収益プランナー奥村光英の明日のため今できること -3ページ目

AKB48は、なぜビジネス界から愛されるのか?  全文掲載版(後編)

■収益モデルを紐解く。

○収益の分配構造を理解する。

 本来、既存事業の収益モデルを把握するためには、お金の流れを追う必要があります。
 ただし、AKB48のビジネスは、上場企業のように有価証券報告書などが公開されているわけではありませんので、その他、公開されている範囲の情報から推察していく必要があります。

・ライブドアニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/5393082/

 上記のサイトに、売上の分配手法が紹介されていますが、こちらの記事によると、AKB48がグループとして活動し得た売上については、一旦、株式会社AKSに集約され、それぞれのメンバーが所属するプロダクションに分配されます。
 そして、各メンバーがソロ活動で得た売上は、株式会社AKSを通さずにそのまま各プロダクションが取得する形になるとのことです。
 この情報が正しいと考えるならば、所属するプロダクションの視点で考えると、AKB48としての活動でも収益は獲得できますが、より大きな収益を得るためにソロでの活動を増やしたいはずです。
 その状況が確認できないかと調べたところ、それを物語る事象を発見しました。
 AKB48からは、2011年1月21日に大島優子を中心とした「Not yet」が結成されるなど、グループの下位組織として多くの派生ユニットが結成されています。
 実は、このユニットのメンバー構成に秘密が隠されていたのです。

http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10958518833.html
上記URL「AKB48ユニット調査資料」を参照

 各ユニットのメンバー構成を確認し、その所属するプロダクションを整理してみると、見事に所属するプロダクション単位でユニットが作られ、メンバーが構成されていることが分かります。
 一部異なっているのが、「渡り廊下走り隊7」の岩佐美咲さんと、「Not yet」の横山由依さんですが、まず、岩佐美咲さんはユニット結成時には、他のメンバーと同様にプロダクション尾木に所属していました。
 「Not yet」の横山由依さんは、以下のニュースサイトによると、秋元氏が急遽追加したメンバーであるとしています。

・ライブドアニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/5286979/

 そのため、現在はAKSに所属していますが、この状況から推察すると、近い将来太田プロダクションに移籍となるのかもしれません。
 いずれにしろ、各プロダクションに所属するメンバーが、プロダクションごとに独自に活動しやすく、活躍できるようにユニットは結成されていることが伺えます。
 以上の状況などから、ソロとユニット活動での収益は、各プロダクションに直接入り、AKB48のグループとしての活動は、株式会社AKSから各プロダクションに収益が分配される構造となっているのは確かなようです。

○AKB48の収益構造と類似した事例はあるか?

 AKB48の収益モデルは、AKB48としての売上は、株式会社AKSを通じて各プロダクションに分配する。ソロ、ユニットなど所属プロダクション単位での売上はそのまま、各プロダクションが受け取る仕組みである事がわかりました。
 しかしそう考えると、選抜総選挙で上位となるようなメンバーは、ソロとして最大限活動させるために、AKB48から脱退させたいと考えそうですが、現時点では、プロダクション側にその様な動きはありません。
 それは、AKB48に所属することが、売上以外のメリットをもたらしているからだと推察できます。
 例えば、AKSが育てた金の卵を、今後も回してもらえることへの期待があり、関係値を壊したくないという考えであったり、AKB48所属し、上位になりつづけることが、タレントの価値を向上させているという考えもあるかもしれません。
 このように実に不思議なバランスで、協力関係を築いているのですが、他に同じような事例がないかと探したところ、ある1つのモデルに出会いました。それは、日本サッカー協会のモデルです。
 日本サッカー協会の組織図は、以下のサイトのとおりとなっていますが、

・日本サッカー協会のサイト
http://www.jfa.or.jp/jfa/organization/outline1.html

 この組織体制の中の、日本サッカー協会とJリーグのクラブチームの関係に非常に近いものがあるのです。
 ご存じの方も多い方と思いますが、Jリーグは、日本のプロサッカーリーグであり、所属するクラブチームは、年間を通じてクラブチーム同士が試合を行い、その観客収入などで収益を上げています。
 一方、日本サッカー協会は、Jリーグのまとめ役となると同時に、国際サッカー連盟に所属しており、日本人の中から日本代表となる選手を選抜し、他国と試合を行うことで、その観客収入などから主に収益を得ています。
 その最たるイベントが、ワールドカップであり、楽しみにされている方も多いのではないでしょうか?
 日本サッカー協会、詳しい収支は下記サイトに記載されていますので、詳しくは、ご覧いただきたいのですが、

・日本サッカー協会のサイト
http://www.jfa.or.jp/jfa/topics/2011/25.html

 考えてみると、クラブチームからすれば、日本代表選手を多く排出してしまうと、招集されている期間は、中心選手が抜ける形になります。
 そして、その期間、クラブでの試合などがあった場合、チーム力が弱体化しますし、人気選手が欠場となることで観客動員にもマイナスの影響が考えられます。
 また、選手を派遣した対価として日本サッカー協会からクラブチームに支払われる日当は、1日5万円であって決して高額ではありません。
 もちろん、規約や規程があり協力しなければならない状況であり、Jリーグの日程なども配慮されてはいますが、クラブチームとしては、代表に選手を派遣するメリットは、一見無いように思います。
 しかし、クラブチームとしては、日本代表に自チームの選手が選出されることを歓迎する傾向があります。
 その理由として考えられるのは、日本代表で活躍することで、選手の価値が高まるからです。
 それによって、クラブチームのファンが増加し、試合への観客動員が増加が見込めます。
 また、選手が移籍を希望したとしても、移籍金が高騰したり、さらには、CM出演のオファーがくるなど副収入の増加も望めるからです。
 そしてそれは、日本代表が強ければ強いほど、代表やサッカーの人気が高まれば高まるほど、比例して強まる傾向があります。
 ですので、最も世間の注目が集まる、ワールドカップの期間などは、クラブチームも完全にバックアップする体制をつくり、日本サッカー協会に協力しているのです。
 このように考えてみると、AKB48のビジネスと非常に似通ったものがあります。
 下記図のとおり、株式会社AKSを日本サッカー協会として、各プロダクションをJリーグのクラブチームと置き換えて考えると分かりやすいのですが、収益構造は以下のようになっています。

http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10971363989.html
上記URLの(収益構造)の画像を参照)

