第3クール中間報告、まとめ | 精巣腫瘍治療記+α

精巣腫瘍治療記+α

2009年末、21歳で精巣腫瘍に罹患。一度は転移なしとなったものの翌年再発し5月から化学療法。患者であると同時に薬学生でもあるので、患者側と医療側双方の視点でこの病気と向き合っていければと思います。また自分の病気とは関係ない勉強、研究、趣味の話もちらほら。

昨日のエントリはさすがにひどすぎたので、その内容を文章にまとめてみようかなと思います。


今クールは先週水曜日、7/7からでした。
今までと同様、前日6日に中心静脈ラインを確保し、7日にブレオ、エトポシド、シスプラチン。
8~11日はエトポシドとシスプラチン。
吐き気止めとして、カイトリル(内服)、プリンペラン&デカドロン(点滴)に加え、
今回からは初日からイメンドカプセル(一般名アプレピタント)が処方されました。
日本では昨年末に承認されたばかりの新薬で、ネット上の同病の方たちの間でも評判は高く。
ちょっと専門的なことを書くと、イメンドはニューロキニン神経系というものをブロックする薬で、
今までのセロトニンやドーパミンをブロックする吐き気止めとは根本的に作用機構が異なります。
そんなこんなで期待も高いイメンドカプセル。
ちなみにすごいゴツいシートに入っています。なんか厳重。やっぱり新薬だからかな?
初日は125mgのもの、2日目以降は80mgのものと、日によって飲むカプセルが異なります。
で、効果のほどですが、前回は投与が遅れた(3日目から投与)こともあってか
あまり効果は実感できなかったんですが、今回は結構効果があった気がしました。
少なくとも吐き気に関しては前回より楽だったと思う。
まあ、辛かったことに変わりはないんですけどね。
というか、吐き気止めの効果にしても、そもそもの抗がん剤由来の吐き気にしても、
個人差とか心身の調子による差はでかいなと実感。
あと、イメンドは結構な頻度でしゃっくりの副作用が出るらしく、自分もそれに見舞われました。
そんなに大したことはなかったけど。

昨日も書いたとおり、今までの3回の治療の中で今回が一番辛かったです。
…でも、今思い返してみて、「なにが辛かったんだろう?」と思い返すと、なんかよく分からない。
今回に限ったことではないけど、吐き気で辛かった時のことってよく思い出せないんです。
真っ只中にいる時は長くて長くて先が見えない気がするのに、
後から思い返すと記憶が圧縮された感じがして時間の実感があまりない。

いま振り返ってみて思うのは、今回辛かったのは精神的なものが大きかったかな、と。
第1クールより第2クールの方がきつかったんだから、今クールはもっときつくなると思ってもよかったのに、
なぜか今回は第2クールと同じように進んでいくんだろう、みたいな思いがあった。
先の見えない苦しみも辛いけど、終わりだと信じて耐えてきたものがそこで終わらなかった時も辛いよね。
5日間の投薬期間はつらいのは当たり前だし、覚悟の上だったし、吐き気はむしろ楽な方だったけど、
それが終わった後、6日目にはある程度体調が回復してくだろうって思っていたのに
それほど上向きにならなかった時が一番しんどかった。
吐き気というより、胃のむかつき、食欲不振。そしていらいら。
部屋にじっとしているのが嫌で、院内散歩して、でも体力落ちているからすぐ疲れて病室帰って寝て。
寝ると体力も気力も幾分回復するけれど、起きてるとやっぱりだめで。
そんなこんなで、いらつきの矛先は点滴に向きました。
自分の場合、本来は中心静脈ラインはday8のブレオマイシン投与まで確保しておいて、
それまではシスプラチンの腎障害回避などのために一定量の輸液を流すのですが、
この時は点滴につながれてることそのものが自由を束縛されている感じがして苦痛で、
副主治医もたぶん大丈夫とおっしゃったので、ワガママを言ってday6で点滴抜いてもらいました。
(その後は輸液の無くなったのを補うために飲水励行です。1日1.5Lくらい)
それでスッキリとまでは言わないけど、だいぶ楽になったかな。

このことで思ったのは、医療行為を受けるって、それだけで精神的に苦痛になり得るってこと。
何らかの病気と診断される。薬を飲む。点滴につながれている。
ただそれだけで、苦痛って生まれちゃう。
例えば今回、「吐き気がつらいようだったら追加で吐き気止めの点滴入れますよ」
と言われたけど結局1回もお願いしなかった。
点滴で薬を入れているということそのもので、精神的にやられて、
かえって辛くなるような気がしたから。

治療に際して起こりうる副作用は一通り説明されるけれど、
今回はいわゆるその副作用ではないものに苦しめられたクールでした。
一言でいえば治療のストレス、ということになるのかな。
点滴につながれてることによるイライラ。
吐き気というより、胃酸過多から来ると思われる胃や食道のむかつき。
点滴に24時間つながれているので夜もトイレに起きる必要があり、そのための眠りの質の低下。
病院という狭い空間内に閉じ込められてる閉塞感。
こういう、一見大したことのないようなものの蓄積が一番辛かった。
大学で副作用や有害事象の話を習った時、治療関連のストレスについてかなり甘く考えていたけど、
全然甘くない、薬の副作用そのものよりストレスの方が辛いなんてこともあるんだなと思った。

現時点で一番辛い副作用は、味覚障害かもしれない。
最初は病院食の味落ちたなーと思ったんだけど、たぶんそうじゃなくて、自分の舌の問題。
加えて胃腸の調子も悪いから、食べることがちょっと辛い。
食欲不振っていうより、食欲はあるけどいざ食べると食べられない。
今まで吐き気で食べられなかった分、なおさらおいしいものを食べたい欲求は強いんだけど、
おいしそうなものを買って食べてもおいしくない。食べられない。
あとは手のしびれも地味に残っている感じかな。


今日は外泊!
売っているものがおいしくないなら自分で作ればいいじゃないか、の気概です。