買い集めたレコードの中には、殆ど聴かなかったものが
いくらかある。今日聴いてみたドヴォルザークのヴァイオリン
協奏曲もそのひとつである。
一般的にも、有名なロ短調のチェロ協奏曲ほど有名でないと
言ってよいだろうか。
しかし、レコードの解説を見ると、「国民楽派の人びとによる
同種楽曲中、シベリウスのそれとならぶ最高の傑作とされて
いる」と書かれている。
聴いてみて、勇壮というのか、荒々しいほど元気な出だしは
確かに聞き覚えはあるものの、ヴァイオリン協奏曲にはやや
珍しい雰囲気に思える。
そして、すぐに独奏ヴァイオリンがその旋律を模倣して出て
くるかと思えば、すぐに「瞑想的な」(解説)旋律が続くあたり、
かなり変化に富んだ曲つくりの感がする。
解説によるとソナタ形式とあるが、直ぐには分かり辛い。
冒頭の旋律が最も特徴的で印象深いので、展開部と再現部の
開始くらいは想像つくのだが。
まあ、そんな形式を云々するよりは、もっと自由に伸び伸びと
楽想を繰り広げ、しかもヴァイオリンの華やかさをも発揮させて
いるドヴォルザークの才能と意欲に魅力があるように思う。
さらに、第1楽章の再現部の後に、第2の展開部と新たな主題も
現れたりして、しかも切れ目なく第2楽章に続くので、うっかり
第2楽章の始まりを聞き漏らしそうである。
でも気付けば優美なヴァイオリンの旋律が始まっていて、それが
第2楽章の主題である。
しかし、そうのんびりと聞き惚れている余裕もないほどに、複雑に
変化していく。なかなか凝った創り方のようである。
複雑な割には、あまり長くなく、2つの楽章でレコード第1面の終り
である。
裏返して、第3楽章が始まる。おお、なんという楽しさ! まるで
違う曲が始まったかのような錯覚に陥る。この明るい主題こそ
私にはよく聴き馴れた親しみがある。
しかし、やはり次から次へと、息をもつかせぬ早業の如く、新たな
旋律が繰り出されてくる。
ドヴォルザーク38歳の作品、ロ短調のチェロより16年前だそうだ。
つまりドヴォルザークの意欲、作曲への情熱が込められていて、
それが間断なく噴出しているように感じられるのでした。
ちなみに、これは有名なヴァイオリニスト、ヨアヒムに献呈された。
演奏:スーク/ノイマン指揮チェコ・フィルハーモニー(LP盤)