■日本サッカー協会の場合

◇日本代表で活動した売上
基本:日本サッカー協会の収益
→派遣費をクラブチームに支払い
→日当や勝利ボーナスを選手に支払い

◇クラブで活動した売上
基本:各クラブチームの収益
→年俸などの形で選手に支払い

■AKB48の場合

◇AKB48団体で得た売上
基本:株式会社AKSの収益
→タレント提供費をプロダクションに支払い
→タレントへの支払いはプロダクションに任せる

◇ソロ活動で得た売上
基本:各プロダクションの収益
→年俸などの形でタレントに支払い

 つまり、AKB48の場合も、プロダクションとして、最も収益が望めるのは、ソロとして活動をすることであるのですが、一方でAKB48として所属タレントが活躍することができれば、サッカー選手が日本代表で活躍した時のように、タレントの価値の向上が望めます。
 例えば、AKB48選抜総選挙などで上位に入ることができれば、タレントとしての価値があることが投票数から金額的にも証明されますので、サッカーで考えるところの、日本代表のレギュラーと同様の価値が得られるのではないでしょうか?
 そして、日本代表が活躍することでサッカー人気全体が高まるように、AKB48の価値が高まれば高まるほど、個人の価値も比例して高まる形となります。
 さらには、サッカーでは世代が入れ替わることで新しいスターが生まれるように、AKB48でも世代交代が実現できれば、継続的にスターを獲得することができるようになるのです。
 結果、現在、所属するタレントの価値を向上させるのはもちろん、継続的に将来にわたって、価値のあるタレントを獲得していくためにも、AKB48自体の発展に自然と協力する体制が構築されているものと考えることができます。

○AKB48の収益モデルは、過去にない新しい収益モデルである。

 しかし、日本サッカー協会は財団法人であり、非営利団体ですので、このような協力体制を構築できるのも納得ができます。
 一方の株式会社AKSはもちろん営利団体あり、完全な営利事業において、このような収益モデルを採用しているものは、記憶する限り前例がありません。
 参加する各プロダクションや協力会社が、自社の営利だけの基準で判断せずに、他社が運営するAKB48というグループを大きく育てようと支えあっているのです。
 言い換えれば、株式会社AKSは、本来の敵対関係となる各プロダクションに支えられることで、収益を獲得する構造を創り上げたことになります。
 このような収益モデルを言葉で表すとすれば、他の企業のベクトルを自社を支えるように仕向ける収益構造を構築し、連合体を創り上げる「アソシエーション型収益モデル」と言えるのではないでしょうか?
 さらに、細かい部分を追加するならば、株式会社AKSは、所属するタレントなし(固定費なし)で収益をあげる収益構造(アイドルグループ)を創り上げた事になります。
 人気のタレントを抱えるということは、完全成果報酬型であれば別ですが、それだけ固定費として大きな人件費がかかることになりますので、リスクでもあります。
 それならば、ある程度育った段階で、他のプロダクションに移籍させてしまえば、人件費をゼロにることができ、かつ、継続してAKB48として活動させることで、売上に応じた収益をリスクなく獲得する仕組みを作ることができます。
 このように、株式会社AKSは、AKB48ビジネスに参加する企業に対して、営利の分配を行い、AKB48が発展していくことが、参加者全体のメリットとなる構造を構築することで、自発的な貢献を行わせる収益モデルを構築したのです。
 このモデルは、日本のサッカー少年が日本代表に憧れ、ファンが応援し続けているように、タレントの卵がAKB48に憧れ、ファンが応援し続けるのであれば、長期間支え続けられるはずです。
 そして今後、海外に展開する予定となっていることから、国同士でのイベントの実施も考えられます。
 将来的に、サッカー国際試合の様なイベントを行うことができれば、現在の日本サッカー協会のような立ち位置から、アジアサッカー連盟、さらには、国際サッカー連盟へのような立場に成り上がることも可能となります。それによって体制はより磐石なものになっていくことでしょう。

