「そっか、Rui（旦那）の最終的な考えと、
どうしてそういう考えに
至ったのか経緯もよくわかったよ。
ただ、あの話し合いの時に
私がされたらイヤなコトを伝えたから
ある程度真意をわかってくれてると
その時は思ったんだけど
わからなくて当然なんだよね。
だってそれは、私に非があって間違ってたから。
そのことに、さっき気付いて自分でもショックだった。」
「真意については
Masakiからセックスしてもいいけど……って
言われた時にはネガティブなイメージは
持ってなかったはずなのに
次第に自分の中でネガティブな考えに変わっていったと思う。
でも、どうしてそれがMasakiが間違ってることになるの？」
「結論から先に言うと、私が自分の気持ちの奥深くまで探ろうとしなかったから、わかってもらえるような説明ができずに
言葉足らずであったこと。
そのくせ、皆まで言わなくてもRuiだからわかってくれてると
自分の考えに同化させたことが私の間違ってる所。
そこは、反省することだと思うから、ごめんね。」
旦那は困ったような泣きだしそうな
何とも言えない変な顔で（……失礼m(__)m）
黙って頷いていて、私の顔をずっと見ながら
次の言葉を待っているようだった。
「今も充分な説明ができるか自信ないけど、とにかく、
自分が間違ってることに気付いたから、その事は、Ruiが風俗に行ったとかそういう事とは別として、伝えておきたかった。
言いたいこと伝わってる？」
「多分わかってる。今までMasakiの気持ちを
推し量れてなかった俺が言うのも何だけど……
一旦、俺がした事は脇において
別件として、話しを聞いて考えてってことだよね？」
「うん、そう。とりあえず、話してみようと思うけど
正直に言うと、セックスしてもいいけど……の、
けど何なの？って部分は、
以前と同じような精神的に満足感が得られないような
セックスはしたくないから、そこだけ注意してほしい
って伝えたかった。
具体的なことを1つ例にあげたのはあの話し合いの時が
初めてだけど、実際には1つじゃなくて、
もっと昔まで遡る必要があるの。
今はそこはあえて深く掘り下げないけど、
簡単に言えば……Ruiだけが満足する一方的なセックスと
感じることがあった。
いつもいつもって訳じゃないけど時々感じて
多分そういうことの積み重ねがセックスに対して
私が身構えたり億劫になっていたことに繋がったと思う。
かといって、Ruiと絶対セックスをしたくないとか
キライとかではなくて
私にとって、結婚したらセックスする相手は生涯
Ruiだけってのは当たり前で……
だからこそ、この先
精神的に満足できないセックスをするのはイヤだった。
行為そのものに対して、
愛情確認の部分が比重を占めてて、
快感を追求する事が重要ではなかった。
セックス柄みの話しって、デリケートな部分だから
夫婦でも恋人同士でもしづらいとか、相手に言いづらいとかもあるかもしれないけど、自分の気持ちがはっきり見えてて
言いづらいとかではなく、私の場合、
自分の気持ちの奥深い所が見えてなかったから、あの時
セックスしてもいいけど……の
続きの言葉が全部出てこなかったし、説明ができなかった。
それは、自分に対して
なんで、精神的に満足感が得られないの？
具体的に何が嫌だったの？
その時どんな気持ちになるから嫌なの？
どうすればそんな気持ちにならないの？
って、その都度、自分に向き合わなかったから
自分でもわかっていなかった。
それなのに、Ruiに対しては
長く一緒にいるし、私のことよくわかってくれてるから
皆まで言わなくても
察してくれる、わかってるはずって
自分の考えや気持ちに同化させてたんだよね。
結果、
言葉足らずで誤解を生んでしまったんだよ。」
「真意が、そういう言葉に繋がるとは、
想像もしてなかったと思う。言われた時もその後も。
それに、Masakiが話してくれたことは
俺にも通ずるものがあるなって思った。
あと、Masakiが俺からされたらイヤな事を
前1つ教えてくれた時もそうなんだけど、
言われるまで自分では気づかなくて、
違う視点で考えたら、確かにそうかもって
初めて気がついた位だから、他にもあるって聞いても
正直わかってないんだよね。
自分さえ満足できればいいって
そんなつもりは、いつもないんだけど
実際、そんな気分にさせてるわけだから
