収益プランナー奥村光英の明日のため今できること -5ページ目

AKB48は、なぜビジネス界から愛されるのか? その10

■収益モデルを紐解く。

○収益の分配構造を理解する。

本来、既存事業の収益モデルを把握するためには、お金の流れを追う必要があります。

ただし、AKB48のビジネスは、上場企業のように有価証券報告書などが公開されているわけではありませんので、その他、公開されている範囲の情報から推察していく必要があります。

・ライブドアニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/5393082/

上記のサイトに、売上の分配手法が紹介されていますが、こちらの記事によると、AKB48がグループとして活動し得た売上については、一旦、株式会社AKSに集約され、それぞれのメンバーが所属するプロダクションに分配されます。

そして、各メンバーがソロ活動で得た売上は、株式会社AKSを通さずにそのまま各プロダクションが取得する形になるとのことです。

この情報が正しいと考えるならば、所属するプロダクションの視点で考えると、AKB48としての活動でも収益は獲得できますが、より大きな収益を得るためにソロでの活動を増やしたいはずです。

その状況が確認できないかと調べたところ、それを物語る事象を発見しました。

AKB48からは、2011年1月21日に大島優子を中心とした「Not yet」が結成されるなど、グループの下位組織として多くの派生ユニットが結成されています。

実は、このユニットのメンバー構成に秘密が隠されていたのです。

http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10958518833.html
上記URL「AKB48ユニット調査資料」を参照

各ユニットのメンバー構成を確認し、その所属するプロダクションを整理してみると、見事に所属するプロダクション単位でユニットが作られ、メンバーが構成されていることが分かります。

一部異なっているのが、「渡り廊下走り隊7」の岩佐美咲さんと、「Not yet」の横山由依さんですが、まず、岩佐美咲さんはユニット結成時には、他のメンバーと同様にプロダクション尾木に所属していました。

「Not yet」の横山由依さんは、以下のニュースサイトによると、秋元氏が急遽追加したメンバーであるとしています。

・ライブドアニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/5286979/

そのため、現在はAKSに所属していますが、この状況から推察すると、近い将来太田プロダクションに移籍となるのかもしれません。

いずれにしろ、各プロダクションに所属するメンバーが、プロダクションごとに独自に活動しやすく、活躍できるようにユニットは結成されていることが伺えます。

以上の状況などから、ソロとユニット活動での収益は、各プロダクションに直接入り、AKB48のグループとしての活動は、株式会社AKSから各プロダクションに収益が分配される構造となっているのは確かなようです。

AKB48は、なぜビジネス界から愛されるのか? その9

○「ビジネスモデル販売事業」によってAKB48のビジネスモデルが完成する。

最後に、「ビジネスモデル販売事業」がどの様な役割をになっているかを確認していきます。

・追跡A to Z / アキバアイドルを輸出せよのサイト
http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/file/list/091205.html

前述しましたが、上記サイトによると、秋元氏はAKB48のアイデアやスタイルを、権利として売る、「フォーマット販売」という戦略を採用したとされています。

そして、フォーマットを販売するということは、AKB48を単なる1つのアイドルユニットとして捉え販売するということではなく、活動のノウハウはもちろん、それらを取り巻くビジネスを全てまとめモデル自体を販売すると考えるべきと述べました。


フォーマット販売は、海外向けが中心に語られることが多く、下記サイトでも、次に台湾に進出することが大きく取り上げられていますが、一方、日本における各地域の展開も忘れてはいけません。

・ライブドアニュースより
http://news.livedoor.com/article/detail/5573877/

日本の地域展開を確認してみると、2005年12月のAKB48を皮切りに、2008年7月にSKE48、2009年8月にSDN48、2010年10月にNMB48、そして、次は、HKT48が誕生しようとしています。

http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10949791403.html
上記URLの(地域展開の図)を参照

各地域ごとにユニットを展開し、全国的な広がりを見せているのですが、ここで注目したいのが、その母体となる運営会社です。

AKB48、SDN48は、株式会社AKSが運営しているのですが(HKT48はオーディション中のため未確認)、SKE48の運営は、株式会社ピタゴラス・プロモーションが、NMB48の運営は、KYORAKU吉本.ホールディングス株式会社が行っています。

つまり、SKE48やNMB48は、他社が運営しており、日本においては、既にフォーマットの販売を行っていることになります。

これはどの様な意味を持っているのでしょうか?

フォーマットを販売するということは、NMB48とSKE48に存在する収益装置も手放すということになり、一見マイナス面が大きいように見えます。

一方でメリットを考えると、自社のみで展開するより早く、各地域に「48」と冠がついたアイドルユニットが設立されますので、ローカルを制覇し、リーダーシップをとることが可能です。

また、「プロダクション事業」のように、協力体制を強固にできるメリットもあるでしょう。

しかし、ここで一番注目したいのは、各地域のメンバーを「AKB48選抜総選挙」に参加させていることです。

そうすることで、NMB48やSKE48の位置づけを、AKB48の地方版と明確に位置づけることができ、あくまでAKB48を中心とした組織を構築することができます。

その結果、中心点を保持しつつ、AKB48の世界自体を発展拡大していくことになります。

また、このようなモデルと似た方式を採用し大成功を収めている企業があります。

それは、ソフトバンクです。

「孫正義大いに語る!!」(竹村健一著 PHP研究所)の中で、孫正義氏が、ソフトバンクの経営方針として語られているのですが、

AKB48ビジネスが、数多くの協力会社を抱えているように、ソフトバンクも、数多くのグループ企業を抱えています。

その企業の多くは、M&Aで買収した企業や、ベンチャーキャピタルとして投資した会社なのですが、

それら企業のすべてに対して、あえて51%以上の株を取得せず、自主独立させているのです。

通常、企業を買収する場合、本部が、51%の株式を持つことでコントロールしやすくしようとするものですが、それをあえて避け、

投資した企業全てが、自主独立した組織になって集まる銀河系のような組織体になることを目指しています。

つまり、ソフトバンクは支援者であるだけで、一切コントロールせず、それぞれが独立し、さまざまな環境に自分の体を適応させる昆虫の群れような組織を作り上げる「自己進化モデル経営」を採用していると述べられています。