■まとめ「AKB48がビジネス界から愛される理由」

 このように、株式会社AKSは、自社にとってはもちろん、参加企業にとっても得難い環境を提供するAKB48という収益モデルを構築しました。
 しかし、サッカーのようなプロスポーツと同様に、芸能の世界も実力の世界と言われており、淘汰や新陳代謝はつねに行われ続け、外敵がなくなるということはありません。
 そのため今後は一層、参加企業は内部での健全な競争を行いつつも、AKB48を発展させるという目的で一枚岩になり、不参加企業からの攻撃に対して連帯して防御に当たるはずです。
 例えば、第2回までの過去の選抜総選挙では、投票券の販売手法などが様々なところで批判されていましたが、逆に第3回では、多くのメディアが社会現象として好意的に報道していました。
 このように、AKB48が発展し協力会社が増えれば増えるほど、批判的な意見は、連合体の防御の一環として封じ込められていくことになります。
 そう考えると、AKB48のビジネスは、独自の経済圏を構築、もしくは共同社会、国のようなものを創り上げるビジネスモデルであるといえるでしょう。
 そこで、私はこのビジネスモデルを「独自ソサエティー構築ビジネスモデル」と命名したいと思います。
 まとめると「独自ソサエティー構築ビジネスモデル」とは、まず主体者は、ソサエティーを構築するために、自身が得られたはずの収益を分配してまで、敵を味方として引き込み拡大していきます。
 その際、参加者には、自然と共同体のルールに従わせるように構造上の仕組みを設定しておき、自動的に共同体に貢献するようにしておきます。
 そうすることで、共同体が自発的に拡大していき、主体者はリスクを最小限にしていきながら、大きな利益を確保することができるようになるのです。
 一方、参加者から見れば、共同体に参加することで、確実に利益を拡大することができますし、それは自社のビジネスの延長線上で行うため労力も少なくてすみます。
 また、仕組みとしては共同体に貢献させられている形になっていますが、共同体が拡大することは、自社の利益の向上にもつながるため、大きな抵抗はありません。
 結果、共同体の中で参加者同士が手を組み合って、安心して経済活動を行うことができるようになるのです。
 本稿の冒頭で、「AKB48は、サービス提供側、ビジネスを行う側にとっても有益な存在であり続けることが求められており、それに見合う何かを提供しつづけられる何らかの「仕掛け」があるのではないでしょうか?」と述べました。
 その「仕掛け」とは、この「独自ソサエティー構築ビジネスモデル」を実現したことに他なりません。
 株式会社AKSは、AKB48という独自のソサエティーを構築し、参加企業が、協力しあう仕組みと、滞留する多くの顧客に対して、安心してビジネスを行うことができる環境をつくりあげた点にあるのです。
 結果、長期、かつ多くの企業がAKB48というソサエティーに参加し続けることになり、AKB48が愛され続けることになるのです。
 そして、株式会社AKSは、今後も独自のソサエティーを拡大することに注力し、大きく成長していくものと考えます。
 今後、どの様な形で、独自のソサエティーを拡大していくのか、注目していきたいと思います。

AKB48は、なぜビジネス界から愛されるのか?  全文掲載版(前編)

■AKB48はファンだけでなくビジネス界からも愛されている?
 最近では、メンバーをテレビで見ない日は無いというぐらい、大ヒットを続けるAKB48。
 すでに、誰もが認める日本のTOPアイドルグループと言えるのではないでしょうか。
 TOPを走り続ける彼女達、このヒットはいつごろから続いているのか調べるため、公式サイトにある「AKB48クロニクル」や「スケジュール」で活動の履歴を見てみたところ、

株式会社AKSのHP「AKB48クロニクル」
http://www.akb48.co.jp/chronicle/2005.html

株式会社AKSのHP「スケジュール」
http://www.akb48.co.jp/schedule/201105.html

 いわゆるキー局の主要なテレビ番組に数多く出演し始めたのが、2008年ごろであり、その頃から現在まで長期間ヒットし続けていることになります。
 お笑い芸人などでは、瞬間的にヒットをして直ぐに消えてしまう人のことを、「1発屋」などと呼んだりしますが、アイドルも瞬間的であれば、運よくヒットするということもあるかもしれません。 
 しかし、AKB48は長期間ヒットを続けており、その勢いは止まりそうにもなく、運以外にも隠れた理由があると考えるべきでしょう。
 では、その要因とは一体、何なのでしょうか?
 「熱狂的なファンに愛され続けることではないの?」確かに、ファンに愛され続けることは、ヒットを続けるための重要な要素であることは間違いありません。
 しかし、本当の要因を知るためには、ファンという1つの側面を考えるだけでは十分とは言えないでしょう。
 ファンがサービスを受け取る側と考えるなら、反対側にサービスを提供する側が存在し、各種サービスが提供されつづけてこそ、はじめて長期間ヒットすることが可能となるからです。
 つまり、熱狂的なファンの存在はもちろんですが、サービス提供側にも、AKB48を通じて、サービスを提供し続けたいと思わせるか何かがなければならないのです。
 ということは、AKB48は、サービス提供側、ビジネスを行う側にとっても有益な存在であり続けることが求められており、それに見合う何かを提供しつづけられる何らかの「仕掛け」があるのではないでしょうか?
 そこで本稿では、AKB48は、なぜビジネス界からそれほど愛されつづけているのか、一般的にはあまり語られない、その隠れた「仕掛け」に迫っていきたいと思います。

■まず、AKB48の活動を振り返る。
 隠れた「仕掛け」を知るために、まずAKB48の活動の履歴を確認したいと思います。
 「会いに行けるアイドル」として2005年12月に始動したAKB48は、2006年より本格的に活動を開始します。

・AKB48活動調査資料
http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10909412162.html

○2006年:ファン層の獲得のための投資の期間
 具体的な活用内容をまとめてみると、「AKB48活動調査資料」のとおりとなり、2006年の活動内容は、劇場での公演がメインであることが伺えます。
 最近の活動と比べるまでもなく、テレビやラジオ、雑誌などの露出も極端に少なく、劇場以外でのコンサートは2006年の11月まで行われていません。
 また、CDもインディーズで2枚、メジャーで1枚のリリースのみとなります。
 一方で、ファンサービスイベントを見てみると、AKB48のメンバーと直接触れ合えるだけでなく、一緒に行動できるイベントも数多く開催されています。
 AKB48は、素人に近い女の子をオーディションで採用し、活動を開始していることから、いきなりスタートしてのデビューを目指すのではなく、まずは、地道な初期ファン層の獲得を目指しつつ、同時に育成を行っていった期間であったと考えられます。
 この時期を、ビジネスの側面でみると、公演活動での収益がメインであり、今後のCDリリースなど、他のビジネスへの展開を模索している段階といえます。

○2007年:顧客基盤を形成するための期間
 公演での基本的な活動は変わりませんが、2007年になると、CDの発売数が増え、同時に公演以外でのコンサートの回数が増えます。
 また、ファンサービスイベントも継続して行われますが、握手会が中心となり、一緒に行動できる内容のものはなくなります。
 TVやラジオ、雑誌への露出も増えてきますが、まだまだ少なく、主軸の活動とは言えない状況です。
 ただし、公演内容が収録されたのDVDを数多く販売していることから、劇場に足を運べないファン層に対しても公演のコンテンツを提供することで、ファンの拡大を目指していることが伺えます。
 つまり、2007年は、2006年に獲得した初期ファン層を拡大しつつ、コアファンを獲得するための深堀の期間であったと考えられます。
 この時期をビジネスで捉えると、公演での顧客と収益の基盤が構築されたことによって、収益の多面化と拡大を目指している段階といえます。

