- コロンビア交響楽団, ベートーヴェン, ワルター(ブルーノ)
- ベートーヴェン:交響曲第3番
ベートーヴェンの交響曲で一番好きなのは?・・・と聞かれたら、私は
第3番「英雄」ですね。 LPでも幾種類か聴いていましたが、CDに
なってセル/クリーヴランドが非常に良かった。感動ものでしたね。
次にフリッチャイ/ベルリン放送響のライヴ録音。これはフルトヴェン
グラーほどではないが、かなりテンポが動き、表情つけの細工がある。
で、今日は最初に買ったレコード・・・もう35年近く前になろうか・・・を
聴きたくなって・・・。ワルター/コロンビア交響楽団のLP盤を取り出す。
この盤、あの頃はよ~く聴きましたよ。
ベートーヴェンの交響曲では これが 確か最初のLPだった。
ということもあって、「英雄」が一番好きな交響曲になったのかもね。
ともかく深い愛情のような想いが湧いてくる盤・・大分大袈裟かな・・。
それを久しぶりにかけてみた。
昔、ワルターの演奏を「最もノーブルな英雄」と評されたりした。
確かにそうなのかも知れなかった。ワルターの温厚さが感じられる
のかも知れない。 同時にどことなく懐が大きくて、そして堂々として
雄大な演奏と言えるように思う。
テンポを揺らせたり、小細工を施したりは殆どしていない。
敢えて目立つ点としては、弦の低音が強めであったり、ティンパニの
効果的な鳴らせ方などで、そこに重厚な味わいが感じられる。
それにしても、つくづく思うことだが うまく出来た曲ですね~。
ベートーヴェンがこれまでの交響曲に満足せずに、新しい道を開拓し
ようとした意欲は、第一楽章の展開部の長さや、再現部以降の第2の
展開部とも云われたりした長い結尾部の充実さに表れていて、実に
聴き応えがあるんですね。
その終り近くでワルターの示したトランペットの吹き方。ここが好きな
んです。これ程力に満ちて効果的なのは 他の演奏にないのでは。
第2楽章の葬送行進曲も初めてだし、コントラバスの表現もベートー
ヴェンの優れた創造と評される。 ワルターはここでもティンパニをよく
響かせてすばらしい演奏と思う。
第3楽章は、「壮大な交響曲にしてはやや軽い感」という意味の評は、
確か吉田秀和氏だったか。
一方、これはベートーヴェンの秀逸のスケルツォとの評もある。
いずれにせよ、従来のメヌエットでなく型破りのスケルツォを用いた点
にも ベートヴェンの意欲的創意がある。
創意の点では、続く第4楽章の変奏曲形式。 ここも先述の評論家は、
「非常に巧く出来ているのだが、何かが足りない感」というようなことを
書いておられる。
勿論この交響曲の傑作を認めた上での欲張った感想なのだが・・・・。
まあ、そう言われれば、なんとなくそんな感じがせぬでもない。
オーケストラの楽器の使い方など、演奏者側からするとかなり神経を
使わねばうまく聞こえないような点があるのかも。だからだろうか?
よく指摘されることだが、全奏の中で旋律をホルンに歌わせたところ。
ある評論家は、「あれはベートーヴェンが間違って書いたと思われる」
とレコード・コンサートの解説で言い切っていた。 これはどうかと思う
けれども、そういう いわば楽器の複雑な使われ方があるように思える。
響きの点で、ワルターの第4楽章は、1、2楽章ほどの充実さには及ば
ないかも知れないが、最後から8小節目のヴァイオリンの和音の鳴ら
せ方がすばらしい。
楽譜を見ると同じ音が6個並んでいるのだが、8小節目のそれが実に
効果的な音なのだ!
全楽章、どこもテンポの適切さを改めて感じたことを付け加えておこう。