北海道で年配の人がよく使う言葉に「あずましい」と言うのがあります。
北海道弁、と言うより東北以北でよく使われる言葉だと思うのですが、
北海道では「あずましい」より「あずましくない」と否定形で使われることの方が多いかもしれません。
「あずましい」の意味は、落ち着くとか居心地がいい、という感じ。
(だから、「あずましくない」は居心地が悪いとか場の雰囲気になじめないときなどに使われます。前の記事で書いた「いずい」が皮膚感覚的な不快感、違和感を表すのに対し「あずましくない」は心理的な不快感、不安定感を表しているのだと思います。)
否定形で使われることの方が多いかもしれない、とは書きましたが
私には肯定形の「あずましい」の方がなじみ深い感じがします。
それは、母がよく言っていたから。
家族で遊びに出たり、ちょっとした旅行から帰ってきたりしたとき、
家の茶の間に入るとすぐ母は言いました。
「ああ、やっぱりうちが一番あずましいね。」
どんなに楽しく遊んできた後でも、
いつもそう言ってにこっと笑う。
それからお茶を一服して、もう一度、
「やっぱり、うちがあずましいね。」
いつも、そうでした。
若い頃はその言葉のニュアンスもあまり分かりませんでしたし、
また言ってる、くらいにしか思っていませんでしたが
最近になって、なんだか「あずましい」と言う言葉がとても好きになってきました。
自分が口にするのは照れてしまうのですが、
「うん、うちが一番あずましいね。」
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母が亡くなってもう21年。
いつの間にか私も母の亡くなった歳に近づいています。
ねえ、お母さん
そちらは
あずましいかい?