○2008年:シェアを拡大するための期間
 再度、AKB48活動調査資料をご覧いただきたいのですが、2008年になるとTV番組への出演が一気に増加します。

・AKB48活動調査資料
http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10909412162.html

 キー局での出演が増え、AKB48としての初冠番組を持ったのもこの時期です。全国へシェアを拡大するための活動を開始したと考えることができるでしょう。
 一方で、劇場での公演の活動状況を見てみると、新しい公演演目をA・B・Kチームともそれぞれ出しており、継続しているローカルでの活動にも決して力を抜いているようには見えません。
 このことから、2007年では、公演のDVDなどを多く販売することで、コアファンの拡大と深堀を行っていましたが、2008年はその施策を継続しつつ、顧客層を拡大するために、全国に打って出た時期と言えます。
 SKE48が発足したのも2008年であることから、戦略が切り替わったことを裏付けているのではないでしょうか。
 ビジネスで捉えるなら、ニッチャーとしてローカル市場を制覇したのちに、その基盤を軸にリーダー戦略に切り替え一気に全国に展開を開始した段階と言えるでしょう。
 この時期に、全国にAKB48ファン、いわゆるロイヤル顧客を一気に拡大して行きます。

○2009年:正のビジネススパイラル構築期
 2009年もその活動は継続して行われます。テレビ番組への出演も安定し、コンサートも定期的に全国各地で開催されるようになります。
 また、CDのリリースと同時にファンサービスイベントとして握手会を開催し、全国のファンを囲い込んで行きます。
 ファンにとって、憧れの芸能人と握手できる機会は、そうそうないはずですので、参加された方は一生の思い出になったのではないでしょうか?これによって、ファンとの関係値を強固なものにしていきます。
 ただし、AKB48活動調査資料を見ていただくと分かるのですが、2009年の時点では、ビジネスの側面で見るとまだまだ弱い分野があります。

・AKB48活動調査資料
http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10909412162.html

 そう、CMの分野です。AKB48としての人気は確実に向上しているはずですが、まだ、日本の顔として多くのCMに採用されるまでには至っていません。
 そこで、秋元氏は、この状況を打破すべく、このタイミングである施策を実施します。
 そうそれが、今では毎年の定番の大イベントとなりつつある「選抜総選挙」だったのです。
 このイベントの実施によって、AKB48はもちろん、各メンバーの個々の知名度が格段に向上することになります。
 実際、このイベントを境に、AKB48のメンバーの名前と顔が一致するようになったという方も多かったのではないでしょうか。
 「選抜総選挙」は、投票制度などCDの売上の側面がクローズアップされがちですが、このタイミングでの実施には、メンバー個々の認知の向上など、副次的な狙いがあったと考えます。
 この期間を、ビジネスで捉えるなら、正のスパイラルを構築するための最後の仕上げが実施された期間であると考えられます。

○2010年~現在:正のビジネススパイラル深堀・展開期

 そして、「選抜総選挙」の大成功をもって、2010年に入るとAKB48は不動の地位を獲得します。
 2009年度は、数本しかなかったCMも圧倒的に増加し、活動領域すべての分野での制覇が完了しました。
 これにより、AKB48としてのビジネスは、目指していた正のスパイラルの構築が一旦完了したことになります。
 ビジネスで考えるなら、売上と利益が安定し、ようやく一息付ける段階まで成長したといえるでしょう。
 通常この段階までビジネスが成長すると、投資資金を回収するために、定形的な活動による収益化と、陳腐化を避けるための取り組みが安定的に行われていく事になります。
 そして、この状態に満足するのであれば、無駄な投資をせず、収益を得ることに専念するための施策が展開されることになり、
 さらなる成長を目指すのであれば、得た収益金を活用して次の展開を目指すことになります。
 そして、同じビジネスで新たな成長を目指すのであれば、顧客をさらに深彫りして顧客内シェアを追求していくか、ビジネスをトランスファーすることで、新たな市場の獲得を目指すことがセオリーとなります。
 AKB48の場合、直近の活動を見ると、まだまだ成長を目指していくようです。
 実際、顧客の深堀の施策としては、ユニットを次々と創出し、顧客内シェアの拡大を目指していますし、
 新たな市場を得るための施策としては、関西への展開を目指したMAB48の創立や、現在オーディションを行っているHKT48での九州地区への展開が検討されています。
 また、ライブドアニュースによると、海外進出として、香港への進出が検討され、着々と進んでいるようです。

・ライブドアニュースより
http://news.livedoor.com/article/detail/5573877/

 この状況から、今後は、さらなる顧客内シェアの獲得を目指しつつ、各地域への展開が加速していくものと考えます。

■商品・サービスを分解し、ビジネスモデルを紐解く

○商品・サービスを事業としてまとめてみる。
 このように、AKB48の活動を振り返ってみると、様々な商品やサービスが提供されてきたことがわかります。
 そこで、次に、AKB48を通して提供される、各商品・サービスをを確認し、事業単位に整理していきたいと思います。
 まず、「AKB48活動調査資料」で調査した内容を確認してみると、商品・サービスの項目として想定できるのが、「劇場での公演」「コンサート」「CD、DVD、書籍、その他のコンテンツ」「テレビ、ラジオ、WEB番組、CMなどの出演」「HPなどの会員コンテンツ」などが、まず挙げられます。

・AKB48活動調査資料
http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10909412162.html

