韓国は三等後進国?事故直後のソウルから 隣国の惨事のために、できること?? | 東京リーシングと土地活用戦記

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韓国は三等後進国?事故直後のソウルから
隣国の惨事のために、できること
ブラザー・キム : 2014年04月23日

グローバル化の進展により、国の枠を超えて活躍する「グローバルエリート」が生まれている。そんな中、人気コラム「グローバルエリートは見た!」の筆者で、『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』の著者であるムーギー・キム氏が後継者を募集。“芸風が似ている”ということで後継コラムニストとして指名されたブラザー・キム氏が、香港を拠点に世界を飛び回りながら、一流エリートと二流エリートの違いをつづっていく。


「韓国はサムスンとかの躍進で先進国家になったと言う人もいるが、まだまだ三等後進国なんだ!!」

「俺たちが今、立っているこのアパート、1995年に500人が死亡する事故を起こした高級百貨店の跡地なんだ。韓国は過去の人災から学んでいない……」

これは私の韓国の大手外資系金融機関に勤める友人が、夕食をともにする前に交差点で私につぶやいた言葉である。私は今、ソウルに来てこれを書いているわけだが、ご存じのように、韓国では修学旅行生が多く乗った船の沈没事故で、国中が悲しみに沈んでいる。こちらの報道をいくつか訳してコラムで紹介しようと思ったが、驚くほどリアルタイムで韓国の報道が日本のネットニュースで翻訳されて紹介されているので、私が翻訳して紹介するまでもないだろう。

本コラムを書く前にまず、行方不明か、亡くなられた300人を超える方々、および遺族の方々に心よりお悔やみ申し上げたい。いや、お悔やみの言葉など無力すぎてかける言葉がないほど、若くして命を落とした子供たちや、遺族の気持ちを考えると、胸が締め付けられる思いである。

修学旅行というと、学校生活でいちばん楽しい思い出になる数日間だったはずだ。その楽しい思い出になるはずの旅行で壮絶な最期を迎えた被災者の方々に、本コラムを書く前に心からの黙禱を捧げたい。

混乱する捜索現場とメディア報道

ソウルの街に出てみると、一見、日頃と変わらない日常がある。しかし、韓国でのテレビや新聞を見ていると、連日この沈没事故に関する報道一色に染まっている。芸能イベントやスポーツイベントは取り消され、国中に自粛ムードが広がっており、その雰囲気はまさに震災直後の日本のムードと同様である。メディアを見ていると国中が喪に服しており、救出作業の遅れや政府発表の混乱に、国民の怒りが噴出している。

日本でも報道されているとおり、捜索現場は大混乱を極めている。驚いたことに現場に査察に訪れた政府関係者が、こともあろうか記念写真を撮ろうとして遺族の怒りをかって更迭。ほかにも行方不明者の家族が集まる現場で腰を下ろしてカップラーメンをすすったり、有力議員の息子がフェイスブックで遺族の方々を批判するような無神経な発言をしたり、現場では悪質な人間による詐欺メールや偽メールが出回り、虚偽証言をした女性(虚言癖で有名な人物)が逮捕されたり、この惨事のさなかにこのような言動が飛び交うこと自体、情けないかぎりである。

大多数の国民が悲しみに沈み、50万箱に上る支援物資が韓国全土から現場に届けられているという。無数のボランティアが寄付金を集め、被災者および遺族のために祈っている中、ごく一部とはいえなぜこのような人が出現するのか、どこの国にも愚かな人がいるものであるが、きわめて残念だ。しかしながら、朴政権が民衆の怒りの矛先を一部に向けるため、スケープゴート的な厳罰を一部に下して安易に収束を図らないよう願いたいものである。

たとえば三等航海士の25歳が操舵士に5度曲がるように指示したところ、停電の可能性も含めた機械の故障で異常に行き先が曲がったという。これが事実であれば三等航海士の若い女性が、下に述べる本来全責任を負うべき船長と同様に罪に問われるべきか、はなはだ疑問ではある。

無責任な船長と、殉職した若い女性船員

私はこの事件が起きた朝、日本にいたわけだが、朝にヤフーのニュースで“韓国で船が沈没中”と出たときは、数時間前に事故が発生して船が沈没しつつあるという報道だったので、「船代がもったいないな~」くらいに楽観視していた。

別に天候も悪くない、周囲も明るい比較的浅い水域で、これだけゆっくり沈没しているのだから乗客は十分すぎるほど逃げる時間があるだろう、と。しかし、その数時間後、オフィスを出る際に携帯でニュースをチェックしたとき、信じられない思いとともに、怒りが沸々と込み上げてきた。