色々とやらかしてると思うし、ごめんね。」
「うん……
あとね、私たち夫婦が2度目のセックスレスになった真髄はね
自分が傷付く事が怖いって感情ばかりが先走って
お互いに、お互いの態度や発した言葉の意味や気持ちを
相手の身になって思いやりを持って
その時々で、それ以上
探ろうとしなかったことにあると思う。
それなのに、自分のものさしだけで、色々なことを
決めつけていたと思う。」
「確かに ……その通りだったね。ほんとごめん。
Masakiから言われるまで、何一つ自分では
気づかなかくて、情けない。
でも、気づかないまま過ごすより、気づけたことは
俺にとってかなり意味があった。
今までモヤモヤしてたことも、はっきりして
嬉しい気持ちもあるんだよね。なんか変だと思うだろうけど。
それで、Masakiの話と混同するつもりはないけど、
俺の今の考えとして聞いて欲しい。
風俗に行ったことは正当化するつもりないし、
これまでの考えや行動すべてにおいて
俺が甘かったこと反省してる。
Masakiは俺の事、もう信じられないだろうけど、
今回の話しで自分の中では、はっきりと
一本筋が通ったというか、決意というか
確かなものができたんだよね。
すぐには信じてもらえないだろうし、疑ったり
許せないだろうと思うけど、これからの俺を
見て欲しいって気持ちがすごくある。
もう、今後はMasaki以外の人と、
体の関係をもったりしないってのは、当然守る。約束する。
それに、折を見てMasakiが億劫になったり身構えたり
ツライ思いをした時の事、深く掘り下げて
なんでも話して欲しいって思う。
俺に気をつかう必要ないから。
俺にとってMasakiは今も昔も特別な存在だし
一緒にいて落ち着くし安心できる。
どんな時もそこは揺るいだ事が一切ないんだよね。
ここまで一緒にいてそういう気持ちにさせてくれる人は
後にも先にもMasaki以外いないって断言できる。
今の俺があるのは、Masakiのおかげって凄く思う。
でも、俺も普段は口で伝えたり、愛情表現したり苦手だし
言わなくてもわかってくれてると、わかって欲しいと
思ってたけど、そういう所も少しずつ
変えていこうと思う。
最初は、ぎこちなかったり
思った通りできなかったりするかも
しれないけど、必要だと思うから。
だから、これからも俺の横にいて
見ていて欲しいって強く思う」
カーテン越しにうっすら明かりが差してきたので
時計を見たら6:53分だった。
日付変わる少し前から話しをしてたから
もう、約8時間近く話してた事になる。
旦那はあと2時間ほどで仕事に行く時間なのに
時計も気にせず話しをしていたんだな～って
漠然とそんなことを考えていると
旦那から、
「それで、俺の考えを聞いてどう思うか教えてくれる？」
って言われた。
正直、いろんな感情が忙しくうずまいていて
言葉がすぐに出てこない。
でも、変わりたいってこんな風にまっすぐ話す
旦那は初めてみたし、それを信じたいって気持ちは
心のどこかにあったと思う。
その反面、心に引っかかっているものがあることも
わかっていた。
だから、最後の質問に対して
旦那の答え方、態度、表情から、嘘をついてないと
判断できたら
自分にも非があるし、今回の風俗の事も許して
旦那を信じて、自分も変わって
良い関係を築いていこうって
決心した。
「Ruiが今、話した事は嬉しかったし本音だと思いたい。
私にも非があったし、お互い反省を活かして
これから良い関係を築いていけたらとも思う。
だから、最後に正直に答えてほしい。
私に隠してる事、やましい事、大きな嘘は
他には何もない？ 」
「ないよ。他にはない。」
「本当に？話すなら今しかないよ。
もう今更、何を言われても受け止める覚悟はできてる。
後から、色々出てくるのだけは止めて欲しい。
あるなら、全部、今こそ正直に吐き出して欲しい。」
「本当に何もない。
俺はMasakiが今回の事を許してくれなくても
横にいてくれるだけで、救われるし、幸せ。
これから絶対に変わって、Masakiの笑顔が見られるよう
頑張るから見てて。」
「わかった。もうすぐ仕事だし、少ししか時間ないけど
起こしてあげるから横になった方がいいんじゃない？」
「うん、ありがとう！じゃあ少し寝るね。」
これで、事情聴取から始まった
長時間の話し合いは終わり
ボイスレコーダーを停止して保存した。