 次に、株式会社AKSの会社概要に掲載されている事業概要、AKB48の公式サイトに掲載されているサービス群を確認すると、「グッズの製作・販売」や「テレビ、ラジオ、WEB番組、CMなどの企画・製作」「CD、DVD、書籍、その他のコンテンツの企画・制作」などが考えられます。

・株式会社AKSの会社概要
http://www.akb48.co.jp/company/

・AKB48の公式HP
http://www.akb48.co.jp/index.html

 また、AKB48の公式ブログを確認すると、当初株式会社AKSに所属していたメンバーを、各プロダクションに移籍させていることが分かります。

・AKB48の公式ブログ
http://ameblo.jp/akihabara48/entry-10038637344.html

 この移籍に関して、金銭の授受があるかどうかは分かりませんが、プロダクションが他のプロダクションに有望株のタレントを移籍させるということは通常考えられないことです。
 その意味で有望なタレントを、他のプロダクションに供給するサービスという視点で考えることができ「タレント移籍」もサービスの1つとすべきでしょう。
 そして、その他のサービスとしては、「追跡A to Z 「アキバアイドルを輸出せよ」」のサイトによると、2009年当時の秋元氏の考えとして、AKB48のアイデアやスタイルを権利として売る「フォーマット販売」を行っていくとされていています。

・追跡A to Z / アキバアイドルを輸出せよのサイト
http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/file/list/091205.html

 ここから、AKB48はアイドルユニットとしての活動だけではなく、「ビジネスモデル」自体をも販売していこうという考えがあって、それに取り組まれていることが分かります。
 このように、AKB48を通して提供される主な商品・サービスとして、様々なものが想定されます。
 ただ、このままでは全体像が捉えにくく、分かりずらいため、事業単位にまとめ整理してみます。

「イベント事業」・・・公演、コンサート、ファンサービスイベント等
「物販事業」・・・グッズ販売、販売権提供
「制作事業」・・・CD、DVD、書籍、その他アイテム・コンテンツの製作と製作権提供
「プロダクション事業」・・・タレント提供・移籍
「広告事業」・・・広告枠提供(イベント事業における会場等)
「会員事業」・・・「柱の会」「携帯サイト会員」など
「ビジネスモデル販売事業」・・・プラットフォーム販売

 すると、上記の様に商品・サービスを振り分けることができ、結果「イベント事業」「物販事業」「制作事業」「プロダクション事業」「広告事業」「会員事業」「ビジネスモデル販売事業」の大きく7つの事業に整理することができます。

○ビジネスモデルを図形化して確認する。

 次に、さらに理解を深めるために、ビジネスモデルを図解してみます。

http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10923687664.html
上記の(1)を参照

 すると、上記のとおりに整理することができます。ただ、この図を見ても、あまり優れた点を発見することができません。
 イベント事業や、物販事業、制作事業など、今まで行われているビジネスの延長線にあるもので、特別な部分は見えてきません。
 もちろん、公演会場を持ち、自前で公演を毎日のように開催しているということや、タレントを他のプロダクションに移籍させるということには、今までのアイドルビジネスに無かった要素であると言えます。
 しかし、それらの要素があることだけで、AKB48の大ヒットをビジネスの側面で下支えしているとも思えませんし、ましては、ビジネス界から愛される要因になっているとは思えません。何か別の要素があるはずです。
 そこで、注目したいのが、先程も述べた、「追跡A to Z / アキバアイドルを輸出せよ」のサイトに掲載されている秋元氏の戦略です。

・追跡A to Z / アキバアイドルを輸出せよのサイト
http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/file/list/091205.html

 このサイトによると、秋元氏はAKB48のアイデアやスタイルを、権利として売る、「フォーマット販売」という戦略を採用したとされています。
 フォーマットを販売するということは、AKB48を単なる1つのアイドルユニットとして捉え販売するということではありません。
 AKB48の活動のノウハウはもちろん、それらを取り巻くビジネスを全てまとめ、ビジネスモデル・収益モデルを構築し、そのモデル自体を販売すると考えるべきです。
 そう考えるのであれば、各事業を「素」で捉えていては、全体像が見えてこないと言えるでしょう。
 各事業を連関させ、大きな1つの有機体として捉え、整理することができれば何か違うものが見えてくるのではないでしょうか?そこで、次に各事業の連携を考えてみたいと思います。

■各事業の連携を確認し、ビジネスモデルを紐解く

○ビジネスモデルを有機結合する

 AKB48の事業は、「イベント事業」「物販事業」「制作事業」「プロダクション事業」「広告事業」「会員事業」「ビジネスモデル販売事業」の大きく7つに分けられることが分かりました。
 これらの7つの事業の関連性を見るために、それぞれを連関させ、さらに、消費者(顧客)、自社、協力企業の視点で整理を行い結合させてみます。

http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10930596018.html
上記の図を参照

 すると、上記の図のように結合することができます。このように事業を有機的に捉えれば、以下のように、各事業を単純に図解した時とは異なり、様々な仕掛けや強みが浮き彫りになってくるように思いませんか?

http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10923687664.html
上記の(1)を参照

 これらの仕組みを確認し、理解することができれば、ビジネス界から愛されつづけている理由が見えてくるかもしれません。これらの連携を一つ一つ確認をしていきたいと思います。

