そういえば PYRAMID について、きちんと記事にしたことが一度もなかったようで…(^_^;)
PYRAMID 4 (2018)
鳥山雄司、神保彰、和泉宏隆による、フュージョン・ユニット PYRAMID。
慶應義塾高等学校に在籍した3人であることから O!key Boys として 2003年に活動をスタート、2005年のアルバム・デビュー時に PYRAMID と改名している。
しかし、3人とも一国一城の主以上の活動をしているが故に結成から15年目にしてようやく4枚目(通算5枚目)のオリジナル・アルバムが先月、9月に発表された。
CASIOPEA のドラマー神保彰、T-SQUARE のキーボードだった和泉宏隆について細かな説明は不要と思う。
ギタリスト鳥山雄司は…というと、TV番組「世界遺産」のテーマ曲が最も広く知られているだろうか。
慶應義塾大学在籍中にセルフ・プロデュースで 1stソロ・アルバムを発表しているが、僕が鳥山雄司というギタリストに注目したのは 2nd アルバムだった。
SILVER SHOES/鳥山雄司 (1982)
1982年…CASIOPEA は "MINT JAMS" と "4×4" 、THE SQUARE は "脚線美の誘惑" 、そして高中正義が "SAUDADE" をリリースしている。
僕は当時 SAUDADE のツアーを新潟県民会館で観ているが、この時の2ndギタリストが鳥山雄司だったはず。(先発のライヴ・アルバム"OCEAN BREEZE"(1982) にも参加しているので間違いないと思う。)
時代背景もさることながら、アルバム "SLIVER SHOES" は LARSEN=FEITEN BAND とのコラボレーションだったことが僕にとって最大のポイント。プロデュースは鳥山雄司と Neil Larsen の連名になっている。
その LARSEN=FEITEN BAND は、バンドの原点だった "FULL MOON" の名前を冠した 2nd をリリースしたのが1982年なわけで…
正直、"SILVER SHOES" は CASIOPEA や THE SQUARE に比べれば「地味」な作品であったし「通好み」であったかも知れない。
でも、そんな「地味」な「裏方」の活動が、その後の鳥山雄司の本領になっていったと言っていいのかも知れない。
作曲や編曲の世界では「売れっ子」であることのひとつの証明として、90年代後半以後も松田聖子ファンであり続けている方々にとっては、鳥山雄司の名前に必ず見覚えがあろうかと…。
♪
前置きが長くなったが、PYRAMID のサウンドの要を握っているのは鳥山雄司なのだと思う。
PYRAMID の 1st のライナーにこんなコメントがある。
「高校生の頃に難しくて出来なかった曲を今やったら楽しいだろうなぁ」
PYRAMID のサウンドを一言で表現するなら「原点回帰とアップデイトの両立」…ってことになるだろうか。
3人がメロディメイカーであるから、オリジナル楽曲がバラエティに富んでいるのは当然しとしても、必ずカヴァー曲が収録されているのが PYRAMID の「芸風」と言っていい。
ここでディスコグラフィーと共に、カヴァー曲をリスト・アップしていこう。
PYRAMID (2005)
SUN GODDESS (M. White/J. Lind)
AFFIRMATION (J. Felliciano)
FEEL LIKE MAKIN' LOVE (G. McDaniels/E. McDaniels)
TELEPATH - 以心伝心 (2006)
HAPPY YEAR AFTER (J. Fordham)
FOUR (M. Davis)
WESTCHESTER LADY (B. James)
STREET LIFE (J. Sample/W. Jennings)
RISE (R. Alpert/A. Armer/R. Badazz)
PYRAMID 3 (2011)
RHAPSODY IN BLUE (G. Gershwin)
FLY OVER THE HORIZON (J. R. Beltrami/J. A. Gomes)
TICKET TO RIDE (J. Lennon/P. McCarteny)
HANG UP YOUR HANG UP (H. Hancock/M. M. Ragin/P. Jackson)
THE BEST (2015)
CAPTAIN CARIBE (D. Grusin) - Bonus Track
PYRAMID 4 (2018)
I'LL BE GOOD TO YOU (L. E. Johnson/S. A. Sam/G. Jhonson)
CAPTAIN CARIBE (D. Grusin)
RUNNIN' (M. White/L. Dann/E. D. Barrio)
ちなみに、"CAPTAIN CARIBE" が2度出てくるが、これは異なるアレンジによる別テイク。
"THE BEST" 収録のヴァージョンは特にイントロが Lee Ritenour の "GENTLE THOUGHTS" (1977) 収録のヴァージョンに近いアレンジ、最新作収録のヴァージョンはこれとはガラっと違うアレンジになっている。
また、"FLY OVER THE HORIZON" は、 AZYMUTH のオリジナル・テイクに近いアレンジだ。ま、ギタリストがいるのだから当然か(笑)。
♪
レギュラー・ベーシストが不在(ライヴなどでは鳥越啓介が参加)のユニットであり、鳥山雄司のプログラミングなどでベースや他サウンドを補完しているスタイルなので、僕や僕より上の世代には「打ち込み」な感触を持つかもしれない。
でも、それが「原点回帰とアップデイト」を両立するサウンドを構築しているようにも思える。
懐かしくもモダンなサウンド…新しいけど懐かしい。
それは「決して古くならない」…そして「決して古くさせない」。
そんな力…それは「ピラミッド・パワー」(笑)なのかも知れないが、このユニットにはそれが備わっているのかも。
3人がメロディメイカーとしても魅力的ではあるが、これまではそれぞれの書いた曲を持ち寄っていた(ソングライト・クレジットが単独)。でも、前作 "3" から「共作曲」が出てきている。
これなら、活動にブランクがあってもこのユニットがずっと続いて行くことを期待できそうだ。
なにより、現在の T-SQUARE にゲスト参加する際にはグランドピアノしか弾かない和泉宏隆のエレピが聴けることに、なんか凄く得した気分になるのは…
…僕ぐらいかな(笑)