彩的というか映像を思い描きやすい曲だと思います。でも詩の解釈は難しい。
何度も何度も読み返し、朗読し、それでも納得できずまた楽譜を引っ張り出し・・・
詩のイメージが夢に浮かんだこともありました。
何人かの団員と飲んで談笑していた時、一人の女子からこの曲の詩の解釈について聞かれました。
何と言ったかは覚えていないのですが、酔っていたこともあり随分一生懸命話したと思います。
「ようやく、この歌のイメージがつかめたような気がします。」
その人は笑いながらそう言いました。
「練習の時、みんなの前でそういう風に話してくれれば良いのに。」
でも、結局わかりやすくは話すことができませんでした。それだけの自信も持てないまま演奏会になってしまったのかも知れません。
本番の直前。私はかなり緊張していたと思います。いよいよステージに出ようかという時、ピアニストの内藤さんと目が合いました。
「みんな声があまり出ていないみたいだから、いつもよりちょっとテンポ速めにしようかな。」
「はい。私はその方が良いです。」
にこっと笑った内藤さんの顔を見てようやくステージに向かうことができる余裕が戻ったのを覚えています。
高野喜久雄作詩 高田三郎作曲
混声合唱組曲「ひたすらな道」
1.姫(ひめ) 2.白鳥(はくちょう) 3.弦(いと)
指揮 添田 学 ピアノ 内藤玲子
弘前大学混声合唱団
弘前大学混声合唱団第15回定期演奏会より
1978年1月21日 弘前市民会館大ホール