○柱は3つの事業であり、それが「収益装置」となっている。

 まず、AKB48のビジネスモデルの中心となるのは「イベント事業」「物販事業」「会員事業」の3つの事業であり、それぞれが相互連携していることが分かります。
 想定される連携としては、大きく3つになります。第1にイベントで集客した顧客に対して、会場での物販を行うことで収益を上げることが可能です。
 これは分かりやすいモデルであって、他のアイドルなども、コンサートなどを開催し、その会場で物品販売を行うなど、同様の活動をしていますので、ありきたりであるように思えます。
 ただし、他のアイドルとAKB48とでは、その意味合いが全く異なってきます。
 他のアイドルの場合、イベントを開催することはありますが、不定期になりますし、なにより自ら公演会場を所持して運営はしていません。
 また、物販販売についても主の事業ではなく、タレント活動の一環として、メーカーにコンテンツ利用権や制作権を付与することで収益を上げることを目指します。
 つまり、どの様な場所で販売するかは、メーカー側にほとんどを任せる形になります。
 それに対して、AKB48のモデルは真逆になります。まず、イベントに関しては、自ら公演会場を運営し、公演もほぼ毎日実施しています。
 そして、定期的に集客と販売できる場所を自ら作り、物販事業に取り組むことで収益を上げることを目指しており、他のアイドルとは事業モデルが大きく異なることが分かります。
 第2に、イベントに来場した顧客を会員化することで収益化を目指します。
 現在、ファンクラブである「柱の会」は新規会員の募集は終了しており、サービス自体も2011年9月30日で終了するとされていますが、その代替として携帯電話向け公式サイトで会員を募集しており、事業としては継続されています。
 イベントの集客状況を調べてみると、今でこそ、公演やライブのチケットは争奪戦となっていますが、「AKB48現象」(ワニブックス)によると、公演などは、オープン当初、250の席数に対して1桁の集客しかできなかった日もあるとのこと。
 そう考えると、会員化による囲い込みと、継続的な収入は得たいところでしょう。
 そして、その他の大きなメリットとしては、会員へのアプローチ手段と財布(決済手段)を握ることができる点です。
 これが可能になることによって、イベントへの再誘導を行い易くなりますし、物販も劇場だけでなく、WEBのサイト等を通じて行うことができます。
 もちろん、会員のイベントへの誘導は、他のアイドルでもとられている手法ではありますが、公演の実施回数が大きく違いますので、その費用対効果が全く異なってくるのです。
 そして、会員の告知と決済手段を確保することによる物販事業の促進が、第3のポイントになります。
 そして、この3つの流れが連携し大きな渦をつくることで、優良顧客がその渦に滞留することになるのです。
 その結果、例えば、選抜総選挙に代表されるような販売促進策を1つ行うことで、滞留した顧客がグルグルと動きまわり、「イベント事業」「物販事業」「会員事業」それぞれで収益が得られるようになっているのです。
 これが、AKB48の事業の柱であり、仕掛けであって、収益装置であります。
 そして、この収益装置を中心に他の事業が連携していくことになります。

○収益装置が他の事業を加速させる。

 「イベント事業」「物販事業」「会員事業」がAKB48の収益装置であることが分かりましたが、その収益装置をさらに増幅するのが、「プロダクション事業」「制作事業」「広告事業」です。
 まず「広告事業」ですが、こちらは、日々公演を行う会場などに掲載する広告枠を販売する形になります。
 また、AKB48の公式サイトなどでも、各種バナーリンクを表示していますが、こちらは、プロダクション事業で出演しているCMと連動するもの、制作事業で作成されたコンテンツと連動しているものが大半で、広告はそれらの事業の付属物の位置づけとなっています。
 ですので、他の野球場やコンサート会場を運営している企業と同様に、所持する会場内の広告枠を販売することが主の商材となっています。
 この商材の強みとしては、会場に掲載することで、公演に足を運ぶAKB48ファンが見ることになりますので、ターゲットが明確になること、そして、ほぼ毎日開催されることにより、視認する人数が確定しやすいことが考えられます。
 また、会場の物販と連動させることができれば、高いリーセンシー効果を見込むことできるはずです。
 その意味で、来場者が増え、ファンが熱狂的になればなるほど、価値が高まるサービスになります。

○収益装置が「制作事業」の価値を向上させる。

 次に、「制作事業」です。例えば、太田プロダクションやホリプロといった、他のプロダクションを見ても、キャラクター商品の企画・販売、いわゆる版権ビジネスといった形で取り組んでおり、各社の中心の事業となっています。
 AKB48の場合も同様で、AKB48に関連した、CD、DVD、書籍の制作から、プロマイドといった基本的なアイテムの製作販売などまで、広範囲にわたって取り組まれています。
 もちろん、版権ビジネスも行っており、公式サイトの関連商品の紹介バナーの数やオフィシャルショップでの取扱商品の数を見ても、かなりの多さがあり、非常に順調である様子が伺えます。
 ではなぜ、これだけ多くの関連商品が製作、販売されているのでしょうか?
 簡単に考えてしまうと「売れるから」という理由で片付けてしまいそうですが、ここにも仕掛けが存在しています。
 特に、版権ビジネスにおいては、収益装置の存在が大きな意味を持ってくるのです。
 通常の版権ビジネスを考えてみると、基本として、プロダクション側はキャラクターを利用した商品の制作の権利を販売するものであり、権利を購入したメーカーは商品を製作し、自社がもつ販売ルートで売らなければなりません。
 この場合、メーカー側の販売ルートが確立しており、かつ利用するキャラクターのターゲットと、販売ルートでの客層とがマッチしているのであれば安心して商品化ができますが、そうではない場合、大きなリスクを背負うことになります。
 一方、AKB48の場合は状況が異なります。AKB48には、前述のとおり収益装置がありますので、熱狂的なファンが毎日訪れる物販事業を持っていることになります。
 それは、メーカーから見ると、AKB48の商品を製作した場合、例え自らが販売ルートを持っていなくとも、ターゲットが群れる売り場がすでに存在していることになります。
 つまり、版権を提供すると同時に、ターゲットが安定的に存在する売り場を提供することが可能ですので、メーカーからすると安心して商品を作ることが可能となるのです。
 そしてそれは、版権ビジネスにとっても、権利価値の向上につながり、他のプロダクションと比べ、株式会社AKSに優位な状況を作りことができるようになります。

○「プロダクション事業」が、収益装置を守り増幅させる。

 次に、「プロダクション事業」です。通常、プロダクション事業の中心となるのは、テレビ番組やCM出演など、タレントを提供することが主な事業活動になるのですが、ここでも独自の展開を行っています。

