日本にもある正教会

 

日本にも東方正教会の教会がある。有名な、東京・神田のニコライ堂だ。
近くを通ったことは何度もあるが、正教会と意識して見たことはなかった。信者でなくても拝観させてもらえるというので、先日、伺ってみた。

 

御茶ノ水駅からすぐ。周囲をびっちり建物に囲まれていて、道路からは上の方に独特の玉ねぎ頭の屋根が見える。

 

ニコライ堂


平日の昼に個人の見学者が30人近くいて驚いた。なんでも、NHKの朝ドラ『虎に翼』に出てくるとかなんとか?で、増えてるそう。ほお…、知らなかった。
 

 

内部は撮影禁止。自由に歩き回れるのは入り口の空間だけで、そこから聖堂を見渡すことになる。信者はもちろん奥に入れる。間近で見れるのがごく一部で残念だが、そもそもここは祈る場所なので、入れてもらえるだけありがたい。

そういえば、外国の教会では立ち入り禁止の箇所の方がごく一部のことが多いが、観光客にもクリスチャンが多いからだろうか??

 

 

 19世紀後半にロシアから伝道

 

ニコライ堂は、日本に正教会をはじめて伝えた、ロシアの聖ニコライ師の名前からきている。正式には、日本ハリストス正教会教団「東京復活大聖堂」というらしい。

 

日本の正教会の名称は「日本ハリストス正教会」で、ハリストスはキリストのギリシャ語読み(そもそも「キリスト」は日本語読み)。

 

 

1861年、ロシアから聖ニコライが伝道のために来日し、まず函館に、その後、東京に伝道の本拠地を移す。そして1891年、東京の神田駿河台に「復活大聖堂」が完成。この土地は当時、ロシア国公使館の付属地だったようだ。

基本設計をしたのはロシア人だが、あのジョサイア・コンドル(イギリス人)が実施設計と工事監督をした。

 

当時の写真を見ると、すごーく開けた場所に、唐突にどでかい聖堂が建ってるように見える。

敷地も広く、周辺の建物も平屋が多かったのだろうか。エキゾチックなこの建物は、さぞ注目されたに違いない。

 

1923年、関東大震災で聖堂はほぼ崩壊してしまう。1929年に復興工事が完了し、1990年代に大規模な補修が行われたということだ。

 

 豆知識あれこれ

 

さて、自由に見て回れない分、この日は係の男性が、ずっと解説をしてくれていた。おもしろい話がたくさんあった。後で調べたことも含め、いくつか備忘録として残しておこう。

 

●日本最大のビザンツ建築

 

本堂は「日本最大のビザンチン様式の建造物で、石造りでは最も古い国の重要文化財」。ビザンチン様式とは、コンスタンティノープル(現在のイスタンブール)を首都にもつ東ローマ帝国(ビザンティン帝国)の様式。

特徴的な玉ねぎ型の天井に、がっしりと分厚い石を組んだ、いかにも堅牢そう、かつエキゾチックな見た目だ。さすが正教会。

 

 

●いい香りは乳香
 

大規模な改修から30年しか経ってないわりに、白い壁や柱が煤けている。これは、奉神礼(他の教派で言う、典礼。儀式のこと)で乳香を焚くからだそうだ。

 

ジョージアの教会で、わたしもその煙を浴びた。いい香りだなあ、なにかなあと、ずっと気になっていたのだが、あれは乳香(フランキンセンス)だったのか。後で調べたら、乳香はイエスの神性を表すという。

●独特な十字の形「八端十字架」

 

一般的な十字架は、二本の棒を十字に組み、縦の方が長い形。

それに横棒をもう2本加えたのが、「八端十字架」と呼ばれる、スラブ系の正教会で使われる十字架だそうだ(下図参照)。上の短い横棒は、磔の際の罪状が書かれた板、下の斜めの板は、足を磔にするための台、とのこと。

 

 

Wikipediaより

 

たまに見るこの形、なんとも神秘的に感じられていた。下の横棒の傾きは、必ず向かって左が上になるとか。

ちなみに縦横の長さが同じ十字はギリシャ十字というらしい。

 

●パイプオルガンは使わない

 

正教会にはパイプオルガンはない。

正教会の音楽は「聖歌」とよばれ、伝統的な祈りの言葉にメロディをつけたもの。楽器は使わず、アカペラなんだそう。

ジョージアの正教会でも女声による聖歌を聴いた。静かで繊細で、原始的で、とても美しかった。

 

 

●ろうそくは使えない?

 

ろうそくを立てる場所はあったが、消防法で制限されているという話があった。

そういえば…、海外の教会では大量のろうそくが捧げられているが、日本でそうした景色は見た覚えがない(そもそも日本の教会にあまり行かないが)。なんとなくの物足りなさは、ろうそくの揺れる灯りがないからか。


(カトリック教会の、パリのノートルダム大聖堂。2012年の懐かしい写真。いろんなタイプのろうそくの灯りが揺れていた)

 


●日本人画家のイコン

聖堂にはもちろん、いくつものイコンがあった。だいたいがロシアから持ち込まれたものとのこと。
日本人のイコン画家、山下りんさんのイコンも1つ、入り口に置かれていた。本物かレプリカかわからなかったけど。山下りんさんについては、なた別途書きたいと思っている。

 

 

正教会について、調べれば調べるほどおもしろくて、ハマっている。まだまだ正教会についての投稿が続きそうです。