実業高校のとあるクラスは、見るからに前途多難だった。
女子のやかましい奴らが5人も固まっていたのだ。
男子もまるっきりやる気なく、しゃべってるのが
約2名…。
中でもやかましい女生徒は、名前を
「ひばり」と言った。
まさしくピーチク・パーチクとやかましいこと
この上ない。
オレは、名前を呼び捨てにされるのは、まあ…いっかと
思っていたが「お前」だけは許さなかった。
ひばりが「お前」と言うと、「お前って誰だ!」とオレが怒る
すると元気よくひばりはオレのことを「たいぞー!」と
呼ぶのだ。そしてあとでわかったのだが…
ネプチューンの原田泰三ではなく……
国会のお騒がせ議員
「杉村大蔵」と知ったときは力が抜けた。
聞けば顔が似てるかららしい
勘弁してくれよ…
授業中・放課後、何べん「ちょっと、たいぞー!」と
呼ばれたか覚えがない。(クソ…!)と、思いつつも
「何だよ!」と応える。
この、やかましい連中をどうしたら
授業に参加させることができるのか…数日考え、実行した。
それは、実にカンタンなことだった。
授業の最中、しゃべってやかましかったら、
質問でも、教科書読むにしても
カンタンなことでいい、当てて答えさせればいいのだ。
もしくは、教材の前フリでもいい。例えば
『坊ちゃん』が教材なら…しゃべっとるヤツに
「おい、こないだまで1000円札のイラストになっとったの誰だ?」
「わからん!」「(財布から1000円を出し)ほら、見てみろ。
ヒントは春の次だ。」「…夏目漱石」
「わかるじゃねぇか。テストに出すから、名前書けるようにしとけよ。」
こんな具合だ。
ひばりの行動力には、舌を巻いたことがある。
普段、興味がないことは乗ってこないのに
漢文などは、レ点・一二点をつける問題を黒板に書いたら
「たいぞー!あたしやる!」「?!」
「パズルと一緒じゃん、まかせて!!」
と前に出て教壇に立つ。
オレは、狼狽しつつも「良く見ておけよ、答えあわせだ!」
そういって見守った。
驚いたことに『全問正解』である。
オレが、学校を去る頃には、とりあえず授業は
形になっていた。騒がしいからと言って
怒ればいいというものでもない。
上手く、組み合わせ
授業に参加させてやればいいのだ。
この間、街でひばりに会い、ジュースをおごると
「ありがとー。たいぞー!じゃあねぇ♪」と
ホームの階段を駆け下りていった。
その後も…連中は元気でやってると
風の便りを受け取っている。いいことだ。