AKB48のビジネスモデルも、これと同様に、組める相手とは徹底的に組んで行き、参加した協力者に利益を分配し、自主性を尊重しつつ業界そのものを発展させていく、自己進化型モデル経営と似たモデルを採用しているといえるでしょう。

ただし、ソフトバンクと大きく異なるのは、協力会社の株式を所持しているわけではないという点です。

その意味で、協力会社との関係性は弱くなってしまうことが考えられ、純粋に自己進化モデル経営であるとは言い切れません。

それは、関係性を保つためには、持株の代わりとなるような、協力会社にAKB48の世界に所属したいと思わせ続けるメリットを生み出す必要があります。

では、そのような関係性を保つために、どの様な取り組みを行っているのでしょうか?

それを明らかにするためには、収益モデルを確認していく必要があります。

AKB48は、なぜビジネス界から愛されるのか? その8

○「プロダクション事業」が、収益装置を守り増幅させる。

次に、「プロダクション事業」です。

通常、プロダクション事業の中心となるのは、テレビ番組やCM出演など、タレントを提供することが主な事業活動になるのですが、ここでも独自の展開を行っています。

次の表を見て頂きたいのですが、

http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10942657749.html
上記URL「AKB48所属プロダクション調査資料」を参照

驚いたことに、AKB48メンバーの主力チームである、Aチーム、Bチーム、Cチームとも大半のメンバーが、自社の関連会社ではなく、様々なプロダクションに所属する形になっています。

一方、研究生や、4チームといういわゆる若い世代は、AKSに所属していることから、ある程度育成した段階で他のプロダクションに移籍させていることが伺えます。

実際、この取組が始まったのは、公式ブログによると2007年7月からなのですが、主力メンバーを一度に移籍させています。

・公式ブログ
http://ameblo.jp/akihabara48/entry-10038637344.html

通常「プロダクション事業」を考えた場合、育成してきた金の卵は、育成のために投資したであろう資金がかかっており、人気が出てきた段階で移籍などはさせず、資金の回収を目指すのが当たり前です。

しかし、AKB48の場合、第3回選抜総選挙で上位だった7人の所属プロダクションを確認してみても、

1位:前田敦子「太田プロダクション」
2位:大島優子「太田プロダクション」
3位:柏木由紀「ワタナベエンターテインメント」
4位:篠田麻里子「サムデイ」
5位:渡辺麻友「プロダクション尾木」
6位:小嶋陽菜「プロダクション尾木」
7位:高橋みなみ「プロダクション尾木」

となっており、誰も直接の関係会社である「AKS」や「Office48」に所属していない状況です。

つまり、研究生から育てたタレントを、すべて他のプロダクションに移籍させている事になります。

これはどういう意図があるのでしょうか?

ここで考えられるビジネスモデル上のメリットは、大きく3つあります。

(1)各プロダクションに振り分けることで、メディアへの露出の増加
(2)AKB48自体の認知が向上し、収益装置がさらに回転
(3)有力プロダクションからの圧力の回避と協力体制の構築

まず、(1)ですが、例えばテレビ出演を考えた場合、すべてのメンバーを自社で取り仕切るとなると、番組への出演をめぐって、他のプロダクションがすべて敵になることになります。

また、テレビ局側からしても、他のプロダクションに所属している有力タレントも利用したいはずですので、様々なプロダクションに配慮しながらの出演依頼となるはずです。

一方、各プロダクションにメンバーを移籍させてしまえば、そのような軋轢は無くなりますし、選抜総選挙で下位になったメンバーであっても、
バーターなどで出演機会が増える可能性が高まるのです。

その結果、各メンバーがそれぞれ出演することによって、AKB48自体の露出が高まることになり(2)の状況が生まれることになります。

結果として、収益装置に滞留する人がさらに増加し、回転していくのです。

そして、もっとも重要なのが(3)であります。

例えば、選抜総選挙のようなある種毒のある強い施策を実施した場合、批判にさらされることがあります。

もし、このような施策を独占的に行なっていたとすれば、敵対者からの攻撃は非常に激しいものになるはずです。

しかし、協力者が多ければ多いほど、その批判を封じ込めることができますし、逆に好意的な世論を作ることができます。

・ライブドアニュースより
http://news.livedoor.com/article/detail/5627728/
http://news.livedoor.com/article/detail/5642491/
http://news.livedoor.com/article/detail/5658002/

事実かどうかは分かりませんが、上記のようにAKB48の施策を批判したタレントを抑えこむような動きがあったことが、ニュースとして流れるなど、業界をあげてAKB48のビジネスをサポートする体制が作られている様子が伺えます。

以上のことから、「プロダクション事業」では、メンバーを独占し、メディアへ出演させ、事業単体として収益を最大化させることを目指すのではなく、

各プロダクションにタレントを移籍させることで、協力会社に利益を分配しつつ味方を増やします。

そして、柱となっている収益装置に群れる人を増加させ、さらに回転させるようにすることを目的に構築されているのです。

結果、「プロダクション事業」は、収益装置を守り、増幅させる役割を担っていることが分かります。