 次の表を見て頂きたいのですが、

http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10942657749.html
上記URL「AKB48所属プロダクション調査資料」を参照

 驚いたことに、AKB48メンバーの主力チームである、Aチーム、Bチーム、Cチームとも大半のメンバーが、自社の関連会社ではなく、様々なプロダクションに所属する形になっています。
 一方、研究生や、4チームといういわゆる若い世代は、AKSに所属していることから、ある程度育成した段階で他のプロダクションに移籍させていることが伺えます。
 実際、この取組が始まったのは、公式ブログによると2007年7月からなのですが、主力メンバーを一度に移籍させています。

・公式ブログ
http://ameblo.jp/akihabara48/entry-10038637344.html

 通常「プロダクション事業」を考えた場合、育成してきた金の卵は、育成のために投資したであろう資金がかかっており、人気が出てきた段階で移籍などはさせず、資金の回収を目指すのが当たり前です。
 しかし、AKB48の場合、第3回選抜総選挙で上位だった7人の所属プロダクションを確認してみても、

1位:前田敦子「太田プロダクション」
2位:大島優子「太田プロダクション」
3位:柏木由紀「ワタナベエンターテインメント」
4位:篠田麻里子「サムデイ」
5位:渡辺麻友「プロダクション尾木」
6位:小嶋陽菜「プロダクション尾木」
7位:高橋みなみ「プロダクション尾木」

 となっており、誰も直接の関係会社である「AKS」や「Office48」に所属していない状況です。
 つまり、研究生から育てたタレントを、すべて他のプロダクションに移籍させている事になります。
 これはどういう意図があるのでしょうか?ここで考えられるビジネスモデル上のメリットは、大きく3つあります。

(1)各プロダクションに振り分けることで、メディアへの露出の増加
(2)AKB48自体の認知が向上し、収益装置がさらに回転
(3)有力プロダクションからの圧力の回避と協力体制の構築

 まず、(1)ですが、例えばテレビ出演を考えた場合、すべてのメンバーを自社で取り仕切るとなると、番組への出演をめぐって、他のプロダクションがすべて敵になることになります。
 また、テレビ局側からしても、他のプロダクションに所属している有力タレントも利用したいはずですので、様々なプロダクションに配慮しながらの出演依頼となるはずです。
 一方、各プロダクションにメンバーを移籍させてしまえば、そのような軋轢は無くなりますし、選抜総選挙で下位になったメンバーであっても、バーターなどで出演機会が増える可能性が高まるのです。
 その結果、各メンバーがそれぞれ出演することによって、AKB48自体の露出が高まることになり(2)の状況が生まれることになります。
 結果として、収益装置に滞留する人がさらに増加し、回転していくのです。
 そして、もっとも重要なのが(3)であります。例えば、選抜総選挙のようなある種毒のある強い施策を実施した場合、批判にさらされることがあります。
 もし、このような施策を独占的に行なっていたとすれば、敵対者からの攻撃は非常に激しいものになるはずです。
 しかし、協力者が多ければ多いほど、その批判を封じ込めることができますし、逆に好意的な世論を作ることができます。

・ライブドアニュースより
http://news.livedoor.com/article/detail/5627728/
http://news.livedoor.com/article/detail/5642491/
http://news.livedoor.com/article/detail/5658002/

 事実かどうかは分かりませんが、上記のようにAKB48の施策を批判したタレントを抑えこむような動きがあったことが、ニュースとして流れるなど、業界をあげてAKB48のビジネスをサポートする体制が作られている様子が伺えます。
 以上のことから、「プロダクション事業」では、メンバーを独占し、メディアへ出演させ、事業単体として収益を最大化させることを目指すのではなく、各プロダクションにタレントを移籍させることで、協力会社に利益を分配しつつ味方を増やします。
 そして、柱となっている収益装置に群れる人を増加させ、さらに回転させるようにすることを目的に構築されているのです。
 結果、「プロダクション事業」は、収益装置を守り、増幅させる役割を担っていることが分かります。

○「ビジネスモデル販売事業」によってAKB48のビジネスモデルが完成する。

 最後に、「ビジネスモデル販売事業」がどの様な役割をになっているかを確認していきます。

・追跡A to Z / アキバアイドルを輸出せよのサイト
http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/file/list/091205.html

 前述しましたが、上記サイトによると、秋元氏はAKB48のアイデアやスタイルを、権利として売る、「フォーマット販売」という戦略を採用したとされています。
 そして、フォーマットを販売するということは、AKB48を単なる1つのアイドルユニットとして捉え販売するということではなく、活動のノウハウはもちろん、それらを取り巻くビジネスを全てまとめモデル自体を販売すると考えるべきと述べました。
 フォーマット販売は、海外向けが中心に語られることが多く、下記サイトでも、次に台湾に進出することが大きく取り上げられていますが、一方、日本における各地域の展開も忘れてはいけません。

・ライブドアニュースより
http://news.livedoor.com/article/detail/5573877/

 日本の地域展開を確認してみると、2005年12月のAKB48を皮切りに、2008年7月にSKE48、2009年8月にSDN48、2010年10月にNMB48、そして、次は、HKT48が誕生しようとしています。

http://ameblo.jp/creaconcier/entry-10949791403.html
上記URLの(地域展開の図)を参照

 各地域ごとにユニットを展開し、全国的な広がりを見せているのですが、ここで注目したいのが、その母体となる運営会社です。
 AKB48、SDN48は、株式会社AKSが運営しているのですが(HKT48はオーディション中のため未確認)、SKE48の運営は、株式会社ピタゴラス・プロモーションが、NMB48の運営は、KYORAKU吉本.ホールディングス株式会社が行っています。

