「車検証がない」友人の手に戻った車には、あるべきところに
見当たらないと連絡があり、大体の状況を把握した。友人も奥さんも忙しい。
ヒマがあるのはオレだけだ。…というかこれは、明らかにオレのミスだ。
自動車保険の競合に、車台番号などが必要で、マックのタダ券欲しさに
車検証を家に持ち帰り『コピー』のみが残されていた。
そして引越しのドサクサである。こいつはマ・ズ・イ。
夜が明けたら陸運局に行かなくては……そう思ってるうちに
目は完全に冴えてしまっていた。原因は多分『ビーチスターズ最新の6巻』が
手に入ったからだ。封印を引きちぎり、音速のエースとして覚醒した
ことみが、穏やかだった物腰から『好戦的なクイックスパイクの悪魔』へと
豹変するシーンは、血沸き肉踊る名シーンだ。
瞬く間に5点を奪い、相手の倉地を挑発する。
『ゾクゾクするねぇ!倉地先輩!!』「なめんなぁ!」
すっかり興奮したオレは、何度もそのシーンを読み返し…とうとう
睡眠薬は効かなかったようだ。
さて、駅から陸運局の街へと電車を乗り継ぎ、
(気絶していたのは言うまでもない)車検証の再発行を行った。
うん、まっさらでキレイだ。
その足で、友人の工場(ファクトリー)に向かい、
新しく発行された車検証が収められた。
しかし、今日はコレだけではない。すぐに家に戻って
ローズから借りた飲み代を、彼女に渡してやらなくちゃなんない。
奥さんに駅まで乗せてもらい、家路を急いだ。
早くたどり着かないと、ローズが友達から借りた金を返せなくなってしまう。
オレのせいで、ローズに迷惑をかけるわけにはいかない。
願いが通じたか……シャワーを浴びて、汗臭くてみっともない姿で
ローズに逢うことはなかったのが幸いだった。
パンクしたミニサイクルを押し、待ち合わせ場所にゆっくりと歩いてゆく。
5分ほど待ってローズが、マウンテンバイクでやってきた。
気高い微笑みとともに……。
早く、ドライブデートに行きたい。あと8万があれば…夢は叶う。
さてと、今度はさっちゃんのところにお届けものだ。
帰り道、農家の人が物置でタマネギをでかい網に袋詰めしていた。
奥の方にも、ギッシリとタマネギが吊るしてある。
別れた嫁が、この光景をみたら卒倒を起こすだろう。
『この大袋でいくらですか?』と聞くと¥800という。
青果市場に持っていけば、値段こそ跳ね上がるが農家の人には
儲けは入らない。ちょうどカレーの具がなかった。
一ヶ月、タマネギを喰い尽くしてみっか。
オレは一袋下さいといい、10キロ近いタマネギを抱えあげた。
¥1000払ったので、釣りはいらん。ジュース代にでもしてくれと
オレは言った。
すると農家のジイサンが、やや小ぶりのタマネギを隣の納屋から
集めてくれると、オレにくれた。ありがたや・ありがたや…
そして、家に帰ってみると意外にも量が多い。よし、さっちゃんに
少しおすそわけしよう。ドアをノックして『ばたらだよ!』と彼女を呼ぶ。
不思議そうに出てきたのがびっくりしている。タマネギの量にだ。
袋持っておいでと、彼女に言うと片っ端から詰め込んだ。
さっちゃんも、心付けに梨とそうめんをオレにくれた。
特に、果物食べてないオレに『梨』はありがたいことこの上ない。
そしてこれから、コーキと吉野家に行ってくる。
いろんなことが今日はあった。…いいことばっかだけどさ♪