このGWは外へ出かけよう
コパ先生の言葉です。
今年に限らず、GWは風水的には
4月。今年は最高の旅行月にあたる。
そういう意味で、できるだけ
外出しよう。自分の吉方位へ
行こう。そういうことなのだと
思います。
というわけで、私は今日も
南西へ。
日盤的には
北東方位が最大吉方だったんですが、
今月は年盤、月盤ともに南西が大吉方位。
今日は盤が揃っているわけではないけれど
南西も吉方位だったので、
ダメ押しで南西の気をいただきに
行きました。
お土産に、菖蒲湯用の菖蒲の葉。
それから菖蒲の花を買ってきました。
ラベンダー色。
飾ってある南方位の厄をよけると
ともに、「一番になる」という気を
くれます。
ということで、今日のチラ見せ
コーナーです。せっかく捕らえた
ヒロインに逃げられちゃったあとの
某組織の様子。
まとめ読みはこちらでどうぞ。
(kindleアプリ推奨)
「あ——————っはっはっはっは………こいつはいい!はっはっはっ……苦心惨憺の果てに、ようやく捕らえた北川千晶に…あの小娘に、シュテファンはたったの2週間たらずで逃げられましたとさ!」
東ベルリンの中央街の一角を占める、白亜の美術館。その4階にある小さなうす暗いリビングで、いま大笑いの声を響かせているのはローゼンクロイツ幹部の一人、ゲオルク・ドロイゼンだ。今年34歳になった彼は、五分刈りにした赤毛の頭を揺らして、まだ笑いが止まらない。そんな彼の笑い声を、小さなテーブルの向こうで聞き流している壮年の男がいた。前頭部が薄くなった飴色の髪、エメラルドの瞳にかけた飴色の眼鏡、パリッとしたダークグレーのスーツを着こなした彼は上品な紳士の風情だ。
「しかしなあ、ヨーゼフ。“ぺろぺろキャンディ “はなぜ、ケネディ空港であの兄妹を助けたりしたんだ?空港まで来たなら、そのまま飛行機に放り込めばよかっただろうに」
ヨーゼフと呼ばれた飴色の髪の男が何か言おうとすると、不意にリビングのドアが開いた。
「————それが“あの方”のご指示だったからだ。ゲオルク」
言葉とともに入ってきたのは、グスタフ・シュテーデルだった。
「どういうことですか?グスタフ様」
貫禄と落ち着きをみせるヨーゼフが品のよい口調で尋ねると、コーヒーが入ったマグカップを手にしたグスタフは、色あせたゴブラン織りのソファーに静かに腰をおろした。
「シュテファンの側近アードルフ・レグニッツが、いったい何回千晶の拉致に失敗したと思う。だから、“あの方”は仰ったのだ。強引に連れ去ろうとするから、摩擦が生じる。むこうから出向いてくるよう仕向ければよい、とな」
「なるほど!義理堅く善良なランカスターの性格を、うまく利用したのか。さすがはウォルフガング様だ」
感心したようにゲオルクはうなずいたが、グスタフはふん、と鼻で笑った。
「あの兄妹の捕獲なんぞ、本当はどうでもいい。肝心なのは、 “シュテファンの信頼”の方だ。アードルフ・レグニッツが何度も失敗している千晶を、“ぺろぺろキャンディ”がみごと捕獲することで得られる信頼………そのためには拉致などという安直で薄っぺらい手段ではなく、”さすがだ、ギュンター!”とシュテファンに言わしめるような方法で事を成す必要があった————ということさ」
「それじゃ千晶を逃がすことも、ウォルフ様のご計画だったんですかね?」
「当然だ。ゲオルク、おまえは知らんのか?なぜシュテファンが千晶を欲するか、その理由を」
「物理的能力…のためでは?」
「むろん。奴は、それを軍事利用する腹だ。————ソビエト軍が駐留する、わが東ドイツと壁を挟んでにらみ合っている西ドイツは、東西冷戦の最前線に立たされている。ニュークリア・シェアリングと称して、核まで持ち込まれたわが国に対し、西は軍事力を強化したい。ところがオイルショック後の大不景気続きで、国としては、経済の立て直しが最優先課題。だから千晶を欲するのさ。武器にも盾にもなりうる、あの娘の強い物理的能力は、日本でいうところの、一騎当千というやつだ。おまけに軍備増強のような巨額の金がかからない………美味い話じゃないか。奴が千晶に執着するのはあたりまえだ。————だが、わかるか?だからこそ捕らえたあの娘を、あのままシュテファンに預けておくわけにはいかなかった。適当な頃合いに娘を逃がせとウォルフ様がお命じになったのは、そのためだ」
「ならいっそ、あの小娘を消してしまえばよかったのでは?」
思いつきで軽く言ったゲオルクを、グスタフは切れ長のラベンダー色の目でギロリと睨んだ。そのあまりの迫力に、ゲオルクは縮み上がった。
「ぬかせ!それはウォルフ様が、絶対にお許しにならん」
「な…なぜですか?」
「あの娘は、ウォルフ様にとっても駒だからだ。むろんランカスターもな。————まだわからないか?“ぺろぺろキャンディ”は、シュテファンがあの兄妹に危害を加えることがないよう見張り、口を添え、働きかけをする役割も命じられていた。とくに千晶を捕らえたシュテファンが、用済みとばかりにランカスターを始末しないとも限らんからな。間違ってもそうならないよう、“ぺろぺろキャンディ”はウォルフ様から、重々念を押されていた。だからこそランカスターは、生きてニューヨークへ帰ることができたのさ。————ゲオルク。これ以上は今、おまえが知る必要はない。黙って見ていろ。面白いことになるぞ。ウォルフ様が何をお考えか………あの方の本当の手腕と凄さが見られるのは、これからだ。ふっふっ……」
グスタフはゴブラン織りのソファーから立ち上がると、不敵な笑いを残して続き間のキッチンへお替わりのコーヒーを淹れに行った。
盟主ウォルフガングの腹心中の腹心であり、最高幹部のグスタフ・シュテーデル。用心深いウォルフガングが、彼にだけは稀に直接連絡してくるという。そんな彼は、何を知っているのだろうか。