小津監督作品の音楽と石井妙子「原節子の真実」 | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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大分昔ですが、小津監督の作品のビデオなどを探しては観ていた頃がありました。まだビデオテープの時代です。ビデオとして出ている作品も少なかった上にレンタル店などに日本の古い映画を置いている所はまたとても少なくあちこち探しては一本一本ようやく観ていたという感じでした。(今はとても良い時代です。小津監督の作品などほぼすべてが映像ソフトとして出ていますし、観ようと思えば色々な手段がありますし・・・ね。)

今日、ふと小津監督作品の音楽を聴きたいな、と思ったのですが考えてみると小津作品の音楽を担当していた人の名前が思い浮かびません。そう言えば、ゴジラの伊福部昭や黒澤作品の早坂文雄と言った人たちに比べ小津作品の作曲者が話題になることは少なかったような気がします。私は小津映画の音楽の落ち着いてゆったりとした日本的な気分が好きなのですが。

インターネットで「小津監督作品 音楽」と検索してみると斎藤高順(さいとうたかのぶ)と言う人の名前が浮かんできました。

東京物語(1953年)
早春(1956年)
東京暮色(1957年)
彼岸花(1958年)
浮草(1959年)
秋日和(1960年)
秋刀魚の味(1962年)

どうやら戦後の名作の多くはこの人が手がけているようです。

「1924年、東京・深川の酒屋の次男として生まれる。1942年に日本大学第一中学校(旧制、現・日本大学第一高等学校)を卒業。1943年に東京音楽学校(旧制、現・東京芸術大学)に入学し、1947年に卒業。1949年に同校の研究科を修了。東京音楽学校在籍中の1944年10月に陸軍戸山学校に入校し、戸山学校卒業後は終戦まで同校で部隊歌や吹奏楽曲の作曲に従事。戦後は、映画音楽を中心に作曲家として主に小津安二郎作品の音楽を手がけた。
行進曲「ブルーインパルス」(もともとはFM東京の番組「フレッシュ・モーニング」のテーマ曲として使われていたもの)を作曲したことをきっかけに航空自衛隊に招聘され、1972年7月から1976年3月まで航空自衛隊のセントラルバンドである航空中央音楽隊の隊長を務めた。自衛隊を1等空佐で退官後には警視庁音楽隊長を11年間務めた。
東京音楽学校で信時潔から作曲を、金子登からピアノと指揮法を学んだ。」(Wikipedia 斎藤高順 より)
Youtubeで聴ける曲を何曲か聴いてみましたが、激しさは無いけれど抒情的で優しく風景が浮かんできそうな曲想は魅力的です。もっとまとめて聴きたいという気分にさせてくれる音楽です。もう少し浸っていたいな。
 

 

 

小津作品の音楽を聴いているとそこから思い浮かんでくるのは・・・

小津監督作品というと何と言っても女優「原節子」を忘れるわけにいきませんね。

暫く前に読んだ本をもう一度取り出しました。

石井妙子「原節子の真実」

私が小津監督作品にのめり込んだきっかけはこの女優のに存在が大きかったかもし知れません。

「原節子」と言うと、私が物心ついた頃にはもう表舞台には一切姿を現さない幻の女優、と言う存在でした。日本映画史上最高の美貌とか「永遠の処女」と言った言葉だけが一人歩きしているようでした。

私が最初に小津監督の作品を観ようと思ったのは、(それは「麦秋」です。)その出演者に「原節子」の名前があったからだと思います。

日本映画史上最高の美貌、「永遠の処女」などと言う言葉からは日本的で華奢な女性を頭に思い浮かべます。

映画を見始めて始めの方で現れた女性はそのイメージとは全く違っていました。

日本人の女性にしてはかなり大柄で、華奢などと言う言葉は当てはまりません。
カメラの正面に座ったその女性の顔の造作はすべて大きく、とくに目と鼻が大きすぎるのでは無いかと感じられるくらいです。

一瞬がっかりしかけたくらいでした。

しかし、その映画を見ているうちにそんな気分は吹き飛びました。

原節子の仕草、言葉遣い、表情、何よりその瞳の輝き。

私は魅了されていたのです。


それから小津監督作品のビデオを観ることと同じくらいに「原節子」に関する本を見つけると反応してしまうようになりました。

で、暫く前に読んだのがこの本でした。

とても興味深い本。

原節子という人の本音がどこかから聞こえるような気がします。

 

 

原節子の真実 (新潮文庫)

「14歳で女優になった。戦前、戦後の激動の時代に112本の作品に出演、日本映画界に君臨する。しかし42歳で静かに銀幕を去り、半世紀にわたり沈黙を貫いた。数々の神話に彩られた原節子とは何者だったのか。たったひとつの恋、空白の一年、小津との関係、そして引退の真相――。丹念な取材により、伝説を生きたひとりの勁(つよ)い女性の姿を鮮やかに描き出す決定版評伝!」(Amazon 商品の説明 より)