 つまり、SKE48やNMB48は、他社が運営しており、日本においては、既にフォーマットの販売を行っていることになります。これはどの様な意味を持っているのでしょうか?
 フォーマットを販売するということは、NMB48とSKE48に存在する収益装置も手放すということになり、一見マイナス面が大きいように見えます。
 一方でメリットを考えると、自社のみで展開するより早く、各地域に「48」と冠がついたアイドルユニットが設立されますので、ローカルを制覇し、リーダーシップをとることが可能です。
 また、「プロダクション事業」のように、協力体制を強固にできるメリットもあるでしょう。
 しかし、ここで一番注目したいのは、各地域のメンバーを「AKB48選抜総選挙」に参加させていることです。
 そうすることで、NMB48やSKE48の位置づけを、AKB48の地方版と明確に位置づけることができ、あくまでAKB48を中心とした組織を構築することができます。
 その結果、中心点を保持しつつ、AKB48の世界自体を発展拡大していくことになります。
 また、このようなモデルと似た方式を採用し大成功を収めている企業があります。それは、ソフトバンクです。
 「孫正義大いに語る!!」(竹村健一著 PHP研究所)の中で、孫正義氏が、ソフトバンクの経営方針として語られているのですが、
 AKB48ビジネスが、数多くの協力会社を抱えているように、ソフトバンクも、数多くのグループ企業を抱えています。
 その企業の多くは、M&Aで買収した企業や、ベンチャーキャピタルとして投資した会社なのですが、
 それら企業のすべてに対して、あえて51%以上の株を取得せず、自主独立させているのです。
 通常、企業を買収する場合、本部が、51%の株式を持つことでコントロールしやすくしようとするものですが、それをあえて避け、
 投資した企業全てが、自主独立した組織になって集まる銀河系のような組織体になることを目指しています。
 つまり、ソフトバンクは支援者であるだけで、一切コントロールせず、それぞれが独立し、さまざまな環境に自分の体を適応させる昆虫の群れような組織を作り上げる「自己進化モデル経営」を採用していると述べられています。
 AKB48のビジネスモデルも、これと同様に、組める相手とは徹底的に組んで行き、参加した協力者に利益を分配し、自主性を尊重しつつ業界そのものを発展させていく、自己進化型モデル経営と似たモデルを採用しているといえるでしょう。
 ただし、ソフトバンクと大きく異なるのは、協力会社の株式を所持しているわけではないという点です。
 その意味で、協力会社との関係性は弱くなってしまうことが考えられ、純粋に自己進化モデル経営であるとは言い切れません。
 それは、関係性を保つためには、持株の代わりとなるような、協力会社にAKB48の世界に所属したいと思わせ続けるメリットを生み出す必要があります。
 では、そのような関係性を保つために、どの様な取り組みを行っているのでしょうか?
 それを明らかにするためには、収益モデルを確認していく必要があります。

AKB48は、なぜビジネス界から愛されるのか? その14

■まとめ「AKB48がビジネス界から愛される理由」

このように、株式会社AKSは、自社にとってはもちろん、参加企業にとっても得難い環境を提供するAKB48という収益モデルを構築しました。

しかし、サッカーのようなプロスポーツと同様に、芸能の世界も実力の世界と言われており、淘汰や新陳代謝はつねに行われ続け、外敵がなくなるということはありません。

そのため今後は一層、参加企業は内部での健全な競争を行いつつも、AKB48を発展させるという目的で一枚岩になり、不参加企業からの攻撃に対して連帯して防御に当たるはずです。

例えば、第2回までの過去の選抜総選挙では、投票券の販売手法などが様々なところで批判されていましたが、逆に第3回では、多くのメディアが社会現象として好意的に報道していました。

このように、AKB48が発展し協力会社が増えれば増えるほど、批判的な意見は、連合体の防御の一環として封じ込められていくことになります。

そう考えると、AKB48のビジネスは、独自の経済圏を構築、もしくは共同社会、国のようなものを創り上げるビジネスモデルであるといえるでしょう。

そこで、私はこのビジネスモデルを「独自ソサエティー構築ビジネスモデル」と命名したいと思います。


まとめると「独自ソサエティー構築ビジネスモデル」とは、まず主体者は、ソサエティーを構築するために、自身が得られたはずの収益を分配してまで、敵を味方として引き込み拡大していきます。

その際、参加者には、自然と共同体のルールに従わせるように構造上の仕組みを設定しておき、自動的に共同体に貢献するようにしておきます。

そうすることで、共同体が自発的に拡大していき、主体者はリスクを最小限にしていきながら、大きな利益を確保することができるようになるのです。

一方、参加者から見れば、共同体に参加することで、確実に利益を拡大することができますし、それは自社のビジネスの延長線上で行うため労力も少なくてすみます。

また、仕組みとしては共同体に貢献させられている形になっていますが、共同体が拡大することは、自社の利益の向上にもつながるため、大きな抵抗はありません。

結果、共同体の中で参加者同士が手を組み合って、安心して経済活動を行うことができるようになるのです。


本稿の冒頭で、「AKB48は、サービス提供側、ビジネスを行う側にとっても有益な存在であり続けることが求められており、それに見合う何かを提供しつづけられる何らかの「仕掛け」があるのではないでしょうか?」と述べました。

その「仕掛け」とは、この「独自ソサエティー構築ビジネスモデル」を実現したことに他なりません。

株式会社AKSは、AKB48という独自のソサエティーを構築し、参加企業が、協力しあう仕組みと、滞留する多くの顧客に対して、安心してビジネスを行うことができる環境をつくりあげた点にあるのです。

結果、長期、かつ多くの企業がAKB48というソサエティーに参加し続けることになり、AKB48が愛され続けることになるのです。

そして、株式会社AKSは、今後も独自のソサエティーを拡大することに注力し、大きく成長していくものと考えます。

今後、どの様な形で、独自のソサエティーを拡大していくのか、注目していきたいと思います。