法令解釈⑥(類推解釈について) | 司法書士 荒谷直樹のブログ

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(※法令解釈は、法規的解釈と学理的解釈に大別される。学理的解釈には、文理解釈、論理解釈、目的論的解釈がある。ここでは論理解釈について書く。)

 

 法令解釈にあたっては、まず、文言や用語に即して解釈する文理解釈が基本である。しかし、法令は、すべてのケースに備えて網羅的に規定できているわけではない。そこで、論理解釈が必要になる。

 

 ここでは、論理解釈のひとつ類推解釈について書く。類推解釈とは、直接の規定がない事項について、それと同類の事項について定めた法規範を類推して解釈する方法をいう。これは、本来「準用する」という規定のあるべきところに、そういう明文の規定がないため、解釈によって、法規範の欠缺を補充する効果を導き出す機能を有する解釈方法である。例えば、次の2つの条文。

 

 

民法416条(損害賠償の範囲)

① 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

 

 これは債務不履行による損害賠償の範囲について、債務不履行によって「通常生ずべき損害」と定めている。一方、不法行為に関する民法709条は次のように規定されている。

 

民法709条(不法行為)

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 不法行為の民法709条の方には損害賠償の範囲については何らの定めも置かれていない。しかし、両者は実質的には同質の事柄であることから、学説上は、不法行為による損害賠償についても、民法416条1項の規定が類推適用され、判例も同様の判断を示している。(昭和48年6月7日民集27巻6号681頁)

 

 類推解釈と拡張解釈は、ともに立法後新たに生じた利益を保護するため、民事法ではよく利用される解釈方法である。拡張解釈は、規定の意味を広げて解するのに対して、類推解釈は、規定を類似の事柄に当てはめて解する点で異なる。