「架空の愛へのトロピスム」という妙な題の曲、イベールの
「寄港地」の続きに入っているCDで、つい後回しになって
いたのですが、それを今日初めて聴きました。
先ず、題名が不可解なので解説を読みましたが、トロピスム
が向日性の意味ということと、この曲は交響詩なのか、オーケ
ストラ用の協奏曲なのか、そういうジャンルが決め難い曲、と
いうことくらいで、あとはよく分からなかったですね。
この解説が翻訳文なのです。 少し読みづらい。
翻訳では今ひとつ意味のしっくりしない文を原文で読むと
スカーッと理解できた時の不思議な気持ち、一種の
快感(?)。
ハハ、大学時代の経験を思い出しました。
逆に、今日は一寸分かりづらい訳文で気持ちがすっきりしない。
そして、曲もすんなりとは理解し難い。9つの楽章なのですが、
切れ目が殆どないので、それもはっきりしない。
けれども、オーケストラの音響的にはなかなか面白いです。
ただ、やはり内容が・・・、その題名がそうであるように、とても
抽象的なんですね。
そりゃ~、音楽はそもそも抽象的なのですが、聴いていてどんな
イメージと言えばいいのかな・・・・?
団塊の世代が退職の年齢と言われていますが、その人達の第
2の人生への夢はどうなのでしょう。
自分が退職した時を思い出す。嬉しかった。いろいろしたい事が
浮かんだ。具体性と明確さは欠いても、春霞のようなおぼろげな
希望とあこがれ・・・・。
この曲の始めの方は、そうした環境に置かれた初老の人の心境
が思われます。
やがて、魅惑的な誘惑の手が伸びてきて、彼は不安にもなる。
夢の実現にあせりもある。
その彼が、ついに決断を下す時が来た。曲の最初から9分くらいの
ところ、多分第4楽章だろう。彼は勇気をもって邁進する。
無謀なほどの突進、ないしは闘争も経て、一応夢の実現を勝ち取る
ことが出来た。
しかし、そんな彼に待っていたのは、達成感の後の脱力感であった。
無理をした疲労感もあった。
それでも、やがては彼の成功を実感としてかみしめる境地に到達
できる。第7、ないしは第8楽章、曲の最初から19分半くらいの部分
です。ここは全曲中、最も充実感を味わえる音楽でありました。
最後第9楽章は、最も華やかなオーケストレーションに彩られて、
大音響のクライマックスで曲が結ばれます。
イベール最後の交響的作品だそうです。
演奏:ジャン・マルティノン/フランス国立放送局管弦