まだ大半が救助されておらず、船が沈没しているのに、沈没直前まで船内放送で「動かず室内に待機しろ」と流れ続けただって? 驚いたことに管制塔からは乗客を脱出させるよう船に命令があったのに、船員はそれに応じなかったという。これは船長が不在で指揮系統が混乱しており、よりによって船長が(自分自身を一般市民と偽って)真っ先に逃げ出して救助されたとのことである。

この信じられない船長の無責任さへのショックと同時に、若くして殉職した朴ジヨンさんの報道に胸を痛めた。朴さんは沈没の瞬間まで子供たちにライフジャケットを渡して避難を呼びかけ、子供に「お姉さんは逃げないの?」と聞かれて「子供たちを全員避難させてから、船員は最後に退避するのよ」と語り、最後まで乗客の避難に尽力して命を落とした。この朴さん(ちなみに弱冠21歳の、非正規社員)の責任ある勇敢な最後の姿は、救出された多くの人が異口同音に語っていたという。ほかにもキム先生、ナム先生が同様に最後まで子供の救助を優先して命を落とした。

このとき、私は東日本大震災の際に自身は避難をせず最後津波に飲まれるまで避難放送にあたっていた、南三陸町の遠藤未希さんを思い出した。こういう人間性が問われる最後の瞬間、使命感を持って最後まで他人の救助にあたり殉職するのは最前線の若い命で、真っ先に逃亡するのが、年老いた指導者の姿なのだろうか。これはともすれば、前線の若者だけ国の命令を信じて命を投げ出して、指導者だけは安全な場所に逃げていく数多くの戦争に共通する事態なのかもしれない。

本連載では一流と二流のビジネスパーソンの違いについて書きつづってきたが、最後の生死をかけた瞬間で自分を犠牲にして客の命を優先する、これほど尊い一流の働き方というより、人間としての高潔なあり方は、文章にすると陳腐すぎて申し訳ないくらい、私たちの心を打つ。

隣国の人々ができること

現在、日本の報道では韓国が日本の救援の申し出を断った、「そこまで反日なのか」などの心ない報道が一部でされている。実際は韓国は米国や中国からの同様の誘いも、受け取っておらず、これを反日と結び付けるのはあまりに無神経
だろう。

実際、現場には数百の船と大型クレーン、無数のダイバーや海軍が押し寄せており、しかし、数があるから何ができるわけでもないのが現状なのだ。現場の潮流は極めて強く、ダイバーは酸素ボンベのホースを口でくわえるのも難しいくらいの流れの中で奮闘している。いわゆる“エアポケット”があって生存者がいるかもしれないからクレーンでの作業は親族の同意を得てから、という状況で、空気が抜けないように細心の注意を払ってダイバーが狭いルートから突入を試みている中、外国の船が押し寄せれば、現場での意思疎通や交通整理がさらなる混乱を招くであろう。

できることは、せめて哀しみを共感すること

東日本大震災のとき、各国からもろもろの救援物資やメッセージが届けられ、韓国からも裴勇俊やKARAのク・ハラ、キム・テヒなどの著名人が数千万円単位の義援金を続々と送ってきてくれた。ソン・スンフンも東日本大震災の時に続き今回も、巨額の寄付を表明している。

別に被災者や遺族に義援金を送ろうとよびかけるわけではないが、今回の韓国の事故は、金銭ではどうしようもない心の傷が焦点となるだけに、その隣国の人々の心の痛みに寄り添うことが、わずかながらでも、いかに無力でも、少しでもその慰めになるのではないか。

国同士の関係が悪化している東アジアだが、四川大地震のときの日本の救援部隊の貢献に今も中国では感謝の言葉があふれているし、東日本大震災時に各国が示した支援は金額以上に、心の慰めになったはずだ。こういうとき、せめて静かに遺族の哀しみを共感することが、自然に悲しみに沈む隣国への、適切な態度につながることであろう。

末筆ながら、再度、今回の事故の被害者および遺族の方に、心より哀悼の意を表する次第である。

東洋経済 ブラザー・キム
東洋経済オンライン「グローバルエリートは見た!」およびびベストセラー「世界中のエリートの働き方を一冊にまとめてみた」の著者の後継者。香港を拠点に世界を飛び回り、コラムを執筆する。


ご冥福をお祈り致します。