食欲はなかったけれど、 体温低下が気がかりで
栄養ドリンクや、inゼリーなら
口に出来るかもしれないと思ったのと
一旦、外に出て冷たい風にあたりたかった私は
近所のコンビニに行くことにした。


ついでなので
旦那にも一声かけた。


これから、ちょっとコンビニに行きますが
アナタもレトルトお粥とか栄養ドリンクとか
いるものあれば買ってきます。ついでなので


あっ、オレがいってきます



外に出たいしアナタは
風邪で熱もあるみたいなので、いいです。
何か必要ですか?



すみません、ありがとうございます。
じゃ、食欲はないですが、明日休みなので一応
栄養ドリンクと野菜ジュースお願いします。
お金渡します。



「 わかりました。

それから、アナタのスマホですが
私が今後どう決断するかわからないので
番号変えたりせず
当面そのまま使ってもらって構いません。


ただ、〇〇〇〇さん(旦那の不倫相手)の
LINEはブロックだけ解除して 
私の許可なく勝手に友達リストから削除したり
今残ってるトーク履歴を削除したりは
絶対にしないで下さい 



はい、言われた通りにします。
もし何か連絡きたりしたら逐一報告します。
それに、スマホも、いつでも触って
チェックしてもらって構いません。


アナタが使ってるスマホを
チェックするために
私が操作して構わないと言うのですか?


はい、勿論です


わかりました。覚えておきます。じゃ



玄関のドアを閉めてすぐボイスレコーダーは停止した。


裁判で、もし争う事になっても
不安しかないその時の私にとって
唯一の安心材料だった。




コンビニに行く途中
クリスマスツリークリスマス仕様クリスマスベル
電飾されたお家を見てると
まるで、自分だけが、
どこか別な世界に取り残されてしまったような
感覚がした。


いつも通るその道の景色は
今までと何も変わってないのに
私の気持ちと状況はすっかり変わってしまった事、

どんなに私が努力しても
以前と同じ気持ちには戻れない事、

平凡な毎日でも
それなりに満足していたのに
それすらももう、叶わない事、


結婚してからは
いつでもどこでも仲良し夫婦ラブラブってワケでもなく
喧嘩もしたし、叩けばそれなりにホコリも出る私達夫婦
それでも私はとてもとても大事に思っていたのに
それは、私だけの思いだった事、

他人の手によって
ぶっ壊された私の沢山のたいせつなものは
姿カタチも見えなくなってしまった事、

それら全てが悲しかった。



よその
ご家庭やご家族を羨ましいと思う事は
子供の頃には良くあった私だけど
親と離れて暮らし始めてからは
全く思わなくなっていたのに……


クリスマスが待ち遠しく
今も楽しく、幸せな時間をご家族で
過ごされていそうな電飾のお家の中の方たちが
すごく穏やかで平和そうに見えて
羨ましいなと思ってしまった。


平和とは無縁な世界にいる私は
こんな気持ちから 
いつ抜け出せるのだろうか……


そんな事を思いながら
コンビニに向かっていると数メートル前を
手を繋いだ若い男の子と女の子が
お互いの顔を見つめて
楽しそうに話しながら
コンビニに入って行くのが見えた。


私達もあんな
仲睦まじい時代があったのにな……



多分、私達は結婚前の方が
いつでもどこでも仲良しだった。


外出先でも、よく何時間も話してた。

(同棲もしてるのに、ホント
よくそんなに話すことがあるな)って

自他ともに認める位
話しがつきなかった。


今より時間があったのは間違いないけれど
旅行もドライブも結婚前の方が
明らかに多い。


夏はキレイな海にあちこち行ったし
冬は近場の人工スキー場から、
遠くのパウダースノーのスキー場まで
全国各地、遊びに行った。

ドライブも温泉も沢山行った。


そんな時代もあったのに
いつから、すれ違ってしまったんだろう


どこの時代の私がいけなかったんだろう


どうすれは、旦那は不倫なんか
せずにすんだんだろう


家に居てもツラいけれど
外に出て少し歩くだけで
こんなにも辛い気持ちが次々に襲ってくるなら
どこに行けばいいのだろう……


いつまで続くかわからないのに……


八方塞がりの景色だけが
広がっていた。