- ジンマン(デイヴィッド), チューリヒ・トーンハレ管弦楽団, ベートーヴェン
- ベートーヴェン : 交響曲第3番 「英雄」&第4番
一昨年の末にジンマン指揮の「第九」を取り上げたが、それと同じ
ベートーヴェン交響曲全集からの一枚で、第3番「英雄」を聴く。
先日久しぶりに聴いた懐かしのワルターに対して、ジンマンは?・・・
対照的な面白さを確かめてみたい気持ちが起こったので。
ダン、ダン。 この冒頭2発が間髪を入れずに続く、と言えば嘘に
なりますが、それほどに速いのです(ワルターの倍くらいか)。
音は透明感があってとても良いので、テンポの速さと相俟って、
まあ快適、快適。 大層ぶった感じはなくて、ただ強弱の変化が
小気味よい。
提示部は繰り返されたが、だらけた感じはしないです。
展開部に入ってもひたすらに突き進む。
何故、そんなに急ぐのか?・・・なんて思うくらい。 しかし実は
これがベートーヴェン指定の速度なんですね。
スコアで調べてみました。 第一楽章の小節数は691小節で、
それに提示部の繰り返しを加えると838小節。それで計算すると
殆ど14分になる。
で、CDの演奏時間はというと・・・15:34と書いてある。
つまり計算上のタイムと ほぼ一致するんですよ。
だから、速過ぎると思えるテンポが 実はベートーヴェンの考えた
速度だった訳ですが、私の経験からすると、心で思っている速度と
実際に音に出して演奏する速度は一致しない。 音に出すと、心の
中で思っているよりは遅くなってしまいがちなんです。これは私の
ような凡人の経験の話で、天才の思いとは異なるでしょうけれど・・。
第2楽章では、主題をオーボエが奏する旋律で、普通は聞けない
装飾音が施されている。
中間部では、異様なほどのアクセントと烈しさが印象的。
第3楽章 トリオでは心持ちテンポが遅くなるように感じるのが普通
でないですかね。 だが、ジンマンはそんなことおかまいなし。全く
同じ速さですんなりと・・・。
第4楽章 冒頭フォルテッシモの弦の長さの短いこと!
そうか、テンポが速いんだから 一拍も短く聞こえて当然ですわな。
しかも続く16分音符へ、一瞬休止があるように奏されているから
なおさらのこと。
もうここまで聴いてくれば、テンポの速さもあまり気になりません。
まあ、爽快に進んでいきますわ。
オーボエの装飾音が ところどころで聞こえました。
ワルターでは、オーケストラの響きにやや混沌とした感なきにしもあら
ずでしたが、ジンマンはあくまで澄んだ響きで輝いています。
最後の結尾では速度こそ速いままの突進ですが、迫力が加わって、
最後の一音は金管の響きが全奏の上に浮かんで、なんともいい余韻
を残したのです。
どの楽章も速くて、低音があまり目立たない(ティンパニ以外)ことも
あって、軽い、軽快、という「英雄」です。 勿論Barenriter版での演奏。
時には、こんなのもいいかも知れません。
なお、オーケストラはチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団